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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第四章 序列を超えろ!二軍対三軍、試合 編
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第41話 「今日は一発かましたれ」――カテゴリ戦前、ムードメーカーが背中を押してくれた

翌日。


零明学園のグラウンドには、朝から独特の緊張感が漂っていた。


二軍対三軍のカテゴリ戦。


三軍の選手にとっては、上のカテゴリへ上がるための大きなチャンス。


二軍の選手にとっては、自分たちの立場を守るための試合。


ただの練習試合ではない。


ここで何を見せるかで、明日からの立ち位置が変わる。


赤城たち三軍のメンバーは、グラウンドの端でアップを始めていた。


鶴見は軽くジャンプしながら、何度も息を吐く。


「……やばい。ちょっと緊張してきた」


「悪くない」


赤城は淡々と答える。


「緊張しているということは、それだけ本気だということだ」


「そう言われると、ちょっとマシに聞こえるな」


鶴見が苦笑した、その時だった。


「おーい! 赤城! 鶴見!」


明るい声が飛んできた。


振り向くと、大神狼が片手を大きく振りながら、こちらへ歩いてきていた。


今日はユニフォームではなく、審判用のビブスを身につけている。


手にはラインズマン用の旗。


その姿が妙に似合っているようで、本人は少し不満そうだった。


「大神」


赤城が声をかける。


大神は、にっと笑って二人の前で旗を軽く掲げた。


「今日は俺、監督からラインズマン任されてんねん」


鶴見が目を丸くする。


「え、大神くんが?」


「そうや。ほんまは出たいんやけどな。外から見て勉強しろ言われたわ」


大神は肩をすくめる。


「でもまあ、今日はお前らの勝負の日やしな」


そう言って、大神は赤城と鶴見を順に見た。


「聞いたで。紅白戦で二、三年チーム倒したんやろ?」


鶴見は照れくさそうに頬をかく。


「まあ……なんとか」


「なんとかちゃうやろ。めちゃくちゃ熱いやん」


大神は、本当に嬉しそうに笑った。


「それで赤城も鶴見もカテゴリ戦メンバー入り。いやぁ、ええな。こういうの、めっちゃ好きやわ」


鶴見は、少し驚いたように大神を見る。


「……大神くん、そんなに喜んでくれるんだ」


「当たり前やろ。同じ一年やぞ?」


大神は、当然のように言った。


「下から這い上がるやつがおるってだけで、チームは面白くなる。今日は一発かましたれ」


その言葉に、鶴見の胸が少し熱くなった。


「……うん。やるよ」


赤城も、静かにうなずく。


「当然だ」


「お、ええ顔するやん」


大神は満足そうに笑うと、すぐに別の一年生へ声をかけに行った。


「おーい、田宮! お前、最初のミニゲームでやたら戻り早かったやろ! 今日もそのしつこさ出したれ!」


「えっ、覚えてんの!?」


「当たり前や!」


次に、別の一年へ。


「高瀬! お前、あの時めっちゃ声出してたやん! 今日も黙ったらあかんで。声出てる時の方が守備の反応ええねん!」


「な、なんでそんなこと覚えてんだよ……」


大神はケラケラ笑いながら、次々と一年生に声をかけていく。


鶴見は、それを見ながらぽかんとしていた。


「……相変わらずすごいな、あのコミュ力」


赤城も小さくうなずく。


「ああ。異常だな」


鶴見は笑いながらも、少し感心したように大神を見る。


「でも、本当に全員の名前覚えてるんだ。最初の部活でちょっとミニゲームやっただけなのに」


「名前だけじゃない。特徴も覚えている」


赤城の目は、大神の動きを追っていた。


「それも、相当細かく」


その時、大神が牧の前で足を止めた。


「お、牧!」


牧は急に名前を呼ばれて、肩をびくっと震わせる。


「ウス……」


大神は、にっと笑う。


「お前、サイドバックやろ?」


牧は驚いたように顔を上げた。


「……なんで分かるんですか」


「最初のミニゲームで見たからや」


大神は、当然のように言った。


「あの時、後ろから上がるタイミングをずっと見てたやろ。行きたそうにしてるのに、周り気にして一歩止まる感じ。あれ、サイドバックの目や」


牧は息を呑んだ。


自分では、目立たないようにしていたつもりだった。


なのに、見られていた。


たった一度のミニゲームで。


「いや……俺なんか……」


「なんか、やない」


大神は軽く笑った。


「今日、出るんやろ? なら思い切ってやったれ」


牧は目を伏せる。


「ウス……」


大神は少し考えるように顎に手を当てた。


「牧か……」


そして、ぽんと手を打つ。


「よし。お前は今日からマッキーやな」


「マ、マッキー……?」


牧が戸惑ったように聞き返す。


「せや。呼びやすいやろ?」


牧は困ったように視線を泳がせた。


だが、嫌そうではなかった。


むしろ、ほんの少しだけ嬉しそうに見えた。


「……ウス」


大神は満足そうに笑う。


「よっしゃ、マッキー。今日は一発見せたれ」


「ウス……頑張ります」


その様子を見ていた鶴見が、ぽつりと言った。


「……大神くん、すごいね」


赤城は、静かに答える。


「チームにひとりいるだけで、空気が変わるタイプだ」


大神はグラウンドを歩きながら、また別の選手へ声をかけている。


ただの社交性ではない。


名前を呼び、特徴を拾い、相手が欲しい言葉を自然に渡す。


それがどれほど難しいことか、赤城には分かっていた。


鶴見は、拳を軽く握る。


「なんか……緊張、少しほぐれたかも」


「なら、大神の役目は果たされたな」


赤城がそう言うと、鶴見は小さく笑った。


カテゴリ戦開始まで、あとわずか。


三軍の選手たちは、それぞれの思いを胸に、静かに熱を高めていった。


大神のコミュ力は、作者が思うコミュ力なので、もしかしたらずれてるかも(笑)

次回もお楽しみに!

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