第46話 世界一のストライカー、開始早々「零明の重戦車」に吹き飛ばされる
青砥煉は、タッチライン際に立っていた。
片手には副審用の旗。
本来なら、ピッチの中央でボールを受け、試合を動かしているはずの自分が、今は外から試合を見る側にいる。
その事実が、どうにも気に入らなかった。
――外から見ろ。お前が普段、見ようとしていないものを見る訓練だと思え
昨日の森本監督の言葉が、頭の中をよぎる。
青砥は小さく息を吐いた。
たしかに、監督の言葉には一理あるのかもしれない。
だが、それでも納得はしていなかった。
二軍と三軍のカテゴリ戦。
三軍には、ここ数日で評価を上げた一年がいるらしい。
だが、青砥にとっては、それだけだった。
一軍の試合ならまだ分かる。
全国レベルの相手なら、見る価値もある。
けれど、これは二軍と三軍の試合だ。
ここで何を見ろというのか。
青砥はグラウンドを見つめながら、心の中で冷たく呟いた。
(……見たところで、何も変わらない)
旗を握る手に、ほんの少し力が入る。
それでも、森本監督に言われた以上、役目は果たす。
青砥は無表情のまま、最終ラインへ視線を向けた。
退屈な時間になる。
この時の青砥は、まだそう思っていた。
主審は、今回のカテゴリ戦メンバーから外れた三年生が担当することになっていた。
グラウンド脇には、森本監督、佐々木コーチ、吉澤コーチ。
少し離れた場所には、一軍の守谷たちも並んでいる。
青砥と大神は、それぞれタッチライン際で旗を持っていた。
二軍対三軍。
カテゴリーの差を埋めるための試合ではない。
その差を、力でひっくり返すための試合だった。
主審が笛をくわえる。
ピーッ!
試合開始の笛が鳴った。
三軍ボールのキックオフ。
ボールは中盤へ渡り、そこから予定通り、赤城へ入った。
「赤城!」
だが、そのパスは少し浮いていた。
強さも、タイミングも、赤城が求めたものとはわずかに違う。
赤城は瞬時に足を出し、ボールを収めようとする。
しかし――。
トラップが一瞬、身体から離れた。
高校生の身体に入ってから、以前よりも繊細にボールを扱う感覚には慣れてきている。
それでも、質の悪いパスを完璧に処理するには、まだ身体が追いつかない。
その一瞬のズレ。
そこへ、巨体が突っ込んできた。
「ぶっ潰すッ!」
鬼米鉄。
赤城が顔を上げた時には、すでに鬼米の身体が目の前にあった。
肩からぶつかるような強烈なチャージ。
赤城は踏ん張った。
だが、体格差はあまりにも大きい。
「ぐっ……!」
身体が弾かれる。
ボールは鬼米の足元へ転がった。
三軍ベンチがざわつく。
「赤城が……!」
「吹っ飛ばされた!?」
え?あの赤城が吹き飛ばされてしまった… 次回もお楽しみに!




