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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 (前半戦)
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第53話 武器には、必ず裏側がある


その少し後ろで、三島は柴山のもとへ歩み寄った。


「柴山さん、ちょっといいですか。」


「なんだ、三島」


三島は、周囲に聞こえない程度の声で言った。


「三軍を崩す策を思いつきました。」


柴山は眉をひそめる。


「策?」


「はい、現実的な策です。今の一連のプレイを見て思いつきました。」


三島は、牧が戻っていく背中を見た。


「相手の左サイドバックが守備に残っていると、たぶん攻撃がうまくいきません」


柴山の目が細くなる。


三島は、それ以上大きな声では言わなかった。


ただ、暗い表情のまま続ける。


「でも、今みたいに上がった後なら……使えます」


柴山は一瞬だけ黙った。


そして、三島の視線の先を追う。


牧廻那。


守備では読みが鋭く、ボールを奪えば一気に加速してくる。


三軍にとって、間違いなく大きな武器だ。


だが、武器には必ず裏側がある。


柴山は短く息を吐いた。


「……続けろ」


三島は小さくうなずき、さらに声を落とした。


◆


試合は、三軍ボールで再開された。


赤城がスルーし、三島にクリアされた直後。


三軍は、再びボールを動かし始める。


「もう一回落ち着いていこう!」


キソマルが声を張る。


三軍の選手たちは、赤城のゴールと牧の突破によって、少しずつ自信を取り戻していた。


二軍相手でも、やれる。


そう思えるだけの材料が、今の三軍にはあった。


だが、二軍もただ見ているわけではない。


柴山は、三島に言われた言葉を頭の中で反芻していた。


――相手の左サイドバックが守備に残っていると、たぶん攻撃がうまくいきません。


――でも、今みたいに上がった後なら……使えます。


柴山は、静かに周囲へ指示を出す。


「中央を切れ。右に流せ」


二軍の守備が、わずかに形を変えた。


露骨ではない。


だが、三軍がボールを持った時、中央へのパスコースが少しずつ消されていく。


赤城に入れたい。


だが、そこには鬼米がいる。


さらに、周囲も締められている。


キソマルは一瞬迷い、ボールを外へ逃がした。


ボールは左サイドへ。


牧廻那の足元に渡る。


「……ウス」


牧は前を向いた。


次の瞬間、加速する。


まただ。


一歩目で、空気が変わる。


二軍の選手が寄せるより早く、牧はボールを前へ運んでいた。


「速ぇ……!」


三軍ベンチがどよめく。


ピッチの外で見ていた一軍の選手たちも、再び牧の突破に目を奪われた。


牧は敵陣の浅い位置で顔を上げる。


中央には赤城。


鬼米が、その赤城に身体を寄せている。


牧は迷わず左足を振った。


再び、アーリークロス。


鋭いボールが赤城へ向かう。


だが、そのボールが赤城に届く前に――。


三島が、そこにいた。


「……やっぱり」


三島は落下地点へ先に入り、冷静に胸で受ける。


赤城に渡るはずだったクロスは、三島の足元に収まった。


鬼米が目を剥く。


「おい、三島! 俺の勝負の邪魔すんな!」


三島は表情を変えずに返した。


「現実的に、勝負になる前に取りました」


「んだと?」


鬼米が一瞬、黙る。


三島はすぐに前を向いた。


前線では、柴山が顔を出している。


三島は余計なことを言わず、柴山の足元へ正確な縦パスを入れた。


柴山がボールを受ける。


その瞬間、柴山の声が飛んだ。


「上がってこい、鬼米」


鬼米の目が動く。


考えるより先に、身体が反応した。


柴山が何を狙っているのか。


細かい理屈までは分からない。


だが、本能で理解した。


三軍のサイドバックが上がっている。


左サイドに、三軍の守備の要がいない。


――そこを突けということだ。


鬼米は、勢いよく前へ駆け出した。


次回もお楽しみに!

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