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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第二章 三軍の底から下剋上 編
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24/50

第24話 『俺に向かって撃て』――そして、エアゼロが炸裂した

 二・三年ボールで試合が再開された。


 二・三年チームは、まだどこか浮ついていた。


 一点を返された。


 だが、まだ同点ではない。


 しかも相手は一年。


 さっきのゴールも、ほとんどの者は「まぐれ」だと思い込もうとしていた。


 横田も同じだった。


「落ち着け! 一本回していくぞ!」


 キックオフ直後、二・三年チームは一度後ろへボールを下げた。


 センターバックからボランチへ。


 ボランチから右サイドへ。


 そして、中央に顔を出したトップ下へボールが入ろうとした――その瞬間。


「――そこだ!」


 鶴見が飛び出した。


 トップ下に渡るはずだった縦パスを、鶴見が身体を投げ出すようにしてカットする。


「なっ……!?」


 相手のトップ下が目を見開いた。


 鶴見自身も驚いていた。


 本当に来た。


 赤城が言った通りだった。


 後半開始前。


 赤城は鶴見に、静かに言っていた。


『相手の攻撃は、必ずトップ下を経由する』


『え?』


『前半の二点。チャンスの起点は全部そこだ。サイドに散らす前も、ゴール前へ入れる前も、一度中央のトップ下に預けている』


『そんなの、ベンチで見てただけで分かるのかよ……』


『見ていれば分かる。だから再開直後、相手は必ずそこに入れる。お前はその一歩前に出ろ』


 その言葉通りに、ボールは来た。


 鶴見の心臓が跳ねる。


(マジかよ……!)


 だが、驚いている暇はない。


 鶴見はボールを足元に収めると、すぐに顔を上げた。


 その視線の先に、赤城がいた。


 さらに、赤城の声が記憶の中でよみがえる。


『ボールを奪ったら、俺を狙え』


『俺を狙えって……どんなパス出せばいいんだよ』


『シュートを打つつもりでいい』


『は? シュート? パスじゃなくて?』


『ああ。俺に向かって撃て』


『そんな雑なボールで平気なのかよ』


『問題ない』


 あの時の赤城は、少しも迷っていなかった。


 だから鶴見も、迷わなかった。


「零ッ!」


 鶴見は右足を振り抜いた。


 パスというより、ほとんどシュートだった。


 低く、速く、強いボール。


 だが――。


 少しだけ、軌道がズレた。


「しまっ……!」


 赤城の足元ではない。


 身体のやや後ろ。


 しかも、少し浮いている。


 普通ならトラップに手間取る。


 下手をすれば、そのまま相手に奪われる。


 そして、赤城の背後には横田がいた。


「もらった!」


 横田は赤城のユニフォームを掴んだ。


「さっきのはまぐれだろうが!」


 引っ張られる。


 身体の軸がずれる。


 横田は勝ったと思った。


 だが――。


 赤城の目は、ボールだけを見ていた。


 鶴見のパスはズレている。


 完璧なタイミングではない。


 軌道も、本来のエアゼロに必要な理想のボールではない。


 さらに、この身体はまだレッドの感覚に追いついていない。


 筋力も。


 反応も。


 踏み込みも。


 かつての自分とは違う。


 それでも――。


 赤城は、ボールの落下点を読んでいた。


 横田にユニフォームを引かれながら、赤城は身体を半歩だけずらす。


 胸ではなく。


 足元でもなく。


 膝下の高さで、ボールを迎える。


 その瞬間――。


 トラップとシュートが、重なった。


 完全なノーモーションではない。


 かつて世界中を震撼させたレッドの代名詞――エアゼロ。


 本物なら、トラップとシュートの境目すら存在しない。


 だが、今の一撃には、ほんのわずかな“間”があった。


 赤城の身体が、まだ慣れていない。


 それでも――。


 その場にいた高校生たちにとって、それは十分すぎるほど異常だった。


「――エアゼロ」


 赤城の足がボールに触れた瞬間――。


 ボールは、もうゴールへ向かっていた。


 横田の目が見開かれる。


「え……?」


 止める以前の問題だった。


 いつ蹴ったのか分からない。


 奪おうとしたはずのボールが、赤城の足元に収まることなく、そのまま消えたように見えた。


 キーパーは、一歩も動けなかった。


 ボールは低い弾道でゴール右隅へ突き刺さる。


 ネットが、鋭く揺れた。


 二対二。


 同点。


 一瞬――。


 音が消えた。


 誰も声を出せなかった。


 横田は、赤城のユニフォームを掴んだまま、膝から崩れ落ちた。


「な、なんだよ……今の……」


 その顔から、余裕が完全に消えていた。


いやあ、ヒーローってかっこいいですよね。次回もお楽しみに!作者の私は、怪我によりサッカーができなくなってしまい、少し落ち込んでいます。

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