第26話 『二度目も来る』――赤城の読みがまた当たった
二・三年チームのボールで、試合が再開された。
二対二。
数分前まで余裕を見せていた二・三年チームに、もう笑みはなかった。
「何やってんだよ、お前ら!」
横田の怒号が、グラウンドに飛ぶ。
「一年相手だぞ!? ビビってんじゃねぇよ! もっと強くいけ!」
その声には、明らかな焦りが混じっていた。
一方、一年チームの空気は変わっていた。
前半までの重たさは消えている。
足はまだ重い。
疲労も残っている。
それでも、誰も下を向いていなかった。
赤城がいる。
そう思うだけで、不思議と全員が前を向けた。
自然とボールは赤城を見るようになり、守備では赤城の動きに合わせてラインが押し上がる。
誰かが命令したわけではない。
戦術として決めたわけでもない。
それでも、一年チームは少しずつ、赤城零を中心に回り始めていた。
横田チームはリスタート後、一度ボールを下げる。
センターバックからボランチへ。
ボランチから右へ散らす。
だが、少しプレッシャーを受けると、結局また中央へ戻ってきた。
そして――トップ下へ縦パスが入る。
その瞬間。
「――そこだ!」
鶴見が再び飛び出した。
トップ下の足元に入る寸前で、ボールを刈り取る。
相手のトップ下が目を見開いた。
「またかよ……!」
鶴見はボールを奪いながら、ハーフタイムの赤城の言葉を思い出していた。
『相手の攻撃は、必ずトップ下を経由する』
後半に入る前、赤城はそう言っていた。
『前半の攻撃は、ほとんどトップ下から始まっている。あいつらは、その形でしか前進できていない』
『でも、一回俺がそこで取れたら、さすがに変えてくるんじゃねぇの?』
鶴見がそう聞くと、赤城は静かに首を振った。
『本当に強いチームなら変える。だが、未熟なチームほど、同じ失敗を繰り返す』
その声は、妙に重かった。
『失敗した時に別の選択肢を持っていない。焦れば焦るほど、慣れた形に逃げる。だから、読まれていてもトップ下に入れ続ける』
『……そんなもんなのか?』
『そんなものだ。弱いチームほど、自分たちの癖に気づけない』
そして赤城は、鶴見をまっすぐ見て言った。
『だからお前は、そこを狙え。一度取れても、二度目が来る。必ずだ』
本当に、その通りになった。
鶴見は、背筋が震えるのを感じた。
(どこまで見えているんだよ、零)
だが、驚いている暇はない。
顔を上げる。
赤城は中央にいる。
「零!」
鶴見はパスを出そうとする。
しかし、その瞬間――。
横田が叫んだ。
「赤城を潰せ!」
横田を含め、三人が一気に赤城へ寄せた。
前、横、背後。
赤城へのパスコースは、完全に消されている。
「くそ……!」
鶴見は足を止めかける。
さすがに出せない。
赤城に預けたい。
でも、この状況で無理に出せば奪われる。
その時だった――。
その時、いよいよあいつが…! 次回もお楽しみに!




