第22話 後半開始、三軍の一年がゴールを奪った
後半開始の笛が鳴った。
二・三年チームの選手たちは、明らかに気を抜いていた。
前半は二対〇。
一年チームは、ほとんど何もできていない。
しかも後半から出てきたのは、つい数日前まで“外周最下位”と笑われていた赤城零と、三軍の中でも目立った実績のない鶴見銀次。
横田は中盤で軽く首を回しながら、鼻で笑った。
「おいおい、後半からヒーロー登場か?」
周囲の二・三年生たちも笑う。
一年チームのキックオフ。
ボールが軽く後ろへ下げられた瞬間、赤城は静かに一歩前へ出た。
鶴見が横目で見る。
「零……?」
赤城の目は、すでにゴールを見ていた。
次の瞬間。
赤城はセンターサークル付近でボールを受けると、迷いなく右足を振り抜いた。
「は?」
横田が声を漏らす。
距離がありすぎる。
まだ後半が始まったばかり。
相手陣内にも入り切っていない位置。
誰もがそう思った。
だが――。
赤城の放ったボールは低く、鋭く、一直線にゴールへ向かった。
油断していた相手GKが、慌てて反応する。
「うおっ……!」
なんとか両手ではじく。
ボールはゴール前へ弾かれた。
「危ねぇな、くそ!」
横田が慌てて戻り、こぼれ球をクリアしようと足を振る。
その瞬間だった。
赤城が、そこにいた。
まるで、最初からボールがそこに弾かれることを知っていたかのように。
横田の足がボールに触れる寸前、赤城は身体を滑り込ませるようにして一歩前へ出た。
そして――。
跳ね返ったボールを、ダイレクトで叩いた。
乾いた音が鳴る。
ボールは横田の足元をすり抜け、GKの逆を突き、ゴールネットに突き刺さった。
一瞬、誰も動かなかった。
遅れて、ネットが揺れる音だけがグラウンドに響いた。
「……入った?」
一年生の誰かが、呆然とつぶやいた。
スコアは二対一。
後半開始から、わずか数十秒。
赤城零が、ゴールを奪った。
グラウンド脇で見ていた吉澤コーチと佐々木コーチも、言葉を失っていた。
「……今の、見たか?」
吉澤が低くつぶやく。
佐々木は目を細め、赤城を見る。
「ロングシュートを打った時点で、GKが正面でキャッチしづらい球質だった。あえて弾かせた……?」
「いや、まさか」
「だが、こぼれ球への入りが早すぎる。普通の反応じゃない」
二人の視線が、赤城に釘付けになる。
「……あんな選手、うちにいたか?」
とうとう、赤城が反撃の狼煙を上げました。さて、後半はまだ始まったばかり!次回もお楽しみに!




