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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 (前半戦)
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第65話 助っ人はお調子者!?

 

 コーチたちは、大神のもとへ向かった。


 ライン際で旗を持っていた大神は、きょとんとした顔で振り返る。


「え、俺っすか?」


 吉澤コーチが言う。


「そうだ後半から三軍に入れ。負傷した三軍キャプテンのキソマルと代われ」


 大神は一瞬、目を丸くした。


 そして、すぐに口角を上げた。


「マジっすか」


 その顔は、明らかに嬉しそうだった。


「いやー、やっぱ俺、旗持って立ってるより、走ってる方が映えますもんね」


 佐々木コーチが呆れたように言う。


「ふざけて入るなよ」


 大神は、へらっと笑った。


「大丈夫っす。ふざけながらちゃんとやります」


「それ、ふざけてるのと変わらないからな。相変わらずだなお前は」


「はいはい、ちゃんとふざけずにやりますって」


 そう言いながらも、大神の口元は軽い。


 ラインズマンの旗を渡し、肩を回しながら三軍の方へ歩いていく。


 赤城。


 鶴見。


 そして、不安げな三軍のメンバーたち。


 大神は軽く首を鳴らした。


「ほな、いっちょ混ぜてもらいますか」


 しばらくして、大神が三軍の輪に近づいてきた。


 三軍の選手たちがざわつく。


「え?」


「大神……?」


「一軍の一年だろ?」


 赤城も、少し驚いたように見る。


「大神……?」


 鶴見が目を丸くする。


「大神くん?」


 赤城は、大神のプレーをまだ見たことがない。


 それでも、これまでの振る舞いから分かっていた。


 軽く見えて、周囲をよく見ている。


 ふざけているようで、踏み込むところは外さない。


 この男は、ただのお調子者ではない。


 鶴見も同じだった。


 入学早々のミニゲーム。


 それ以外で、大神の本格的なプレーを見たわけではない。


 だが、これまでの言動の端々から感じていた。


 この男は、何か違う。


 ただ軽いだけの選手ではない。


 しかし、三軍のほとんどは、それを知らない。


 目の前にいる大神は、どう見ても緊張感が薄い。


 一軍の選手というより、軽い調子で遊びに来たように見えた。


 大神は、いつもの軽い笑みを浮かべながら手を上げた。


「どーも。後半から混ぜてもらうことになりました、大神狼です。好きな食べ物は焼肉、嫌いなものはラインズマンです」


 三軍の数人が困惑する。


「……本当にこれが一軍か?」


「なんか、思ってた感じと違うんだけど」


「ただのお調子者じゃないのか……?」


 小さな不安が漏れる。


 大神は、それを気にする様子もなく頭をかいた。


「コーチに言われまして。キソマルさんと代わって入れって」


 その一言で、三軍の空気が大きく揺れた。


「マジか……」


「大神が入るのかよ……」


「キソマル先輩の代わりに……?」


 不安と驚きが混ざる。


 キソマルが抜ける痛手。


 その代わりに一軍の大神が入る衝撃。


 そして、目の前の大神があまりにも軽いことへの戸惑い。


 三軍の選手たちは、どう反応していいか分からずに大神を見ていた。


 大神の視線は、すぐにキソマルへ向いた。


「キソマル先輩、でしたっけ」


 その時だけ、大神の声色が少し変わった。


 キソマルは驚いたように自分を指さす。


「え、俺?」


 大神は頷いた。


「前半、このチームを支えてたのはあなたっす」


 キソマルは目を見開いた。


「いや、俺は別に……」


「前半、ラインズマンしながら見てました」


 大神は、はっきりと言った。


「危ないとこ埋めて、声出して、何回もカバー入って。目立つプレーやないけど、あれがなかったら、このチーム、もっと早く崩れてたと思います」


 三軍の選手たちが、キソマルを見る。


 赤城も、静かに大神を見ていた。


 鶴見も、大神の言葉を黙って聞いていた。


 大神は続ける。


「だから、その思い、俺が受け継ぎます」


 キソマルは言葉を失った。


 悔しさで曇っていた表情が、少しだけ揺れる。


 だが、大神はすぐにニッと笑った。


「ま、受け継ぐとか言うと、俺がめっちゃ熱い男みたいで照れるんすけどね」


 空気が少し緩む。


 大神は頭の後ろで手を組んだ。


「鬼米さんとか、正直ぶつかりたくないっすよ。痛そうやし。できれば平和に、穏便に、にこやかに終わりたいタイプなんで」


 鶴見が思わず言う。


「そんなこと言って大丈夫なの?」


 大神は軽く笑ったまま答えた。


「大丈夫、大丈夫」


 そして、次の瞬間。


「だけど、俺が来たからには、後半はもう一点もやらん」


 その一言で、空気が一瞬だけ締まった。


 さっきまでざわついていた三軍の選手たちが、思わず黙る。


 大神の声は低く、鋭かった。


 たった一言。


 それだけで、軽さが消えた。


 だが、大神はすぐにへらっと笑った。


「……まあ、たぶんですけど」


 三軍の空気が、再び少し揺れる。


「たぶんって言ったぞ」


「やっぱり大丈夫なのか……?」


「本当にこいつ一軍なのか?」


 赤城と鶴見以外の三軍メンバーは、不安を拭い切れない。


 大神がすごいのか。


 ただのお調子者なのか。


 まだ、誰にも判断がつかなかった。


いよいよお調子者が登場です!次回もお楽しみに!

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