第66話 一年生キャプテン、三軍を率いる
大神は、その微妙な空気を気にする様子もなく、片手をひらひらと振った。
「はい。大神様の名スピーチはここまで」
三軍の何人かが、微妙な表情のまま息を吐く。
大神は赤城へ視線を向けた。
「じゃ、新キャプテンさん。あとは頼むわ」
その言葉で、全員の視線が赤城に集まった。
赤城は、腕に巻かれたキャプテンマークを見た。
キソマルから託されたもの。
三軍の思い。
前半、全員がつないだ時間。
赤城は、ゆっくりと顔を上げた。
「前半、俺たちは勝って終われた」
三軍の選手たちが、静かに聞く。
赤城は続ける。
「でも、それは俺一人の力じゃない。みんなが怖がりながらも前に出て、キソマルさんがチームを支え続けてくれたからだ」
キソマルが、少しだけ目を伏せる。
赤城は、キャプテンマークに触れた。
「俺は、キソマルさんの分も、このキャプテンマークを背負って戦う」
その声は、静かだった。
だが、確かな力があった。
「俺は、チームのために戦う」
赤城は、三軍全員を見た。
「どんな時も、前を向く。どんな相手でも、逃げない。そして、必ずゴールを目指す」
鶴見が、息を呑む。
赤城は、最後に言った。
「後半、全員で戦おう。守って耐えるんじゃない。勝つために、戦おう」
その言葉に、三軍の空気が締まった。
大神が、にやりと笑う。
「ええやん、新キャプテン」
キソマルも、足を引きずりながら輪に近づいてきた。
「俺も、円陣くらいは入れてよ」
三軍の選手たちが笑う。
「もちろんです!」
「キソマル先輩も入ってください!」
赤城は頷いた。
キソマルは、照れくさそうに笑いながら、輪に入った。
三軍の選手たちが肩を組む。
さっきまでの不安は、完全には消えていない。
二軍は強い。
それでも――誰も、逃げようとはしなかった。
赤城が声を出す。
「後半、勝ちに行くぞ!」
三軍全員が叫んだ。
「おお!」
その声が、グラウンドに響いた。
――後半戦。
三軍の下剋上は、まだ終わっていない。




