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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 (前半戦)
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第52話 「次は読ませる前に潰す」―重戦車、再び牙を剥く

試合は、二軍ボールで再開された。


赤城にゴールを奪われ先制されたことで、二軍の空気は少しだけ重くなっていた。


だが、崩れてはいない。


柴山が手を叩く。


「落ち着け。まだ一点差だ。丁寧につなげ」


二軍の選手たちは、その声で冷静さを取り戻す。


後方からボールが動き出した。


センターバックからボランチへ。


ボランチから右サイドへ。


三軍の選手たちは必死にプレスをかけるが、二軍のパス回しは一つひとつが速い。


三軍の選手たちは寄せているのに、奪えない。


あと一歩が届かない。


「くそっ、回される!」


キソマルが声を上げる。


「慌てないで!中を締めよう!」


三軍は何とか中央を固める。


二軍は無理に中央をこじ開けず、ボールを外へ逃がした。


左サイドへ、大きく展開される。


三軍の守備が、一瞬だけ横に揺さぶられた。


そのボールを、二軍のサイドハーフが受けようとした瞬間だった。


牧廻那が、すでにそこにいた。


「……ウス」


短い声。


次の瞬間、牧の右足がボールの軌道に割り込んだ。


インターセプト。


「なっ……!」


二軍のサイドハーフが反応するより早く、牧はボールを前へ押し出していた。


一歩目が速い。


それだけではない。


二歩目には、もう相手の横を抜けている。


「戻れ!」


柴山の声が飛ぶ。


だが、二軍の選手たちは牧の加速についていけなかった。


守備で奪った直後とは思えないスピード。


迷いがない。


牧はタッチライン際を一気に駆け上がる。


三軍の選手たちが遅れて顔を上げる。


「牧、行け!」


「走れ!」


ピッチの外で見ていた一軍の選手たちも、思わず目を奪われた。


守谷が呟く。


「……速いな」


小曽根も腕を組んだまま、うなずく。


「ああ。あの三軍のサイドバックもこの試合じゃ頭一つ抜けてる」


森本監督も、牧の走りを静かに追っていた。


「守備の予測もいい。奪ってからの一歩目に迷いがない」


吉澤コーチがうなずく。


「赤城ばかりに目が行きますが、牧も相当ですね」


森本監督は短く答えた。


「ああ。この試合の中では、明らかに目立っている」


ライン際に立つ大神は、旗を持ったまま牧の加速に目を見開いた。


「マッキー、はやっ」


反対側のラインに立つ青砥も、牧の走りを黙って見ていた。


「あのサイドバックの奴、足速いな」


誰に言うでもなく、青砥は小さく呟いた。


牧は二軍の右サイドを置き去りにし、敵陣深くへ入る。


前方を見る。


中央には赤城。


その赤城に、鬼米がぴったりとついている。


牧は一瞬だけ顔を上げた。


そして、左足を振る。


クロスが上がる。


早い。


高く滞空するボールではない。


相手守備が整い切る前にゴール前へ入れる、鋭いアーリークロス。


狙いは、赤城。


鬼米は歯を見せた。


「よし、来た」


鬼米は赤城の身体に腕を当て、ポジションを奪いにいく。


「今度は逃がさねぇぞ」


だが、赤城は跳ばなかった。


鬼米の前で、すっと身体の力を抜く。


そして、ボールを見送った。


――スルー。


「なっ――」


鬼米の身体が、一瞬前へ流れる。


赤城の背後へ、ボールが抜ける。


そこへ三軍の選手が走り込んでいた。


「通った!」


三軍ベンチから声が上がる。


しかし、そのさらに後ろには、三島がいた。


三島は最初から、赤城だけを見ていたわけではない。


牧のクロスの質。


赤城の動き。


その背後にできるスペース。


すべてを、暗い目で追っていた。


「……まあ、そう来ますよね」


三島は落下点へ先に入る。


そして、強く跳んだ。


ドンッ!


鈍い音が響く。


三島のヘディングは、ただ当てただけではなかった。


首をしっかりと振り、ボールを遠くへ弾き返す。


ボールは大きく三軍陣内へ飛んでいった。


「ナイス、三島!」


柴山が声を上げる。


三島は着地し、少しだけ前髪を払った。


表情は暗いままだ。


だが、そのヘディングの強さに、周囲の評価は一瞬で変わった。


「あいつ、ヘディング強いな」


一軍の誰かが呟く。


守谷も頷いた。


「足は速くないが、空中戦と足元は悪くない。判断も冷静だ」


一方、鬼米は悔しそうに赤城を睨んだ。


だが、その口元にはわずかに笑みが浮かんでいた。


「スルーとは、面白ぇじゃねぇか」


赤城は鬼米を見る。


「セオリーなら、俺には二人でつく場面ですよ」


鬼米の目が鋭くなる。


赤城は続けた。


「それでも一人でつくんですね。いい度胸です」


鬼米は一瞬、目を丸くした。


そして、獰猛に笑う。


「へっ。鼻っ柱も強ぇんだな、お前」


鬼米は首を鳴らす。


「嫌いじゃねぇよ、そういう奴」


赤城も、わずかに笑った。


「ありがとうございます。でも、単純な人は読みやすいですよ」


「言ってくれるじゃねーか。安心しろ読ませる前に潰すだけだ。」


短いやり取り。


だが、その空気に近くの二軍選手たちは、少しだけ息を呑んだ。


鬼米は、赤城を敵として見ている。


試合の中心が、再び二人へ引き寄せられていく。

次回もお楽しみに!

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