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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 編
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第48話 強敵を前に、世界一のストライカーが笑った

グラウンド脇。


佐々木コーチは、今の一連のプレーを見て、思わず息を吐いた。


「……相変わらずだな、鬼米は」


吉澤コーチも腕を組んだまま、うなずく。


「怪我明けであれだけ走って、あれだけ当たれる。フィジカルだけなら全国レベルですね」


二人の視線は、ゆっくりと三軍ゴール前へ向く。


そこでは、牧が立ち上がり、太ももを軽く叩いていた。


先ほど、鬼米のシュートを身体ごと止めにいった一年生。


佐々木コーチは、小さく目を細める。


「牧も、よく飛び込みましたね」


「ああ。あの状況で身体を投げ出せるのは大きい。判断も悪くない」


「普通なら、鬼米の勢いに飲まれて足が止まります」


「それでも行った。あの姿勢は評価していい」


コーチ二人は牧を見ながら、確かにうなずいていた。


だが、次に佐々木コーチの視線が向かったのは、赤城だった。


赤城は、先ほど鬼米に弾き飛ばされた場所から立ち上がり、静かにユニフォームについた土を払っている。


「ただ……赤城は、どうですかね」


佐々木コーチが、少し迷うように言った。


「ここまでの練習では、正直かなり期待していました。技術も判断も目を見張るものがあった。」


吉澤コーチも表情を引き締める。


「でも、鬼米のパワーの前では……さすがに厳しいかもしれませんね」


高校生同士とはいえ、体格差は明らかだった。


赤城は一年生。


鬼米は二年生で、しかもフィジカルだけなら全国屈指。


最初の接触で、赤城は完全に弾かれた。


それは、無視できない事実だった。


佐々木コーチが続ける。


「どれだけ技術があっても、あの強度で潰されれば前を向けない。前線で起点になれなければ、三軍の作戦はかなり苦しくなります」


その言葉に、森本監督が静かに口を開いた。


「そうすぐに判断するな」


コーチ二人が振り向く。


「監督?」


森本の視線は、赤城に向けられていた。


森本は腕を組んだまま、赤城を見続ける。


「赤城の目を見ろ」


佐々木と吉澤は、改めて赤城へ視線を戻した。


赤城は、鬼米を見ていた。


弾き飛ばされた直後だというのに、怯えはない。


焦りもない。


悔しさはある。


だが、それ以上に――。


「……笑ってる?」


吉澤コーチが小さく呟いた。


口元が大きく緩んでいるわけではない。


それでも、その目には確かに熱が宿っていた。


強敵を前にして、沈む者の目ではない。


潰されたことで、心が折れた者の目でもない。


むしろ、ようやく面白くなってきたとでも言いたげな目。


森本が静かに言う。


「あの目は、怖がっている目じゃない」


少し間を置いて、続けた。


「楽しんでいる目だ」


◇


グラウンドの中。


赤城は、鬼米の背中を見ていた。


圧倒的なフィジカル。


強引な突破。


そして、全力で向かってくる者を認めるような闘争心。


赤城の胸の奥が、静かに熱を帯びる。


フィジカルで上回られる相手など、珍しくない。


レッドだった頃にも、何度もあった。


欧州の屈強なDF。


南米の荒々しいマーク。


世界大会で出会った、身体能力だけで常識を壊してくる怪物たち。


自分より強い身体を持つ相手。


自分より速く、重く、激しくぶつかってくる相手。


そんな敵と、何度も戦ってきた。


そして、そのたびに超えてきた。


赤城は静かに息を吐く。


高校生の身体では、まだ足りない部分が多い。


筋力も、心肺機能も、当たりの強さも、以前の自分には遠く及ばない。


それでも。


いや、だからこそ。


心が震えた。


(いいな)


赤城の目が、さらに鋭くなる。


(こういう相手を待っていた)


簡単に通用する相手では意味がない。


自分の技術だけでねじ伏せられる試合なら、成長はない。


この身体で、どこまで戦えるか。


この身体で、どこまで世界一の感覚を再現できるか。


それを試すには、鬼米鉄という壁は申し分なかった。


鬼米が自陣へ戻りながら、もう一度こちらを見る。


「次もぶっ潰す」


赤城は、今度ははっきりとその目を見返した。


そして、静かに呟いた。


「……やってみろ」


その声は大きくなかった。


だが、近くにいたキソマルには聞こえた。


キソマルは、わずかに息を呑む。


さっきまで動揺していた三軍の空気の中で、赤城だけが揺れていない。


いや、むしろ――。


赤城零は、ここから本当に戦い始めようとしていた。


次回もお楽しみに!

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