↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 (前半戦)
PR
64/71

第64話 どこまで本物なのか

 

 吉澤コーチと佐々木コーチは、森本監督のもとへ戻った。


 吉澤コーチが言う。


「キソマルは無理です。右足首が腫れています」


 森本監督は頷く。


「そうか」


 佐々木コーチが続ける。


「キソマルが抜けると、三軍はかなりきつくなります」


 吉澤コーチも同意した。


「正直、レベル的には二軍相手に通用していたわけではありません。鬼米には弾かれていましたし、技術的にも苦しい場面は多かった」


 佐々木コーチはピッチを見る。


「それでも、前半の三軍には必要不可欠でした。危ないところを埋めて、声を出して、何度もカバーに入っていた」


 吉澤コーチが頷く。


「赤城や牧ほど目立ってはいませんでしたが、かなり効いていました」


 佐々木コーチは静かに言った。


「ある意味、前半の三軍の影のMVPです」


 森本監督は、少しだけ目を細めた。


 キソマルがベンチに下がる姿。


 キャプテンマークを巻いた赤城。


 不安そうな三軍の選手たち。


 そして、前線で静かに息を整える赤城。


 森本監督は、しばらく黙っていた。


 そして、言った。


「大神を入れろ」


 吉澤コーチが振り返る。


「大神を、ですか?」


「ああ。ラインズマンから外して、三軍に入れる」


 佐々木コーチが驚いた顔をする。


「三軍に、大神を?」


 吉澤コーチも、迷いを見せた。


「監督、赤城がいるところに大神まで加わったら、パワーバランスが崩れませんか?」


 佐々木コーチも続ける。


「大神の守備の統率力はチームでも抜けています。赤城もいる三軍に入れるとなると、二軍側がかなり不利になる可能性があります」


 森本監督は、静かに赤城を見た。


「赤城は確かにすごい」


 その声には、疑いがなかった。


「全国トップクラスの力を持っている。少なくとも、今の高校生の中で簡単に止められる選手ではない」


 吉澤コーチと佐々木コーチは、黙って聞く。


 森本監督は続けた。


「だが、前半で攻守に走りすぎた。鬼米を止めるために戻り、攻撃では起点になり、最後にはあのシュートまで撃った」


 森本監督の視線が、赤城の右足に向く。


「あのシュートも、ほいそれと出せるものではない。使用後、かなり身体に来ているはずだ」


 佐々木コーチが小さく頷く。


 確かに、赤城は平然としているように見えて、呼吸が深い。


 足の置き方にも、わずかに違和感がある。


 森本監督は言った。


「だから大神を入れる」


 吉澤コーチが問い返す。


「赤城の足の負担への考慮ですか?」


「それもある」


 森本監督は答える。


「だが、一番の狙いはそこではない」


 二人のコーチが、森本監督を見る。


 森本監督は、赤城から目を離さなかった。


「赤城を、攻撃に集中させる」


 その言葉に、コーチ二人の表情が変わった。


 森本監督は続ける。


「この試合は、もうただのカテゴリ戦ではない」


 三軍と二軍の序列を決めるだけの試合。


 本来なら、それだけだった。


 だが、今は違う。


 赤城という異質な才能。


 鬼米という全国でも通じるフィジカル。


 この試合は、零明学園の序列を揺るがすものになっている。


 森本監督は、低く言った。


「見てみたい」


 吉澤コーチが息を呑む。


 森本監督は続ける。


「赤城が、攻撃だけに集中した時、どこまでやれるのか」


 そして、鬼米を見る。


「鬼米が、赤城という全国トップクラスの選手に、どこまで食い下がれるのか」


 森本監督の目は鋭かった。


「大神を入れれば、三軍の守備は間違いなく整う。そうなれば、赤城は前に残れる」


 佐々木コーチが呟く。


「赤城対鬼米を、よりはっきりさせるため……」


 森本監督は頷いた。


「そうだ」


 そして、短く言った。


「大神に伝えろ。後半から三軍に入れ、と」


 吉澤コーチと佐々木コーチは顔を見合わせた。


 驚きは、まだ残っている。


 だが、森本監督の意図は理解した。


 この試合で見たいもの。


 それは、ただの勝敗ではない。


 選手の限界。


 選手の可能性。


 赤城零という一年が、どこまで本物なのか。


 そして――。


 鬼米鉄が、その本物にどこまで迫れるのか。


 二人は頷いた。


「分かりました」


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。