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第13話

 7月も終わりが見えてきている。

 恒一(つねかず)は今日も空也の元へ行き、太郎(たろう)と組手を行っている。

 5月からずっと太郎と組手をおこなっているが、未だに太郎を打ち負かせていない。

 太郎の攻撃を防ぐことはできるようになった。

 太郎とちゃんとした攻防戦もできるようになった。

 それでも…勝てない…。

 勝てない要因は2つ。

 一つ目は「体格さ」だ。身長170センチほどの恒一に対し、太郎は2メートルを超える大きさである。また、やせ型の恒一に対し太郎は筋骨隆々。これほど体格差がある相手を打ち負かすのはかなり厳しい。

 二つ目は「経験」だ。太郎は恒一が来るずっと前から空也の下で日々鍛錬していた。そんな人物相手に入って半年も経っていない若造が勝てるはずがない。

 それでも…太郎に勝ちたい!

 そう思いながら、恒一は今日も太郎と組手をする。



◇◇◇



「だいぶ、強くなったな。恒一。」


 太郎は道場に倒れ込んでいる恒一の方を向きながら話す。

 倒れ込んでいる恒一は頭をさすりながら立ち上がる。


「痛てぇ…。今度こそは太郎さんにまともな一撃を与えれたと思ったんだけどなぁ…。」

「ふん。あれは『この攻撃で倒してやる!』というのが見え見えだ。俺との攻防戦の最中に隙を見つけて一撃で仕留めようとしたのだろう?」

「はい…。そう思っていたら太郎さんの左腹辺りの守りが薄いと感じたのでそこを目掛けて…まさか!?」

「ああ。わざと守りを薄くしておいた。そしたらそれに恒一はまんまと食いついたというわけだな。」


 それを聞いた恒一は勢いよく両腕を上げ、それを頭の後ろで組む。


「あーあ。上手くいったと思ったのに。」

「恒一は単純すぎる。殴り合いには殴り合いで対応して、隙を見つけたらそこを重点的に狙う。そんなんじゃ自分より格上には絶対勝てないぞ。」

「えぇ…。じゃあどうすれば?」


 太郎は顎に手を当て少し考えながら話す。


「『戦いながらいくつかの攻略方式を立てる』というのはどうだ?そうすれば相手の罠にはまらずに攻略ができると思うぞ。それに恒一は頭もいいしな。」

「頭がいいって…。」

「まぁ、正々堂々の殴り合いよりも恒一には似合っていると思うぞ。」

「私もそう思うぞ。」


 道場の入り口から空也(くうや)が入ってくる。

 空也は今日、四国支部に恒一の現状報告をしに行っていたのだ。

 3時間前に。


「肉体的に恒一は式に関する技術をできるだけ多く修得し、それを上手く組み合わせて戦っていった方が合っていると思うぞ。」

「なるほど…。」

「正直恒一に組手に関して教えることはほとんどない。ここからは自分の戦い方を模索していく感じだ。私たちの助言を聞きながら頑張ってほしい。」

「はい!」


 恒一は空也の助言にしっかり答えた。


「よしっ。ちょうどいい機会だ。私と組手をやらないか?」

「はい!……へ?」



◇◇◇



 道場の真ん中に立つ恒一と空也。

 今まで太郎とばかり組手をしていたので、恒一は不思議な感覚におそわれる。

 相手は太郎よりも格上。

 だが、太郎よりも背は低く、体も細い。体つきだけでいえば恒一と似ている。

 そんな空也が、どんな戦い方をするのか。

 恒一は思考を巡らせながら空也の方を見る。


「遠慮はいらん。全力で来てくれ。何なら式を用いてもよいぞ。」


 恒一は考える。

 普段は互いの肉体を傷つけないよう式を用いた組手を禁止している。

 おそらくこれは「恒一程度なら式を使われても勝てる。」という強者の余裕というやつだろう。

 だが引っかかることがある。


「(なぜ太郎さん相手だと一切の使用を禁止していたのだ?)」


 太郎さんは自分よりも圧倒的に強く、自分が式を使った攻撃をしても受け身で簡単に防げるだろう。

 仮に太郎さんが式を使えなかったとしても、単純と言っているから動きを見切って簡単に避けれるはず。

 なのに何故…?



 道場の端でその様子を見ていた太郎は恒一が考え込んでいるのを座ってみていた。


「(先生も意地悪だなぁ。恒一が式を使えば動きが見切りやすくなるって伝えないなんて。)」


 達風 空也

 式能「視界内の式の動きが見れる能力」


 視界内の式の動きから敵の攻撃の流れを予測し、それに応じた対応をとる。

 この式能と当人の体術によって格上相手の妖と何度も戦い、生き残ってきた。

 そして、このことを恒一は知らない。


「(さぁ、恒一は先生の言葉を鵜呑みにして式を使うのか。楽しみだな。」



 恒一は覚悟を決め、空也の元へ走り出す。

 空也はそれを太郎と同様の構えで待ち構える。

 恒一の渾身の右の拳を空也は難なく避け、反撃しようとする。

 だが、その反撃を恒一はしっかり受け止めた。

 お互いに攻撃し、それをしっかり防いでいく。

 空也が手を抜いているとはいえ、しっかり恒一は空也と互角に渡り合っていた。


 それを端で見ていた太郎は見入っていた。

「(手を抜いているとはいえ、先生の攻撃をしっかり防ぎつつ反撃している。しかもただ反撃するのではなく、守りが崩れたところを的確に狙ってやがる。さっきの反省を生かして先生のあからさまな無防備にも引っかかっていない。短期間でここまで…。いや、それよりも恒一


式を一切使ってねぇ!!)」

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