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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 (前半戦)
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第47話 次もぶっ潰す

「赤城が……!」


「吹っ飛ばされた……?」


赤城は片膝をつきながら、すぐに顔を上げた。


しまった。


そう思うより早く、鬼米はすでに次のプレーへ移っていた。


それは油断ではなかった。


だが、受けるパスの質、身体の反応、そして相手のフィジカル。


すべてを一瞬で計算しきれなかった。


赤城は奥歯を噛む。


フィジカルの差は、さすがにこの短期間では埋まらない。


鬼米は奪ったボールを、すぐに前線へ送った。


「柴山さん!」


ボールを受けたのは、二軍キャプテンの柴山。


三年らしく落ち着いたトラップでボールを収めると、無理に前へ急がない。


一度身体を開き、三軍の守備を引きつける。


「ためるぞ!」


二軍の選手たちが動き出す。


その瞬間、後方から地響きのような声が飛んだ。


「どけどけどけぇぇぇ!」


センターバックのはずの鬼米が、全速力で駆け上がっていた。


守備ラインから一気に前線へ。


百八十三センチの巨体が、土を蹴り上げながら突進してくる。


三軍の選手たちは、一瞬、反応が遅れた。


「え、CBだろ!?」


「なんでそこまで上がってくるんだよ!」


柴山は落ち着いていた。


鬼米の勢いを確認すると、タイミングを合わせて横へ流す。


「行け、鬼米」


ボールを受けた鬼米は、スピードを落とさなかった。


むしろ、さらに加速する。


一人目が寄せる。


鬼米は肩で押しのけた。


「うわっ!」


二人目が止めに入る。


鬼米はボールを前へ突き出し、身体ごとねじ込む。


「どけぇ!」


まるで重戦車だった。


技術でかわしているわけではない。


細かいフェイントで抜いているわけでもない。


ただ、強い。


ただ、前へ進む。


その圧だけで、三軍の選手たちの足が止まりかける。


キソマルが叫ぶ。


「完全に止めなくていい!時間を稼いでいこう!」


しかし、声は届いても、身体が動かない。


鬼米の勢いに飲まれ、三軍の守備陣は後手に回る。


ゴール前。


鬼米が右足を振り抜いた。


強烈なシュートが、一直線にゴールへ向かう。


三軍のGKは反応しかけたが、身体が間に合わない。


その瞬間だった。


左サイドから、牧が飛び込んできた。


「ウス……ッ!」


身体を投げ出すようにして、シュートコースへ滑り込む。


ボールが牧の太ももを直撃した。


鈍い音が響き、ボールが大きく跳ねる。


「止めた……!」


ベンチの鶴見が、思わず声を上げる。


牧は地面に転がりながらも、すぐに顔を上げた。


その目には、怯えよりも必死さがあった。


鬼米は一瞬、驚いたように牧を見た。


だが、次の瞬間。


口元が、にやりと吊り上がる。


「……やるじゃねぇか」


嬉しそうだった。


止められたことに苛立つのではなく、自分のシュートに全力で飛び込んできた相手を認めるような笑み。


相手が一年だろうが三軍だろうが関係ない。


真正面から向かってくる相手がいれば、むしろ燃える。


鬼米鉄は、そういう男だった。


「いい根性してるな、お前」


鬼米は跳ね返ったボールへ、すぐに反応した。


「けど、まだだッ!」


巨体に似合わない反応速度でこぼれ球へ詰め、再び右足を振る。


今度のシュートは、ゴール横へわずかに外れた。


ネットは揺れない。


だが、三軍の選手たちは誰もすぐに声を出せなかった。


開始直後。


赤城が潰された。


鬼米一人に、ゴール前まで運ばれた。


点は入っていない。


それでも、精神的には一点を奪われたような衝撃だった


グラウンド脇で見ていた守谷が、小さく息を吐く。


「……鬼米、完全に戻ってるな」


その声には、安堵と警戒が混じっていた。


「怪我明けであれだけ走れるなら、問題ない」


そして、守谷は牧の方へ視線を向ける。


「ただ、今のブロックに入った一年……」


小さくうなずく。


「よく飛び込んだ。あそこで身体を投げ出せるサイドバックは悪くない」


一方、三軍側。


キソマルは唇を噛んでいた。


普段は穏やかな顔に、明らかな動揺が走っている。


赤城を中心に戦う。


そう決めた直後、その赤城が鬼米に潰された。


さらに、三軍全体がたった一人のオーバーラップに押し込まれた。


選手たちの呼吸が乱れている。


「今の……なんだよ……」


「二軍って、あんなのいるのか……」


「無理だろ、あれ……」


誰かの弱気な声が漏れた。


キソマルは声を出そうとした。


だが、一瞬、言葉が出ない。


キャプテンとして、何かを言わなければならない。


分かっている。


けれど、自分自身も揺れていた。


カテゴリーの差。


体格の差。


経験の差。


それらを、開始一分も経たずに叩きつけられた。


赤城は立ち上がり、ユニフォームについた土を払った。


その目は、鬼米を見ていた。


鬼米は自陣へ戻りながら、楽しそうに笑う。


「赤城、だったか?」


赤城は黙って見返す。


鬼米は拳を握った。


「次もぶっ潰す」


その一言に、三軍の選手たちの背筋が冷える。


――カテゴリ戦、開始わずか一分。


三軍の前に立ちはだかったのは、まさに「零明の重戦車」だった。


最近、エピソードタイトルが物騒になってますね(笑)、次回もお楽しみに!

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