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第16話

 8月も終わりを迎え、9月に入った。

 恒一(つねかず)は今日も今日とて太郎(たろう)と組手をしている。

 空也(くうや)との組手以降、恒一は太郎とそれなりに渡り合うことができるようになった。

 太郎の動きの癖や思考などを、数か月に及ぶ何百もの組手によって恒一は覚えたのだ。

 そして、太郎の動きから次の行動をある程度予測し立ち回る。

 太郎はそれに応じ戦術を変えたりするも、すぐに対応される。

 2人の間にある体格差が、勝敗の均衡を保っているようなものだった。


 式操作の精度もだいぶ上昇した。

 今では反射で式を1点に集めることができるほどだ。

 ゆえに、受け身、式術の精度は妖との戦闘においては十分であるといえる。

 だが、式波とそれに準ずる技「内波(ないは)」と「空波(くうは)」の習得は難航していた。

 式波を出そうとしても上手く出ず、式が一点に集中しすぎて放出口(主に両手)を傷めてしまうのである。

 空也曰く、恒一には繊細さが足りていないとのこと。式を雑に扱うので細かい操作ができていないという。

 当然、式波がうまく出せないため内波と空波も狙って出せない。

 式波の練習中に空波が数回暴発した程度である。

 そのため、空也は恒一にある課題を与えた。

 「裁縫針の穴に糸を一発で通す練習をすること」

 式波の精度向上、内波と空波を出せるようにするためである。

 恒一は言われた通り、休日や帰宅後に必ず、空也からもらった裁縫針と糸を用いて練習をしている。

 練習を始めて2週間ほど経ったが、恒一の式波の精度上昇に目立った変化はなかった。



◇◇◇



「恒一、9月の12日に仮免試験をやることになった。」


 道場に横たわって休んでいる恒一に、空也は伝えた。

 空也は先ほど、四国支部に恒一の現状報告をしに行って戻ってきたばかり、恒一は太郎と組手を終えて休んでいたころである。

 恒一は「は?」と心の声を漏らす。

 式の精度がまだ不十分である自分が試験を受ける。

 先生は自分の現状を理解していないのかと思った。


「先生、何で勝手に決めるのですか!?それに12日って、1週間後じゃないですか!」


 恒一は立ち上がり、空也に問い詰める。

 空也は少し頭を抱えながら話し出した。


「私も秋寧(あきね)にそう言ったんだよ。そしたら『恒一くんの現状の強さをあなたからの報告ではなく私の部下からの報告で知りたくてね。部下が視察するついでに仮免試験をしようっていう。』って言われたんだ。で、承諾したという感じだ。」

「だからって…、1週間後はないでしょ?」

「仮免試験は9月と3月の2回開催。日程も決まった日ではなく試験官である『四級戦力以上を保持する者』が来れる日って感じだ。だから試験官が来れる12日にしたという感じだ。」

「でも…。」


 恒一は下を向きつぶやく。

 恒一の心の中にあったのは「不合格に対する恐怖」である。

 恒一は一度、陸軍士官学校を不合格になった。それゆえに、不合格に対する恐怖というのが出来上がってしまったのである。


「いい機会なんじゃないのか?自分の実力が知れる。」


 端で休んでいた太郎が恒一に声をかける。


「太郎の言うとおりだ。合否にとらわれず、自分の実力を確認するという意味でやったらどうだ?」


 恒一は少し悩んだ。

 本当は受けたくない。

 だが、空也の発言的に受けることは確定事項だろう。

 なら、自分がどれくらい通用するのかを知ろうではないか。

 恒一は顔を上げ、空也に伝えた。


「わかりました。やってみます!」



◇◇◇



 空也は恒一に試験について話し出した。


「試験は大きく分けて2つ。『学科』と『実技』だ。学科はまぁ…恒一なら大丈夫だろう。油断して落ちないよう軽く復習しておいてくれ。」

「はい!」

「そして問題の実技。式を用いない組手と式操作の精度測定を行う。試験方法は回によって異なるから何をするかわからん。だが、間違いなく恒一が苦戦している式波とそれに準ずる内波、空波はやらされるだろう。」

「そうですよね…。今の自分にできるのでしょうか?」

「恒一、今回は自分の実力を確かめるために受けるのだろ?成功にこだわって変なことをせずに普段通りやればいい。」

「…わかりました。」


 そう答えた恒一だったが、心の中では不合格に対する恐怖が渦巻いていた。

 


 

リアルが忙しいため、今回は短めになりました。

次回は久しぶりに新キャラが登場します。

お楽しみに。

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