↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
レジェンド  作者: 神無月 紅
再びガンダルシアへ。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4238/4269

4238話

「うわ、ちょっと失敗したな」


 空中でアサシン……レッドキャップアサシンの胴体を切断したレイは、部屋の中の様子を見て思わずそう呟く。

 空中で胴体を切断されたアサシンは、当然ながら地面に着地する。

 その時にまだ胴体がくっついてはいた。

 よく切れる包丁で大根を切ってから切断面をくっつけると、そのまま普通にくっついているのと同じ要領だ。

 よく切れる包丁で出来るのだから、当然ながらレイの振るうデスサイズでも同じことが出来る。

 それこそレイがデスサイズを振るえば、身体が切断されても動かない限りは数分……あるいは十数分、場合によっては数時間は生きていられるかもしれない。

 しかし、アサシンは空中にいる時にデスサイズによって切断され、その状況で地面に着地したのだ。

 当然ながらその衝撃は大きく、切断された胴体をずらすのには十分だった。

 結果として、着地した勢いのまま胴体がずれたアサシンは、周辺に内蔵を撒き散らかすことになった。

 それが、現在レイの見ている光景。


「……せめてもの救いは、魔石が無事だったことか」


 レイが切断したのは、アサシンの腹の辺りだ。

 心臓のある部分は無事だったこともあり、アサシンの魔石はまだ身体の中にある筈だった。

 レイが安堵してるのは、やはり今もまだセトが土砦の外でレッドキャップの群れを相手に戦って……もしくは蹂躙しているからだろう。

 レイとセトは魔力的な繋がりがあるので、もしここでアサシンの魔石を切断して魔獣術が発動していれば、いつもの脳裏に響くアナウンスメッセージが、外で戦闘をしているセトにも聞こえている筈だった。

 そうなると、戦闘をしている中でいきなりそのようなことになるのだから、場合によってはそれが致命傷になってもおかしくはない。

 実際、何度かレイがセトと別行動をしている時に、何らかの理由でセトが遭遇したモンスターの魔石を飲み込んだことによって魔獣術が発動し、別の場所にいたレイの脳裏に突然アナウンスメッセージが流れたことがある。

 その時はレイも当然ながら驚いたので、自分がそのようなことをやろうとは到底思えなかった。


「魔獣術については、セトと合流してからだな。その時には……」


 そうレイが呟いた瞬間……


【セトは『霧 Lv.四』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。


「……おう?」


 予想外……あまりに予想外な様子に、レイの口から我知らずそんな声が漏れ出る。

 先程セトのことを思って魔石をデスサイズで切断されないように注意してアサシンを殺したというのに、セトはどうやらその辺りについては考えていなかったらしい。

 そもそも、デスサイズの場合は少し斬る場所を間違えれば、刃によって魔石が切断されることは珍しくない。

 だが、セトが魔獣術を発動させるには魔石を直接飲み込む必要がある。

 そしてレイが偶然土砦から外に出た時、セトは近接戦闘を行うのではなく、離れた場所から一方的にブレス系の攻撃を使ってレッドキャップの群れを蹂躙していた。

 そのような戦闘の状況である以上、セトが魔石を飲み込むなどということは考えられなかった。

 それでもこうして脳内にアナウンスメッセージが響いたということは、それはつまり意図的なものなのは間違いない。

 それを聞いたセトがどのように思うのかは別として、こうして実際にセトが魔獣術を使ったのを思えば、どうしてもそのように思うなという方が無理だった。

 ……勿論、レイには思いつかないような何らかの理由によって、偶然魔獣術が発動したといった可能性もない訳ではないのだが。


「セトにしては珍しいよな。……とはいえ、今のこの状況を考えると、セトもやってられないと思ったのかもしれないが」


 レイが見たセトの戦いは、セトが空を飛びながら一方的にレッドキャップを蹂躙しているというものだった。

 その上で敵を倒し続けていたセトは、延々と続くその戦いに、飽きたといった可能性が十分にあった。

 その為に気分を変える為、土砦の外で希少種や上位種と遭遇し、ついつい魔石を飲み込んでしまったのだろう。


「とはいえ……霧? 霧、ねぇ。一体どういうレッドキャップを倒したんだ?」


 これが例えば水球のようなスキルのレベルが上がったのなら、例えばメイジ系のレッドキャップを倒したのだろうとレイも納得出来る。

 あるいは、普通のレッドキャップの正当な進化先とでもいうべき、近接戦闘に特化した希少種や上位種の魔石であれば、パワークラッシュやパワーアタックといったスキルを習得していてもおかしくはない。

 だが……霧。

 レイにしてみれば、一体どんな希少種や上位種の魔石を使えばそのようなスキルのレベルが上がるのか、全く分からなかった。


「考えられるとすれば……いわゆる、ドルイド系か?」


 この辺りはあくまでも日本にいた時に楽しんだゲームや漫画、アニメの知識からくるものだったが、いわゆる自然現象を操る魔法系の職業を思い浮かべるレイ。

 もっとも、もしレイの予想通りに本当にドルイド系のレッドキャップだとしたら、この二十一階においてはあまり役に立たないと思えるような存在だったが。

 何しろ、自然現象を操る能力というのは、当然ながら自然が豊かな場所でこそ有効に使えるものだ。

 例えば、二十階の草原のような場所であったり、もしくは十九階の夜の砂漠、十五階の溶岩の階層などもドルイド系にとっては戦いやすい場所だろう。

 しかし、この地底湖の階層は違う。

 地底湖の階層と呼ばれている――最初にレイが呼んだのがギルドを通して広がったのだが――場所ではあるが、この土砦のある場所は分岐路になっている道で地底湖のない方に進んだ先にある。

 つまり、この土砦のある場所に限って言えば、ここは地底湖でも何でもなく、普通の洞窟の階層ということになる。

 そのような場所で一体どのように戦えばドルイドの能力を有効に使えるのか。


「あ、いや……洞窟というか地面とかを操れると考えれば、あるいは……?」


 レイが思い浮かべたのは、デスサイズのスキルである地形操作だ。

 広範囲の地面を自由に動かすことが出来る、それこそ普通の戦闘で使うようなものではなく、レイの代名詞――という割に最近はあまり使う機会はないが――の火災旋風と同じく、戦略級のスキルと評しても決して間違いではないだろう。

 もしドルイドがそのような攻撃が出来るのなら……あるいは地形操作程に大規模ではなくても、似たような攻撃が出来るのなら、セトにしてみればそのような敵をそのままにはしておけない。

 その上で、希少種や上位種といったことを考えれば、殺して死体にしてしまうと他の死体に紛れて見つけるのが難しくなる。

 かといって、まさか死体を掴んだまま戦闘をする訳にもいかないだろう。

 セトとレッドキャップの圧倒的な……それこそ比べるのも馬鹿らしいくらいの戦力差を考えれば、それでも出来ないことはないのだろうが。

 ただ、出来るからといって、そうして行動するのに持ち歩く死体が邪魔なのは間違いない。

 なら、必要なのは魔石……勿論希少種や上位種の死体ともなれば魔石以外に有用な素材の類もあるかもしれないが、それを考えた上でも魔石が最優先なのは間違いないということで、牙や爪を使って魔石を奪ってもおかしくはない。

 そして、そうして魔石を奪った際に戦闘の途中ということで誤って魔石を飲み込んでしまったのか、もしくは爪で掴んでいるのではなく、クチバシで咥えていた魔石を戦闘中に何らかの拍子に飲み込んでしまったのか。

 もしくは、それ以外の理由で魔石を飲み込んだという可能性もあるが、レイには想像出来なかった。

 そう考えると、レイもセトが魔獣術を使った理由については仕方がないだろうと思っておく。


「ただ、そうなると俺も魔石を使ってもいいのか?」


 レイは部屋の中に広がっている、アサシンの残骸と呼ぶべき光景を見ながら、そんな風に呟く。

 セトがどのような理由で魔獣術を使ったのかは、レイにも分からない。

 分からないが、それを考えた上でもレイもまた自分がこのアサシンの魔石を使っても構わないのではないかと、そのように思う。

 そうして少し考え……


「うん、使おう」


 そうレイが判断したのは、セトが魔獣術を使ったというのもあるが、それ以上に部屋の中にいるレイに向かってアサシンが襲ってきたことからも分かるように、希少種や上位種の中でもアサシンの数はそれなりに多いのではないかと思ったからだ。

 勿論、それが真実かどうかは分からない。

 しかし、それでもこうして実際にアサシンが襲ってきたのを理解出来る以上、レイとしてはそれなりに多いだろうと判断するしかなかった。


「ともあれ、解体してからだな」


 そう呟くと、レイはミスティリングからドワイトナイフを取り出し、アサシンの死体……正確には死体のうち上半身に向かって魔力を込めたドワイトナイフを突き刺す。

 いつものように部屋の中が眩く輝き……


(うーん……扉とかそういうのもない場所なんだし、もしかしたらこの光に誘われてレッドキャップが……希少種や上位種がやって来るかもしれないな。まぁ、そうなったらその時はその時か。寧ろアサシンがやって来れば、アサシンの魔石が二個入手出来る訳だし)


 出来れば希少種や上位種がやって来てくれるといいんだけどと思いつつ、光が消えるのを待つ。

 やがてその光が消えると……


「あれ、意外だな」


 アサシンという希少種や上位種であるレッドキャップだったが、それでもレッドキャップであるのは変わらないので、素材らしい素材は残らないと思っていた。

 だというのに、地面に残っているのは魔石以外にも爪があった。

 それもただの爪ではなく、先端が黒く染まっている。


「アサシンだけあって、こういう感じになるのか」


 恐らくはアサシンの必殺の攻撃とでも呼ぶべきものだったのだろう。

 見るからに毒々しいその爪は、戦闘の最中に相手を引っ掻くなりなんなりして、毒を使おうとしたのだろうと予想出来た。


(何だったか……日本にいる時に見た漫画で、液体状の毒に手を浸したり、あるいは毒を混ぜて作った砂を手で突くとか、そんな感じの奴があったような、なかったような?)


 レッドキャップである以上、レイが想像――というか日本で見たゲームや漫画、アニメで登場――したような方法で爪を毒に染めたという訳ではないだろう。

 普通のレッドキャップからアサシンとなった時、種族的な特徴で爪がこのようなものになったのだろうと、そうレイは考える。

 実際のところは分からない。

 もしかしたら レイが想像したように努力した結果として爪が毒に染まったという可能性も否定はできないのだから。

 ただ……ゴブリンの系列であるレッドキャップがそのようなことを出来るとは、レイには到底思えなかった。

 これは自分の偏見なのかもしれないと、そうレイも思わないではなかったが。

 ともあれ、何も素材は入手出来ないだろうと思っていたところで、こうして魔石以外に爪を入手出来たのは大きな意味があったのは間違いない。

 そう考えると、やはりここはレイにとって幸運だったのは間違いなかった。

 もっとも、この爪を一体どういう風に使えばいいのか、レイには分からなかったが。

 いっそ、敵に向けて投擲するといった使い方がいいのか、もしくは武器や防具に仕込んで、隠し武器的に使えばいいのか。

 その辺りはレイにも思いつかなかったが、もし装備に仕込むとしても自分で使うようなことはないだろうなと、そう思っておく。

 何しろレイの装備品はどれも一級品……あるいはそれ以上の代物だ。

 それに加えるとすれば、例え毒関係の何かであっても、それならレッドキャップではなくもっと別の……高ランクモンスターの素材を使った方がいい。

 幸いなことに、レイのミスティリングの中には多くの素材が収納されている。

 その中には高ランクモンスターの毒関係の素材があってもおかしくはないのだから。

 であれば、例えダンジョンに二十一階に棲息するモンスターであっても、ゴブリン系であるレッドキャップ、その希少種や上位種の素材を使うのはどうかと思わないでもない。

 そんな訳で、レイはアサシンの爪についてはあっさりとミスティリングに収納する。

 決して自分に傷がつかないように注意しながら。

 レイの身体はゼパイル一門の技術の粋を込めて作られた代物だ。

 アサシンの爪にある毒程度でどうにかなるとは、レイも思っていない。

 だからといって、レイとしてもわざわざ意味もなく毒の爪で自分の身体を傷つけようとは思わないので、それはある意味で当然のことだったのだろう。

【セト】

『水球 Lv.九』『ファイアブレス Lv.七』『ウィンドアロー Lv.八』『王の威圧 Lv.五』『毒の爪 Lv.九』『サイズ変更 Lv.四』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.八』『光学迷彩 Lv.九』『衝撃の魔眼 Lv.七』『パワークラッシュ Lv.八』『嗅覚上昇 Lv.八』『バブルブレス Lv.五』『クリスタルブレス Lv.五』『アースアロー Lv.八』『パワーアタック Lv.四』『魔法反射 Lv.三』『アシッドブレス Lv.九』『翼刃 Lv.七』『地中潜行 Lv.六』『サンダーブレス Lv.八』『霧 Lv.四』new『霧の爪牙 Lv.二』『アイスブレス Lv.四』『空間操作 Lv.二』『ビームブレス Lv.四』『植物生成 Lv.三』『石化ブレスLv.三』『ダッシュLv.一』『蛇の尾Lv.二』『超音波Lv.二』



霧:セトを中心に霧を自由に生み出すことが出来る。霧の濃さはセトが自由に決められるが、霧が濃くなればそれだけ消費する魔力も増す。霧は幾ら濃くしてもセトは問題なく行動出来る。レベル一では半径三百m、レベル二では半径六百m、レベル三では半径九百m、レベル四では半径千二百m。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。