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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第二章 三軍の底から下剋上 編
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20/50

第20話 誰も気づかなかった一年生の才能

そして、前半が始まった。


笛の音と同時に、一年チームはボールを追う。


だが、明らかに足が重かった。


一歩目が遅い。


切り替えが鈍い。


パスを受けるための動き出しも遅れる。


ここ数日の走り込みの影響は、想像以上に大きかった。


二・三年チームは、そこを見逃さない。


横田は中盤でボールを受けると、余裕を持って周囲を見渡した。


「遅ぇんだよ、一年」


軽く相手をかわし、右サイドへ展開する。


そこからクロスが上がり、ゴール前で押し込まれた。


一点目。


一年チームの肩が落ちる。


ベンチの鶴見が歯を食いしばった。


「くそ……みんな足が動いてねぇ」


赤城は黙って試合を見ていた。


視線は、ボールだけを追っているわけではない。


選手の立ち位置。


走り出し。


守備のズレ。


呼吸の乱れ。


そして――。


赤城は、ひとりの選手に目を止めた。


牧廻那。


左サイドバックとして出場している牧は、目立たなかった。


派手なプレーはしない。


大声で指示を出すわけでもない。


ボールを受けても、無難に近くの味方へ預ける。


だが、赤城は違和感を覚えた。


「……牧」


「え?」


鶴見が横を見る。


赤城は視線を牧に固定したまま言った。


「なぜ、あいつは三軍にいる?」


「牧が?」


「ああ」


牧は相手の右サイドに対して、絶妙な間合いを保っていた。


近すぎない。


遠すぎない。


相手が縦へ行こうとすれば半身で進路を塞ぎ、内側へ切り込もうとすればパスコースを消す。


守備の立ち位置がいい。


それも偶然ではない。


「守備の間合いが上手い。相手の重心を見ている。ポジション修正も早い」


鶴見は目を凝らす。


「そうか? 牧って、あんまり目立つ印象ねぇけどな。地味っていうか……いつも無難にやってる感じ」


「無難に見えるようにしているのかもしれない」


「え?」


赤城は答えず、さらに牧を見る。


牧には何度か、攻撃参加できる場面があった。


味方がボールを持ち、前方に大きなスペースが空く。


相手のサイドハーフが中に絞り、牧の前には走り込む道ができている。


サイドバックなら、迷わず上がる場面。


だが、牧は動かなかった。


一歩だけ前に出かけて、すぐに止まる。


そして後方に残り、無難な位置を取る。


赤城は目を細めた。


守備が得意なだけではない。


攻撃に出るタイミングを理解している。


それなのに、行かない。


前半の途中、横田チームが二点目を奪った。


一年チームは完全に押し込まれていた。


足はさらに止まり、声も消えている。


横田は得点に絡むと、わざと一年ベンチの方を見て笑った。


「おい赤城、見てるか? これがサッカーだぞ」


二・三年生たちが笑う。


鶴見の肩が震えた。


「……あいつ」


赤城は何も言わない。


ただ、静かにその光景を見ていた。


やがて、前半終了の笛が鳴った。


スコアは二対〇。


一年チームは、ほとんど何もできずに前半を終えた。


次回、いよいよ赤城が反撃の狼煙を上げるかな? 次回もお楽しみに!

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