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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 編
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49/50

第49話 その一瞬、世界が違う

試合再開。


三軍ボール。


だが、さっきまでとは空気が違っていた。


開始直後、赤城にボールを入れた瞬間、鬼米に潰された。


そしてそのまま、鬼米一人にゴール前まで運ばれた。


点こそ入らなかった。


それでも、三軍の選手たちの心には、はっきりと迷いが生まれていた。


本当に赤城に預けていいのか。


赤城なら何とかしてくれる。


そう信じていたはずなのに、あの鬼米の圧を見せられたあとでは、足がすくむ。


「……どうする?」


誰かが小さく呟いた。


「また赤城に入れても……」


その言葉は、最後まで続かなかった。


続けたくなかった。


キソマルも、ボールを受けながら一瞬だけ迷った。


視界の先には、前線で構える赤城。


その近くには、鬼米鉄。


また弾き飛ばされるかもしれない。


パスの質が少しでも悪ければ、さっきと同じ展開になる。


キソマルの足が、ほんのわずかに止まる。


だが――。


脳裏に浮かんだのは、ここ数日の赤城の姿だった。


紅白戦で見せた異質なプレー。


誰よりも走り、誰よりも冷静に戦況を見ていた姿。


そして、さっき鬼米に吹き飛ばされた直後も、まったく折れていなかった目。


キソマルは奥歯を噛んだ。


信じると決めた。


なら、迷うな。


「赤城!」


キソマルは前線へパスを出した。


しかし、またしても完璧なパスではなかった。


少し強い。


少し浮く。


赤城が求めている足元より、半歩ずれる。


その瞬間、鬼米が動いた。


「まただッ!」


巨体が地面を蹴る。


さっきと同じ。


いや、さっき以上の勢い。


赤城がボールを収めようとした瞬間を狙い、鬼米が真正面から突っ込んでくる。


見ていた者のほとんどが、同じ未来を想像した。


また吹き飛ばされる。


また潰される。


赤城ですら、鬼米のパワーには勝てない。


だが、次の瞬間――。


赤城の足首が、わずかにしなった。


トラップ。


そう見えた動作の中で、赤城はボールに鋭い回転をかけた。


足元に止めるのではない。


弾くのでもない。


ボールを鬼米の突進する力の外側へ逃がし、自分の身体を半歩だけずらす。


鬼米の肩が赤城に触れる寸前。


赤城は、鬼米の突進の力を逆に利用した。


「なっ……!」


鬼米の身体が前へ流れる。


重さがあるからこそ、急には止まれない。


強く突っ込んできたからこそ、その力が空を切る。


赤城はその横を、まるで風のようにすり抜けた。


グラウンドの時間が、一瞬止まった。


「……かわした?」


誰かが呟いた。


森本監督の隣で、佐々木コーチが目を見開く。


「今の……何をした?」


吉澤コーチも声を失っていた。


「トラップで、相手の突進を外した……?」


一軍の選手たちも、ざわつく。


小曽根が思わず前のめりになる。


「おい、今の見えたか?」


守谷は無言だった。


ただ、赤城から目を離せない。


大神はタッチライン際で旗を握ったまま、口元を引きつらせるように笑った。


「……噂では聞いてたけど、化け物やん…」


その目は、完全に赤城を追っていた。


反対側のラインに立つ青砥も、わずかに目を見開いていた。


赤城零。


その名前は知っていた。


だが、意識したことなどほとんどない。


三軍の一年。


それだけの存在だった。


しかし、その動き。


鬼米の突進をトラップだけで外し、前を向く姿。


青砥の記憶に、ふと別の光景がよぎる。


校舎裏。


半グレのような連中と一緒にいた赤城。


――あいつだ。


あの時の。


青砥の眉が、わずかに寄る。


(……あいつ、たしか校舎裏で見た奴か)


赤城は、すでに次の相手を見ていた。


残っているのは、三島。


二軍にいる一年DF。


三島は赤城の前に立つ。


その顔は、いつものように暗い。


だが、目だけは警戒していた。


「……現実的に考えて、ここは止めるべき場面ですね」


三島は距離を取った。


飛び込まない。


赤城の動きを見て、コースを切る。


悪くない守備だった。


だが、赤城にとっては十分だった。


赤城は細かくボールを運び、上半身をわずかに揺らす。


派手なフェイントではない。


三島の重心が、ほんの少しだけ左へ傾いた。


その瞬間。


赤城は最低限のタッチで、逆へ抜けた。


「っ……!」


三島の足が遅れる。


一歩。


それだけで、シュートコースが開く。


赤城は迷わなかった。


右足を振り抜く。


ボールは低く、鋭く、ゴール右隅へ走った。


GKは反応できなかった。


一歩も動けない。


ボールがネットに突き刺さる。


――静寂。


次の瞬間、三軍側から爆発のような声が上がった。


「入ったああああ!」


「赤城!」


「うおおおおお!」


キソマルは、その場で拳を握りしめた。


自分のパスは完璧ではなかった。


それでも、赤城はどうにかした。


いや。


どうにかしたどころではない。


鬼米をかわし、三島を抜き、GKが一歩も動けないシュートを決めた。


鶴見はベンチで立ち上がっていた。


「すげぇ……!」


声が震えていた。


何度も見てきたはずだった。


赤城の異常なプレーを。


それでも、今の一撃は別格だった。


鬼米に潰された直後。


三軍全体が沈みかけた空気の中で――。


赤城は、たった一人で試合の流れをひっくり返した。


これが、これが、赤城(レッド)なんです!世界一のストライカーなんです!次回もお楽しみに!

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