↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 (前半戦)
PR
56/67

第56話 恐怖を越えて、立ち向かえ


だが、試合の流れは確実に変わっていた。


失点を境に、牧は前へ出られなくなった。


先ほどまでなら、ボールを奪った瞬間に左サイドを駆け上がっていた。


だが、今は違う。


一歩目が遅れる。


前へ出ようとした瞬間、頭に浮かぶ。


――また、裏を使われる。


牧の判断に、ほんのわずかな迷いが生まれていた。


その迷いを、二軍は見逃さない。


柴山が中盤でボールを受ける。


三軍が寄せる。


だが、柴山は慌てず、鬼米の動きを待つ。


「鬼米!」


その声に合わせるように、鬼米が前線へ上がってくる。


重い足音が聞こえるような迫力。


三軍の選手たちの顔が、明らかに強張った。


「また来るよ!」


キソマルが叫ぶ。


鬼米はパスを受けると、前を向いた。


「どけどけどけぇ!」


突進。


三軍の選手が一人、寄せようとする。


だが、鬼米の肩が近づいた瞬間、足が止まった。


身体が避けてしまった。


「っ……!」


本人も分かっている。


止めに行かなければならない。


だが、さっき弾き飛ばされた衝撃が、身体に残っている。


鬼米とぶつかれば、また吹き飛ばされる。


そう思った瞬間、足が前へ出なかった。


「俺が時間を稼ぐ! その間に守備を整えてくれ!」


キソマルが声を張る。


自分でも分かっている。


鬼米を止めることは不可能だ。


正面からぶつかれば、また弾き飛ばされるかもしれない。


それでも、キソマルは鬼米から目を逸らさなかった。


その瞬間、脳裏に浮かんだのは赤城の姿だった。


何度吹き飛ばされても、鬼米に向かっていく。


自分たちが怯んでいても、一人で前を向いて戦っている。


――赤城は、あれだけ怖い相手と戦っている。


だったら……。


「……俺だって!」


キソマルは歯を食いしばった。


怖い。


足が震える。


それでも―逃げるつもりはなかった。


「うおおおっ!」


キソマルが鬼米へ向かって走る。


真正面から止めることはできない。


だからこそ、身体をぶつける瞬間を遅らせ、少しでも時間を稼ぐ。


鬼米の進路に入る。


「邪魔だ!」


鬼米の肩が迫る。


怖い。


身体が勝手に避けようとする。


それでも、キソマルは踏みとどまった。


――逃げるな!


ドンッ!


肩と肩がぶつかる。


「ぐっ……!」


キソマルの身体が大きく弾かれた。


それでも、鬼米の進行をほんの一瞬だけ遅らせることができた


鬼米は、そのままゴールへ向かう。


その前に、牧が戻っていた。


「……ウス!」


牧が横から身体を入れる。


鬼米の勢いを正面から受けるのではなく、外へ逃がすようにコースを切る。


そこへ赤城も戻ってくる。


「牧、外へ!」


「ウス!」


赤城と牧で、鬼米の進路を挟む。


鬼米は舌打ちした。


「またお前らかよ!」


赤城は息を切らしながらも、鬼米のタッチの瞬間を狙う。


牧は身体を張り、シュートコースを消す。


二人がかりで、ようやく止まる。


いや――止めているというより、何とか押し返しているだけだった。


鬼米の圧は、それほどまでに強かった。


その後も、同じような場面が続いた。


二軍がボールを持つ。


柴山がためる。


鬼米が上がる。


三軍が引く。


鬼米が突っ込む。


赤城と牧が戻って抑える。


何度も。


何度も。


そのたびに、三軍の選手たちの足は重くなっていった。


「くそ……」


「止めらんねぇよ、あんなの……」


「ぶつかったら、また吹っ飛ばされる……」


言葉には出さなくても、空気で分かる。


三軍のほとんどが、鬼米のフィジカルに飲まれていた。


赤城は前線に残りたい。


点を取るためには、前にいなければならない。


だが、鬼米を自由にさせれば、すぐにゴール前まで運ばれる。


だから、戻るしかない。


牧も同じだった。


攻撃参加したい。


だが、自分が上がれば、その裏を使われる。


結果、三軍の攻撃は細くなっていく。


赤城が前にいない。


牧が上がれない。


鶴見はベンチで、その様子をじっと見ていた。


拳を握っている。


爪が手のひらに食い込む。


何もできない。


ただ、見ているだけ。


それが、悔しかった。


次回もお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。