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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第五章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 (後半戦)
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第69話 お調子者のベールが剥がれる―守備の支配者「大神狼」

 

後半開始の笛が鳴った。


 二対一。


 三軍リードで迎えた後半は、二軍ボールから始まる。


 柴山がゆっくりと周囲を見渡し、まずは無理に縦へ入れず、後方へ預けた。


 二軍は落ち着いてボールを回す。


 前半の終盤、赤城の一撃で流れを持っていかれた。


 だからこそ、後半の入りは丁寧に入る必要があった。


 三軍は前半よりもラインを整えている。


 その中心に、大神がいた。


 相変わらず表情は軽い。


 二軍が右へ展開し、そこから中央へ戻す。


 柴山がボールを受けた。


 その瞬間、鬼米が後方から走りながら、力強く手を上げる。


「柴山さん!」


 柴山は迷わず鬼米へ入れた。


 ボールは鬼米の足元に収まる。


 三軍の選手たちに、わずかに緊張が走った。


 前半、何度も吹き飛ばされた相手。


 まともにぶつかれば止められない。


 その鬼米に、最初についたのは鶴見だった。


 鶴見は息を整えながら、鬼米の前に立つ。


 だが、前半とは違う。


 食らいつくように突っ込まない。


 一定の距離を保ち、腰を落とす。


 鶴見の頭の中に、後半のピッチへ入る直前、大神に言われた言葉がよみがえっていた。


「鶴見ちょっとええか?」


「え?いいけど、どうしたの?」


「守備の時なんやけどな、前半みたいに、鬼米さんに真正面から食らいつかんでええ」


 大神は、いつもの軽い調子だった。


「いや、根性はめっちゃええよ。俺、そういうの好きやし。でも後半はちょい変えよか」


「変える?」


「そうそう、奪わんでええ。まず遅らせる」


 大神は、指で少し距離を示した。


「鬼米さんはパワーあるし、突っ込んできた相手を弾ける。だから近すぎたら吹っ飛ばされる。逆に遠すぎたら加速される」


「ええ~と、ならどうしたらいいの?」


「一定の距離を保つ。奪うんやなくて、進ません。焦らす。遅らせる」


 大神は、にやりと笑った。


「ほんで、俺が詰めろって言った瞬間だけ、思い切って詰めてほしい。」


 鶴見は頷いた。


「なるほど、やってみるよ」


「頼むで、期待しとる。後半一発かましてやろな!」


 その言葉を思い出し、鶴見は鬼米の前で踏みとどまった。


 鬼米はボールを足元に置きながら、鶴見を見る。


「前半と違うな」


 鶴見は答えない。


 距離を保つ。


 奪いにいかない。


 ただ、鬼米の進路を消す。


 鬼米の口元が上がる。


「駆け引きか。面白ぇ」


 鬼米は一歩、前へ出た。


 鶴見は下がる。


 鬼米がさらに距離を詰める。


 鶴見は詰めすぎない。


 前半なら、ここで身体ごとぶつかっていた。


 だが、今は違う。


 我慢する。


 遅らせる。


 鬼米の眉が少し動く。


「なら、こっちから行くぞ」


 鬼米が一気に踏み込んだ。


 距離を詰め、鶴見を弾き飛ばすつもりで突っ込んでくる。


 その瞬間。


「鶴見、今や詰めろ!」


 大神の声が飛んだ。


 鶴見の身体が反応した。


 それまで保っていた距離を、一気に潰す。


 鬼米の懐へ飛び込む。


「っ!」


 鬼米のタッチが、ほんのわずかに大きくなった。


 前へ出るためのタッチ。


 鶴見を弾くために力を込めた分、ボールが身体から離れた。


 その一瞬。


 大神が動いていた。


 速さではない。


 パワーでもない。


 ただ、そこに来ると分かっていたように、最短距離で足を出す。


 鬼米の前から、ボールが消えた。


「なっ……!」


 鬼米が振り返る。


 大神はすでにボールを収め、顔を上げていた。


「田宮!」


 すぐに右へつなぐ。


 田宮がボールを受け、前へ運ぶ。


「行ける!」


 三軍の数人が声を上げる。


 田宮は勢いよくドリブルを開始した。


 だが、二軍の切り替えも速い。


 すぐに寄せられ、コースを塞がれる。


 田宮は何とか抜こうとしたが、二軍の選手に身体を入れられ、ボールを奪われた。


 そのまま大きくクリアされる。


 ボールはタッチラインを割った。


 だが――。


 大神が奪った一瞬。


 鶴見が耐えた時間。


 ほんのわずかだが、後半の三軍には前半とは違う守備の形が生まれ始めていた。


次回もお楽しみに!

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