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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第二章 三軍の底から下剋上 編
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第30話 新たな強敵、零明の重戦車

三軍グラウンドで紅白戦が終わった頃。


零明学園サッカー部の監督室に、乱暴なノック音が響いた。


ドン、ドン、ドン。


「入れ」


森本靖典監督が短く告げる。


すると、扉が勢いよく開いた。


「失礼します!」


現れたのは、二年生DF・鬼米鉄。


身長百八十三センチ。


分厚い胸板に、太い腕。


ただ立っているだけで威圧感を放つ、零明学園の元一軍スタメン。


異名は――零明の重戦車。


三月の練習試合で足首を負傷し、しばらく部活を離れていた男だった。


「監督、俺、もういけます。医者の許可も出ました」


鬼米は机の前に立つなり、食い気味に言った。


森本は書類から顔を上げる。


「違和感は?」


「ないっす」


「本当か?」


「……ちょっとだけあります」


「なら、一軍復帰はまだだ」


「は?」


鬼米の眉が一気に吊り上がる。


「なんでですか! 俺、もう今まで通りプレイできます。納得できねぇっす!」


「まずは二軍で調整しろ。カテゴリ戦に出てもらう」


「三軍相手っすか?」


鬼米は鼻で笑った。


「だったら、まとめてぶっ潰して――」


「鬼米」


森本の声が低くなる。


鬼米の言葉が止まった。


「ぶっ潰すな。止めろ」


「……止めます」


「お前はすぐ頭に血が上る。三月の怪我も、相手の挑発に乗った結果だ」


「でも、あいつが先に――」


「乗るな」


森本の一言に、鬼米は黙った。


短気で単純。


すぐ怒る。


だが、森本の言葉だけは無視できない。


この監督が、自分の力も弱点も全部見抜いていることを、鬼米は分かっていた。


森本は静かに続ける。


「三軍に、面白い一年がいるらしい」


「一年?」


鬼米の目が細くなる。


「三軍の一年に、俺を止められるやつがいるんすか」


「自分の目で確かめろ」


鬼米はにやりと笑った。


「いいっすね。そういうの、嫌いじゃない」


森本は目を細める。


「ただし、カテゴリ戦をただの調整だと思うな。お前にとっては試合勘を戻す場でも、相手にとっては上に行くための勝負だ」


鬼米の表情が、少しだけ真面目になる。


「……手ぇ抜くなってことっすか」


「違う」


森本は短く返した。


「相手を見下すな、ということだ」


鬼米は一瞬黙り、それから口元を吊り上げた。


「全力でいきますよ」


「全力で止めろ」


「……全力で止めます」


森本は小さく息を吐いた。


「鬼米。お前のフィジカルは全国でも通用する。だが、力は使い方を間違えれば弱点になる」


鬼米は一瞬だけ黙った。


「……覚えときます」


そう言って、鬼米は監督室を出ていった。


廊下に響く足音は荒く、重い。


森本は閉じた扉を見つめる。


零明の重戦車、鬼米鉄。


短気で、単純で、すぐキレる。


だが、仲間想いで、勝負から逃げない男。


次のカテゴリ戦。


三軍から這い上がろうとする赤城たちの前に、最初の巨大な壁が立ちはだかろうとしていた。


私もサッカーをしていましたが、強靭なフィジカルを持つ選手って羨ましいですよね。私は、当時はひょろひょろだったのでいつも吹き飛ばされていました(笑)


次回で、「第二章 三軍の底から下剋上編」完結します!

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