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第38話 「実力は俺の方が上」――天才MF、先輩を煽る

週末。


零明学園の一軍は、都内の高校との練習試合を二対〇で終えた。


青砥煉、二アシスト。


数字だけ見れば、十分な結果だった。


だが、試合後の選手ミーティングの空気は、どこか重かった。


円陣の中心で、三年生キャプテンの守谷が口を開く。


「今日は二対〇で勝った。ただ、内容はまだ改善できる。各自、反省点を出してくれ」


選手たちが、順に話していく。


「後半、少し間延びしました」


「サイドチェンジへの反応が遅れました」


「決定機の後の切り替えを、もっと早くしたいです」


その流れで、青砥が口を開いた。


「もっと点取れた」


敬語ではなかった。


数人の三年生が眉をひそめる。


青砥は気にも留めず、淡々と続けた。


「俺のパスから決定機は五本。決まったのは二本だけ。正直、外しすぎ」


空気が止まる。


先輩FWの小曽根が、低い声で言った。


「……青砥。口の利き方に気をつけろ」


青砥は、小曽根を見る。


「口の利き方でシュート上手くなるなら、気をつけるけど」


「お前な……」


小曽根の眉間に皺が寄る。


青砥は、さらに言った。


「でも違うだろ。問題は、俺のパスに合わせられないことだ」


「後輩のくせに、ずいぶん偉そうだな」


「フィールドで後輩とか関係ある?」


青砥の声は冷たい。


「少なくとも、実力は俺の方が上だと思ってる」


その一言で、空気が一気に凍った。


小曽根が一歩前に出る。


「……もう一回言ってみろ」


青砥は怯まない。


「聞こえなかった? 実力は俺の方が上って言った」


「てめぇ……!」


小曽根の拳が握られる。


周囲の選手たちが、慌てて動こうとする。


「小曽根、やめろ!」


「青砥も言い過ぎだって!」


しかし、青砥はまだ視線を逸らさない。


「全国で勝ちたいなら、決めろよ」


「……」


「あの程度のパスに反応できないなら、全国レベルでは通用しない」


「青砥!」


守谷が強い声で止める。


キャプテンの守谷が、二人の間に入った。


「そこまでだ」


小曽根は怒りを抑えきれない様子で、青砥を睨む。


「守谷、どけ。こいつ、さすがに――」


「コゾ。今はミーティング中だ」


守谷の声は静かだが、重かった。


その時――。


大神が、ひょいっと青砥の横に入った。


「はいはい、天才くん一回ストップ」


大神は軽い調子で、青砥の肩を掴む。


青砥が不機嫌そうに目を細める。


「離せ」


「離したらまだ喋るやろ。今のお前、口から火炎放射器出てんねん」


「事実を言っただけだ」


「せやな。事実かもしれん。でも、言い方がまずいねん」


大神は小声で、青砥にだけ聞こえるくらいの声に落とした。


「ここで揉めたら、お前のパス受ける味方が減るで」


青砥の表情が、わずかに止まる。


大神は、すかさず続ける。


「お前、勝ちたいんやろ。だったら今は黙っとけ」


「文句は次の試合で、全員に決めさせてから言え」


青砥は、少しだけ沈黙した。


「……面倒くさい」


「知ってる。でも、チームスポーツや」


大神は、にっと笑う。


そして、青砥の背中を軽く叩いた。


「はい、青砥くん休憩。口もクールダウンや」


「勝手に決めるな」


「決めた。俺が」


大神は、そのまま青砥を半歩後ろへ下げた。


小曽根は、まだ怒っていた。


だが、守谷が前に立ち続けていたことで、何とか踏みとどまる。


大神は小曽根へ向き直り、軽く頭を下げた。


「小曽根さん、すんません。こいつ、口悪い上にブレーキ壊れてるんで。俺の方で閉めときます」


「誰のブレーキが壊れてる」


「今まさにや」


青砥が不満げに言い返す。


だが、さっきまでの刺すような空気は、少しだけ薄れていた。


守谷が、深く息を吐く。


「……続けるぞ」


その時だった。


大神が、パン、と手を叩いた。


「いやぁ、でも空気重いっすね。ここは一発、俺が空気を軽くするしかないんちゃいます?」


守谷が、嫌な予感を覚えたように眉をひそめる。


「大神、やめておけ」


「大丈夫です。今の俺、かなり仕上がってます」


大神は、妙に自信満々に胸を張った。


「いきますよ」


そして――。


「零明学園サッカー部とかけまして――」


「大神」


背後から、低い声が落ちた。


大神の身体が、ぴしりと固まる。


選手たちが、一斉に振り向いた。


そこに立っていたのは――。


森本靖典監督だった。


おいおい、一軍メンバー、雰囲気が悪いな(笑)次回もお楽しみに!

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