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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第二章 三軍の底から下剋上 編
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19/49

第19話 ベンチから始まる下克上

週末。


零明学園サッカー部三軍グラウンドには、いつもより張り詰めた空気が漂っていた。


月に一度の三軍内紅白戦。


この試合で結果を残した者だけが、二軍とのカテゴリ戦に進める可能性を得る。


つまり、三軍にいる選手たちにとっては、数少ない昇格への入口だった。


グラウンド脇には、二人のコーチの姿がある。


一軍コーチの吉澤。


そして、二軍監督兼コーチの佐々木。


森本監督の姿はない。


それでも、この二人に見られているという事実だけで、三軍の選手たちの表情はいつもより硬かった。


「よし、今日の紅白戦はいつも通りでいいよな?」


そう言ったのは、三軍キャプテンの横田世古史だった。


横田は全体を見回しながら、薄い笑みを浮かべる。


「一年対、二・三年の混合チーム。これが一番分かりやすいだろ」


その言葉に、一年生たちの表情がわずかに曇った。


ここ数日、一年生はまともにボールを触らされていない。


外周。


ダッシュ。


体力練習。


紅白戦を目前に控えているにもかかわらず、実戦感覚を削られ続けていた。


それでも、組み分けに反論する者はいなかった。


一年生たちは、グラウンドの端で集まる。


「スタメン、どうする?」


「とりあえず、前の紅白戦で出たメンバー中心でいいんじゃね?」


「赤城と鶴見は……」


その場に、一瞬だけ微妙な空気が流れた。


ここ数日、赤城の外周の速さには誰もが驚いていた。


三十本をトップで走り切り、さらに増やされた十本まで走った姿は、一年生たちの記憶に焼き付いている。


だが、それとサッカーの実力は別だった。


「赤城は……後半でよくないか?」


「鶴見も、まだ様子見で」


「悪い。今は勝てるメンバーでいきたい」


鶴見は少し悔しそうに唇を結んだ。


だが、何も言わなかった。


赤城も静かにうなずく。


「分かった」


その様子を、少し離れた場所から横田が見ていた。


ベンチへ向かう赤城と鶴見を見て、横田がわざと聞こえる声で笑う。


「なんだよ、赤城。結局ベンチかよ」


二・三年生たちも、それに乗るように笑った。


「外周だけ速くても、サッカーはできねぇもんな」


「ベンチでよく見とけよ。これが紅白戦だ」


鶴見の眉がぴくりと動く。


「……あいつら」


拳を握り、前に出かけた鶴見の肩に、赤城がそっと手を置いた。


「やめておけ」


「でもよ……!」


「言葉で返す必要はない」


赤城は横田たちを見据えたまま、静かに言った。


「サッカーでやり返せばいい」


鶴見は息を呑む。


赤城の声は荒くない。


だが、その奥には確かな熱があった。


「……分かったよ」


鶴見は拳をほどき、ベンチに座った。


赤城も、その隣へ腰を下ろす。


グラウンドでは、すでに選手たちがアップを始めている。


二人の視線が、自然とピッチへ向いた。


今日、この場所で。


紅白戦という名の選考が始まる。


いよいよ、紅白戦…しかし、赤城と鶴見はまさかのベンチ泣。次回もお楽しみに!

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