第61話 これが、世界一のストライカーだ
「零……」
その声をきっかけにしたように、三軍の空気が爆発した。
「うおおおおおお!」
「赤城!」
「やばすぎだろ、今の!」
「鶴見のパスからだ!」
泥だらけの鶴見が、よろけながら立ち上がる。
三軍の選手たちが、赤城へ駆け寄っていく。
鶴見も遅れて走る。
身体は痛い。
足も重い。
それでも、笑っていた。
「零!」
赤城は振り返る。
鶴見が、ぶつかるように抱きついてくる。
「決めやがった!」
赤城は少しだけ息を吐き、笑った。
「お前が繋いだんだろ」
「いや、あんなの普通決められねぇよ!」
キソマルも駆け寄る。
牧も、小さく拳を握っている。
三軍の選手たちが、赤城を囲んだ。
ほんの少し前まで、鬼米の圧に飲まれていたチームとは思えないほどの熱だった。
ピッチの外では、一軍の選手たちがまだざわついている。
小曽根は口を開けたまま、言葉を失っていた。
守谷も、しばらく黙っていた。
そして、ようやく小さく呟く。
「……本当に、何者なんだ」
森本監督は、赤城を見つめたままだった。
アップの時から感じていた違和感。
ボールの受け方。
身体の向き。
判断の速さ。
それらすべてが、今の一撃で一つの形になった。
だが、それでも理解できない。
高校一年生が。
三軍にいた選手が。
世界最高峰の技を、再現した。
コーチたちも、誰もすぐには言葉を出せなかった。
ただ、呆然とピッチを見つめていた。
赤城は仲間たちに囲まれながら、静かに息を整える。
身体は痛い。
エアゼロに近い一撃を放った反動が、足に残っている。
だが、後悔はなかった。
鶴見が繋いだ。
仲間が戦った。
なら、自分は決める。
赤城は、ネットに突き刺さったボールを見た。
そして、心の中で呟いた。
――これが、世界一のストライカーだ。




