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世界1のサッカー選手と落ちこぼれ高校生が入れ替わった話  作者: おばれ
第一章 落ちこぼれの身体、世界一の魂 編
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第15話 三軍の常識を、俺が壊す

「一年! 外周三十本だ!」


横田の怒鳴り声が、三軍グラウンドに響き渡った。


「三十……!?」


一年生たちの間から、思わず悲鳴のような声が漏れる。


横田は赤城を睨みつけたまま、吐き捨てるように言った。


「文句あるやつは今すぐ帰れ。紅白戦に出たいやつは走れ」


その場に、重たい沈黙が落ちた。


誰も横田に逆らえない。


だが、不満の矛先がどこへ向かうのかは明らかだった。


横田たち二年生が離れていくと、すぐに数人の一年生が赤城の周りへ集まってきた。


「……おい、赤城」


低い声だった。


赤城がそちらへ視線を向ける。


「何だ」


「何だ、じゃねぇよ。お前のせいで走り込み増えたんだけど」


別の一年生も、苛立ちを隠さず口を挟む。


「マジで勘弁しろよ。今週末、紅白戦なんだぞ。ここで足潰されたら終わりじゃねぇか」


「先輩に目ぇつけられたら、カテゴリ戦どころじゃねぇんだよ」


周囲の一年生たちも、口には出さないものの、同じような視線を赤城へ向けていた。


鶴見が慌てて二人の間に入る。


「おい、みんな。言いたいことは分かるけど――」


「鶴見は黙ってろよ」


一年生の一人が吐き捨てる。


「お前、赤城と仲いいからかばってるだけだろ」


その言葉に、鶴見の表情が一瞬だけ強張った。


だが――。


「走りが増えたことは、俺の責任だ」


赤城が静かに口を開いた。


一年生たちの視線が、一斉に赤城へ集まる。


赤城は逃げずに、全員を正面から見た。


「そこは謝る。すまなかった」


あまりにもまっすぐな謝罪だった。


文句を言っていた一年生たちも、一瞬だけ言葉を詰まらせる。


しかし、怒りが消えたわけではない。


「……謝ればいいってもんじゃねぇだろ」


「そうだよ。お前、何考えてんだよ」


赤城は淡々と答える。


「サッカーがうまくなりたい。そのために、今何をするべきかを考えた」


「は?」


「紅白戦前に一年だけ走らされる。それが本当に上に行くための練習なのか、確認する必要があると思った」


赤城の声は落ち着いていた。


だが、その落ち着きが逆に、一部の一年生の苛立ちを煽った。


「何かっこつけてんだよ」


一人が吐き捨てる。


「一番下手くそのくせに」


「おい、それは言い過ぎだろ!」


鶴見がすぐに反応する。


しかし、一年生は止まらなかった。


「言い過ぎじゃねぇよ。赤城、お前いつも外周ビリじゃん」


「ミニゲームでも全然動けねぇし、トラップもパスもミスばっかだっただろ」


「そんなやつが上級生に喧嘩売って、俺らまで巻き込んでんじゃねぇよ」


空気が重くなる。


鶴見は悔しそうに歯を食いしばった。


今の赤城は違う。


中身が違う。


プレーも、考え方も、何もかも。


だが、それをここで説明することはできない。


赤城は何も言い返さなかった。


ただ、少しだけ息を吐く。


そして、もう一度頭を下げた。


「……そうだな。すまなかった」


「零……」


鶴見が驚いたように赤城を見る。


赤城は顔を上げる。


「今までのお前たちが見てきた俺は、確かにそうだったんだろう」


一年生たちは黙って赤城を見る。


「なら、そこは否定しない」


誰も口を挟まない。


赤城は、静かに続けた。


「ただ、これからは違う」


その瞳に、揺らぎはなかった。


「紅白戦で証明する」


怒鳴るわけでもない。


強がるわけでもない。


ただ、自分で決めた未来を告げるような声だった。


それでも、重たい空気は完全には消えない。


鶴見は少し迷った。


そして、申し訳なさそうに一年生たちの前へ出る


突然、鶴見が頭を下げる。


「零の言ってること、間違ってないと思う。でも、そのせいでメニューが増えて、みんながキツくなったのも事実だ。俺からも謝るから……許してくれ」


一瞬、誰も何も言わなかった。


鶴見が頭を下げた瞬間、赤城もわずかに目を見開いた。


だが、やがて一人がため息を吐く。


「……まあ、鶴見がそこまで言うなら」


「でも、もうこれ以上メニュー増やすのは勘弁してくれよ……」


「俺たち、マジで潰れるからな」


渋々ではあったが、少しずつ空気が落ち着いていく。


鶴見は小さく息を吐くと、赤城の隣へ戻った。


そして、周囲に聞こえないように声を落とす。


「……なあ、零」


「ん?」


「言ってることは、最もだと思う」


 鶴見はちらりと周囲を見る。


「でも、このまま全員潰れたら、まずいからさ。そこは頼む」


「……」


「ここにいる連中の多くは、みんなサッカー選手みたいな精神を持ち合わせてるわけじゃないから」


その言葉に、赤城は少しだけ黙った。


確かにそうだ。


自分にとっては当たり前でも、ここにいる全員が同じ覚悟でサッカーをしているわけではない。


プロを目指している者もいれば、まだそこまで考えていない者もいる。


それぞれに、それぞれの限界がある。


「……そうだな」


赤城も小声で返す。


「俺が、少し出過ぎた。すまなかった。俺のために頭を下げてくれたことも礼を言う。」


「気にするな。分かってくれたなら、それでいいよ」


鶴見は小さく笑った。


赤城も、ほんの少しだけ口元を緩める。


正しいことを言うだけでは、チームは動かない。


それもまた、サッカーなのだと。


鶴見からの謝罪もあり、とりあえず、その場は収まった。


一年生たちは、重い足取りで外周へ向かっていく。


まだこのときは、誰も知らない。


後の紅白戦で――。


赤城零という名前が、三軍の常識を根底から覆すことになるなど

読者(仲間)の皆様へ


次回、赤城の逆襲始まる!! お楽しみに!

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