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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第二章 三軍の底から下剋上 編
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28/50

第28話 大勝利!三軍の落ちこぼれたちが、二点差をひっくり返した

「鶴見!」


「マジかよ!」


「逆転だ!」


 鶴見は地面に倒れたまま、何が起きたのか分からないように目を瞬かせていた。


「……入った?」


 赤城が近づき、手を差し出す。


「入った」


 その瞬間、鶴見の顔がくしゃりと崩れた。


「っしゃああああああ!」


 赤城も珍しく、わずかに笑っていた。


 一年生たちが鶴見に駆け寄る。


 肩を叩き、頭をぐしゃぐしゃに撫で、誰かが叫び続けている。


 その輪から少し離れた左サイドで、牧は立ち尽くしていた。


 自分のクロスから、点が入った。


 自分が上がったから、道ができた。


 自分が走ったから、サッカーが動いた。


 胸の奥が熱かった。


 怖さは、まだある。


 足も震えている。


 でも、それ以上に――楽しかった。


 牧は遠くから、その輪を見つめていた。


 すると、赤城がふと振り返った。


 牧と目が合う。


 赤城は何も言わなかった。


 ただ、右手を握り、親指を立てた。


 ぐっと。


 牧は目を見開く。


 そして、小さく、ぎこちなく笑った。


 だが――試合はまだ終わっていない。


 横田が苛立ったようにボールを拾い、センターサークルへ戻る。


「まだ時間あるだろ! 浮かれてんじゃねぇぞ!」


 二・三年チームのリスタート。


 だが、横田たちの動きは明らかに鈍っていた。


 前半から自分たちが押し込み続けていたことで、余裕を持ってプレーしていたはずだった。


 しかし、後半に入り、赤城を中心に一年チームが一気にペースを上げたことで、彼らは想定以上に走らされていた。


 特に横田は、赤城を潰そうとして何度も追い回し、牧のオーバーラップにも振られ、鶴見の飛び出しにも対応しなければならなかった。


 息が上がっている。


 足が重い。


 ボールを受けても、いつものように身体が前へ出ない。


「くそ……なんで……」


 横田は荒い呼吸のまま、赤城を睨んだ。


 対する赤城は、汗こそ流していたが、まだ姿勢が崩れていなかった。


 鶴見も肩で息をしている。


 だが、目は死んでいない。


 むしろ、ゴールを決めたことで、さらに足が前へ出ていた。


 牧も左サイドで走り続けている。


 前半までの遠慮は消え、攻撃にも守備にも迷いがない。


「なんでだよ……!」


 横田はボールを持ちながら叫んだ。


「なんでお前ら、そんなに動けんだよ!」


 その言葉に、赤城が一歩前へ出た。


 横田は荒い息のまま、赤城を睨む。


「外周ばっか走らされてた一年が、なんで後半でそんなに動ける……!」


 赤城は静かに横田を見る。


 そして、わずかに口元を上げた。


「前半、俺と鶴見は出ていなかった」


「……は?」


「それもあるが」


 赤城は一歩、横田へ近づく。


「だが一番は――お前らが走らせてくれたおかげだ」


 横田の顔が引きつった。


 赤城は続ける。


「毎日毎日、紅白戦で潰すために走らせたんだろ?」


 その声は冷たくも、どこか皮肉を含んでいた。


「残念だったな。俺たちはそれで潰れなかった」


 横田は何も言えなかった。


「どんな練習でも、勝つための練習に変えられる」


 赤城の目が鋭くなる。


「変えられない奴が、負ける理由にするだけだ」


 横田の喉が鳴る。


 周囲にいた一年生たちが、息を呑んで赤城を見ていた。


 数日前、外周三十本を命じられた時は、全員が絶望した。


 だが、赤城は違った。


 増やされた十周分まで、自分で走った。


 そして、それを今、この試合で武器にしている。


 鶴見が汗だくの顔で笑った。


「……たしかにな」


 牧も左サイドで、静かに拳を握っていた。


 横田は歯を食いしばり、無理やりドリブルを仕掛ける。


「うるせぇ!」


 だが――足がついてこない。


 タッチが大きくなったボールを、鶴見が身体を投げ出して奪う。


「もう一本!」


 一年チームが前へ出る。


 時間は残りわずか。


 二・三年チームは焦り、雑なロングボールを放り込む。


 しかし赤城は落下地点を読み、味方に声をかけ、無理に攻めずにボールを回させた。


 牧がサイドで時間を作る。


 鶴見がこぼれ球を拾う。


 一年生たちが必死に身体を張る。


 前半までとは違う。


 誰かに怯えて走るのではなく――勝つために走っている。


 そして――。


 ピーッ、ピーッ、ピーッ!


 試合終了の笛が、夕暮れのグラウンドに響いた。


 三対二。


 一年チームの勝利。


 その瞬間、今度こそ一年チームは爆発した。


「勝ったあああああ!」

「マジで勝った!」

「二・三年に勝ったぞ!」


 鶴見はその場に膝をつき、両拳を握りしめた。


 牧は肩で息をしながら、空を見上げていた。

 赤城は静かに息を吐き、スコアボードを見る。


 三対二。


 それは、三軍の底にいた一年たちが、自分たちの足で掴んだ最初の勝利だった。



この章もそろそろ終わりかな?次回あたりに次なる宿敵も登場か? 次回もお楽しみに!

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