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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第二章 三軍の底から下剋上 編
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23/49

第23話 『逆転まで、あと二点だ』

 横田はゴール前で固まっていた。


 今、自分はクリアしようとした。


 だが、その前に赤城がいた。


 遅れて、横田は顔を歪めて笑う。


「……ま、まぐれだろ」


 二・三年生たちも、慌てて笑った。


「そうだよ、あんなの偶然だって」


「GKが弾いた場所に、たまたまいただけだろ」


 一年生たちの中にも、同じような空気が広がる。


「赤城が決めた……?」


「いや、でも今のはまぐれじゃね?」


「たまたまだろ。あんな反応、狙ってできるわけないし」


 だが――。


 鶴見だけは違った。


 赤城の背中を見ながら、胸の奥がざわついていた。


(違う……まぐれじゃねぇ)


 鶴見は知っている。


 赤城の中にいる“誰か”が、ただの高校生ではないことを。


 その視線。


 その判断。


 そして、あの一歩目。


 あれは偶然じゃない。


(ロングシュートで終わらせる気なんて、最初からなかったんだ)


(GKに弾かせる場所まで見えてた。横田さんがクリアに来るのも、その前に自分が入れるのも……全部、分かってたのかよ)


 背筋が震えた。


 まるで――。


 赤城だけが、別の速度で試合を見ているようだった。


 牧廻那もまた、左サイドで呆然と赤城を見ていた。


(今の、セカンドボールへの反応……普通じゃない)


 ロングシュートを打ったあと、普通なら足が止まる。


 決まるか、外れるか。


 誰もが一瞬、ボールの行方を目で追ってしまう。


 だが、赤城は違った。


 打った瞬間にはもう、次の場所へ走っていた。


 GKが弾く前に。


 横田が動く前に。


 まるで――。


 ボールが落ちる未来を知っていたみたいに。


 牧は小さく息を呑んだ。


 その一方で、横田は無理やり笑みを作り、赤城に近づいた。


「おいおい、まぐれで嬉しいかよ、赤城」


 赤城は何も答えなかった。


 ただ、ゴールネットから跳ね返ったボールを拾い、センターサークルの方へ歩き出す。


 そして、その口が小さく動いた。


「あと二点」


 横田の眉が動く。


「……あ?」


 赤城はボールを抱えたまま、ゆっくりと横田を見た。


 その目は、さっきまでの静かな目ではなかった。


 冷たく、鋭く――。


 そして、圧倒的な自信を宿していた。


「逆転まで、あと二点だ」


 その一言に――空気が変わった。


 横田は一瞬、言葉を返せなかった。


 目の前にいるのは、さっきまで自分が笑っていた一年。


 なのに今、その赤城から放たれる圧に、横田は本能的に一歩引きそうになった。


「……調子、乗んなよ」


 そう言った声は、わずかに震えていた。


 周囲の部員たちの視線も変わっていた。


 まぐれかもしれない。


 偶然かもしれない。


 それでも――。


 今のゴールは、何かが違った。


 赤城零を見る目が、少しずつ変わっていく。


次回もお楽しみに!

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