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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 (前半戦)
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第55話 俺たちは、まだ戦える

三軍の空気が、再び重くなる。


「くそ……」


「一回は赤城が止めたのに……」


赤城は、ゆっくりと立ち上がった。


身体には、鬼米のシュートを受けた衝撃が残っている。


だが、表情は崩れていなかった。


その失点を見届けたあと、守谷は腕を組んだまま、低く呟いた。


「これをやられると、三軍はきつくなるな」


小曽根が横を見る。


「どういうことだ?」


守谷は、まだ戻り切れていない一年のサイドバックに視線を向けた。


「あのサイドバックは、たぶん次からカウンターを警戒して、前に出づらくなる。そうなれば、三軍の攻撃の勢いは落ちる」


そして、鬼米を見る。


「三軍の何人かは、今ので精神的にやられてる。正面からは絶対に止められないって分かったからな」


小曽根は黙って聞いていた。


守谷は、さらに続ける。


「今の三軍で鬼米を止めることができるとすれば、赤城と、かろうじてあの一年のサイドバックくらいだ。となると、必然的に赤城が守備に引き込まれる」


守谷の目が細くなる。


「そうなると、三軍の攻撃は怖くなくなる」


その言葉の意味を、小曽根もすぐに理解した。


赤城は得点源だ。


三軍の攻撃の中心だ。


だが、鬼米を止めるために守備へ戻らされ続ければ、前線に残れなくなる。


赤城が下がれば、三軍の攻撃は薄くなる。


攻撃が薄くなれば、二軍はさらに前へ出てくる。


そしてまた、鬼米が突っ込んでくる。


小曽根は短く息を吐いた。


「三軍からしたら、嫌な流れだな」


「ああ」


守谷は赤城を見た。


「赤城がどこまで耐えられるかだな」


ライン際で見ていた青砥は、冷静に呟いた。


「もう一枚、三軍に優れたディフェンダーがいれば守れたな」


その声は、誰に届くでもない。


だが、青砥の目はピッチを見ていた。


牧が上がった後の穴。


キソマルが弾かれた中央。


赤城が戻っても、最後のこぼれ球に対応できなかった守備。


すべてが、はっきりと見えていた。


三軍の選手たちは、肩を落としている。


せっかく赤城が点を取り、牧が流れを作った。


それでも、二軍はすぐに対応してきた。


カテゴリの差。


技術の差。


判断の差。


それを突きつけられたような失点だった。


「……俺が、止めていれば……」


キソマルは悔しさから、拳を握る。


鬼米に身体をぶつけられ、弾き飛ばされた。


その隙に中央を突破され、最後はシュートを許した。


(……キャプテンなのに、俺は何をしてるんだ。)


視線が落ちる。


自分がもっと早く鬼米の進路を塞げていれば。


自分がもう少し身体を張れていれば。


そんな考えが、頭の中を何度も巡る。


そして、気づけば―。


キソマル自身の気持ちまで、切れかけていた。


三軍の選手たちも、そんなキソマルと同じように俯いている。


誰も声を出さない。


だが―。


赤城が手を叩いた。


乾いた音が、重い空気を切った。


「全員聞いてくれ!」


三軍の選手たちが顔を上げる。


赤城は息を整えながら、はっきりと言った。


「まだ終わってない!たった一点だ。俺たちは、まだ戦える」


誰も、すぐには言葉を返せなかった。


赤城は続ける。


「一点取られただけだ。失点したことを悔やむ暇があるなら、次の一点をどう取るか考えろ!サッカーは、点を取られたら終わる競技じゃない。最後に一番多く点を取った方が勝つんだ」」


その声には、焦りがなかった。


悔しさはある。


疲労もある。


だが、それ以上に、前を向く力があった。


三軍の選手たちの表情が変わる。


「……赤城」


「そうだよな……まだ終わってない」


ベンチにいた鶴見も、思わず立ち上がっていた。


「……赤城」


その声には、驚きと嬉しさが混じっていた。


その言葉を聞いて、キソマルは赤城を見つめた。


――そうだ。


自分は何を俯いているんだ。


この試合誰よりも戦い、誰よりも走っている赤城が


今、誰よりも声を出している。


「まだ、終わってない」と。


キソマルは、赤城を見つめた。


胸の奥が、熱くなる。


――それなのに。


一年の赤城が、ここまで身体を張って、チームのために戦って、チームのために声を出している。


「自分が先に、気持ちを切らしてどうする……!」


拳を強く握り締める。


自分は、このチームのキャプテンだ。


誰よりも先に立って、誰よりも最後まで戦わなければならない。


赤城に背中を押されている場合じゃない。


むしろ、自分が赤城や皆の背中を押す側だ。


キソマルは、ゆっくりと顔を上げた。


そして、拳を握る。


「……そうだな」


一歩、前へ出る。


「まだ一点だ、一点取られただけ」


そして、赤城に続くように声を張った。


「みんな、行こう!」




次回もお楽しみに!

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