8話 3【意外な合コン相手】
* * *
「希望、彼氏と別れたって話、マジなの?」
「嘘ついてどうするのよ」
日曜、学校からそう遠くはない最寄駅に集合した私と友人たち。
つまらなそうに携帯電話を操作する私に友達の一人が声をかけてきた。
私は友達の言葉に苦笑した。
「なんか冷めちゃったんだよねー。長く付き合うと色々あるのよ。だから今日はさそってもらって嬉しかった。ありがとね」
「今日は新しい恋の相手見つけようね!」
「うん」
友だちの言葉に私は満面の笑みを浮かべた。
内心、合コンの誘いを受けたことを後悔していたのだが。
新しい出会いが欲しいわけではない。
私が本当に欲しいものは「心の休息」だ。
自分すら知らない一面を知り、しっかりと向き合いたい。
そう思っているのに、移す行動すべてが空回りになってしまう。
今日のこともその一つだ。
「そういえば聞いてなかったけど、相手の男の子ってどういう人が来るの?」
「え?うちの学校のやつらだけど……」
「え……そうなの」
「大丈夫だって!希望は今フリーでしょ?気にせず楽しもう!」
「うん……」
今日の合コンでの収穫はなさそうだ。
相手が同じ学校の生徒だなんて、楽しめるはずがない。
私が悠希の彼女ということは多くの生徒が知っている。
この合コンに参加するということは、必然的に悠希と破局した事実を語らなければいけないのだろう。
これではせっかく彼が私のためにしてくれた優しさを自分で踏みにじることになってしまう。
私の心は強い自己嫌悪の感情に包まれた。
数分後、相手方の男性たちが姿を現した。
てっきり知り合いばかりのつまらない合コンになると思っていたのだけれど、私のことを知る者はいなかった。一人を除いて。
「ちょっと渚!今日の相手ってうちの学校の生徒じゃないの?」
小声で耳打ちする私に友達である渚は「ああ」と思い出したように言った。
「確かにうちの学校の生徒だよ。うちらと学科が違うけど」
「……そういうことか」
中高一貫校であり、巨大な校舎を持つ我が校は、普通科、進学科、経済ビジネス科が設けられている。
てっきり同じ学科の生徒だと思い込んでいたのだけど、その予想は外れたようだ。
話を聞いてみると、彼らは経済ビジネス科の一年生で、全員サッカー部とのこと。
男性陣五人の中で、私は一人だけ見たことのある普通科の生徒を見つけた。
直接話したことはないけれど、彼はいつも悠希の近くにいたから覚えている。
先日は、足を踏み外してしまいそうだった私を止めてくれた恩人。
久藤廈織は私の存在に気が付くと、不思議そうに首を傾げた。
無理もないだろう。彼はまだ、私と悠希が別れたことを知らないのだから。
駅前のカラオケ店へ移動し、合コンは開始した。
次の更新は11月7日の昼過ぎの予定です
この二人の話も書くの好きなんですが、もっと書きたいのは兄妹の話……
はやく書きたい!




