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レジェンド  作者: 神無月 紅
迷宮都市ガンダルシア

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3881/4082

3881話

「うわぁ……凄いな、これ。分かってはいたけど」


 セトの放つアイスアローによって、周辺……より正確にはその射線軸上にいたモンスター、草の四足獣はその全てが死体となり、レイの背丈よりも高い無数の草もその多くが千切れてしまっていた。

 レイにしてみれば、凄いとしか言いようがない。

 勿論、レイもまた同じようなことは出来る。

 魔法もそうだし、デスサイズの持つスキルもそうだ。

 それは間違いないのだが、それでもやはりこうしてレイの視線の先を見ると、思わずといった様子でそんな声が出てしまう。

 とはいえ、その言葉はセトを責めている訳ではない。

 セトもそれが分かっているので、寧ろ自慢げに喉を鳴らす。


「グルゥ!」


 レイはそんなセトの様子に笑みを浮かべ撫でてやる。

 セトもレイに撫でられるのは嬉しいらしく、気持ち良さそうに目を細めていた。

 そのまま数分、そろそろいいかと判断したレイは、セトを撫でるのを止める。

 少しだけ残念そうにしていたセトだったが、それでも今自分達がいるのはダンジョンの中だというのを思い出したのか、それ以上は撫でてと主張はしない。


「よし、障壁はもういいぞ」


 そんなセトをその場に残し、レイはゴーレムに指示を出す。

 障壁が消えると、ふよふよと浮いた球形のゴーレムがレイの側までやってくる。


「助かった。ありがとな。また暫く休んでいてくれ。……いや、ちょっと違うのか?」


 そう言いつつ、レイはゴーレムをミスティリングに収納する。

 ミスティリングの中では時間が停まっている以上、ゴーレムにしてみれば次に出て来た時はまた戦いの中だということになる。

 つまり、ゴーレムにとっては常に戦いの連続ということになる。

 幸いだったのは、ゴーレムには基本的に自我の類がないことだろう。

 もしゴーレムに自我があった場合、自分の扱いに不満を抱いてもおかしくはないのだから。


(ゴーレム対人間……AIと人間が戦うとか、AIが過去にロボットを送ってレジスタンスをやってる人物の母親や、子供時代のその人物を殺そうとするとか、そういうのがあったな。そう言えばあれってどこまで見たんだっけ? ……まぁ、今となってはもう意味はないけど)


 地球にいた時に見た映画のことを思い出すレイだったが、このエルジィンにおいてはどうしようもないのは事実。

 気楽に日本に帰れるのならともかく、そのようなことは出来ない。

 ……いや、ゼパイルがレイの魂をこの世界に呼んだ以上、絶対に不可能であるとは限らないのだろうが、それは逆に言えばゼパイルであっても魂になったレイでなければ接触出来なかったということを意味している。


「さて、後は……まず、苺だな」


 レイとセトの攻撃によって全滅した草の四足獣の解体についても早いところやるべきだと思うレイだったが、苺を採取するのを優先する。

 先程の戦い……特にセトのアイスアローは、かなり大きな音を立てている。

 そうである以上、先程の音を聞いて他のモンスターが……あるいは冒険者が襲ってきてもおかしくはない。

 そうなったらなったで別に構わないと思うレイだったが、その時に苺が見つかったら、それを欲する者がいる可能性は否定出来ない。

 だからこそ、まずは苺を先に採取してしまおうと考える。


(とはいえ……この青い苺、本当にどういう感じなんだろうな? 熟していないのは、この半端に白い奴か?)


 普通の赤い苺であっても、まだ熟していないのは白い。

 であれば、この青い苺であっても同じなのではないかとレイには思える。

 その熟していない苺くらいはここに残していってもいいかと、そう判断する。

 一階や二階の果実と同じく、本当にこの青い苺もまたなるのか分からない。

 もしかしたらそうならない可能性もある以上熟していない苺を採る必要はないだろうと。


(そもそもの話、熟していない苺を採っても、何に使うかって話だし。……いやまぁ、沖縄とかだと熟していないパパイヤを野菜として使ってるとかTVで見たことがあったし、この苺もそういう風に野菜代わりに使えるかもしれないけど……使えない可能性の方が高いし)


 そんな訳で熟していない苺はそのままに、青く熟した苺だけを全て採取し……それが終わると、次に草の四足獣の解体に入る。


「昨日は戦えなかったし、そう考えるとここで戦うことが出来たのは幸運だったかもしれないが……もしかして、この群れは昨日ライグールと戦っていた群れだったりするのか? ダンジョンの広さを考えると、多分違うとは思うけど」

「グルルゥ?」


 レイの言葉に、周囲を警戒していたセトが、そうなの? と喉を鳴らす。

 レイはそんなセトに、頷きを返す。


「このダンジョンの広さを考えると、この草の四足獣の群れは結構な数がいてもおかしくはない。……身体が草で出来ているから、見つけるのも簡単じゃないしな」


 そう言いつつ、レイは黒連によって生み出された滞空する斬撃に触れ、切断されて死んだ草の四足獣に近付く。

 その手にしているのは、ミスティリングから取り出したドワイトナイフだ。

 ドワイトナイフに魔力を流し、草の四足獣の死体に突き刺す。

 すると周辺が眩い光に包まれ……それが消えた時、そこに残っていたのは魔石と何らかの草だった。


「この草は……ドワイトナイフで出て来た以上、素材なのは間違いないか。薬草とかそういう系統の植物か? まぁ、ギルドで売ればどういう素材なのかは教えてくれるだろう」


 草の四足獣の数はかなり多い。

 そう考えると、希少な素材という訳ではないのだろうと予想出来る。

 それでも十三階に出てくるモンスターの素材である以上、相応の値段で売れるのは間違いなかったが。

 ガンダルシアには多くの冒険者がいるが、十三階まで来られる者となると、そこまで多くはないのだから。


「さて、余計な邪魔が入らないうちに、どんどん解体していくぞ。……それが終わったら、いよいよ魔石を使うから待っててくれ」

「グルゥ!」


 レイの言葉に、セトは分かったと喉を鳴らす。

 そんなセトの様子に笑みを浮かべつつ、レイは解体を進める。

 頭部が残っていても、結局のところ出てくるのは魔石と何らかの薬草と思しき植物だけなのが、レイにとっては残念だった。


(というか、牙とかも草で出来てる訳だが……ライグールは一体どうやって左手を噛み千切られたんだ? もしくは、生きてる時は草の牙でも鋭くて手首を噛み千切れるだけの鋭さと頑丈さがあったりするのか?)


 普通に考えれば有り得ないことではあるが、ここは剣と魔法のファンタジー世界である以上、普通では考えられないようなことがあってもおかしくはない。

 寧ろそういう意味では、納得すら出来ることではあった。

 もっとも、もう倒してしまった相手である以上、草の四足獣の牙がどうなっていてもレイにはそこまで気にするようなことではないのだが。


(あ、いや。でも草の四足獣がこの十三階の中で数の多いモンスターだとすると、実はまた出てくる可能性もあるのか。魔石は二個どころか十個以上入手したし、もういらないんだけどな)


 レイにしてみれば、未知のモンスターという点では草の四足獣に今日はあったものの、こうして実際に倒してしまった今となっては、もう魔石もある以上、無理に戦う必要はない。

 あるいは、草の四足獣の素材として出てくる植物が何か貴重な素材であったり、あるいは何かもっと別の……倒すだけの理由があれば話は別だったが。

 しかし今のところ、草の四足獣と戦いたいと思う理由はない。


「ともあれ、魔石だな。……セト、まずはセトから使ってみるってことでいいよな?」


 二個だけ魔石を残し、それ以外は全て素材の植物ともどもミスティリングに収納すると、レイはセトにそう声を掛ける。


「グルゥ!」


 レイの言葉にセトは元気よく喉を鳴らす。

 セトにしてみれば、草の四足獣の魔石は多数あるので、これまであったように自分が使うかデスサイズに使うかといったことを考えなくてもいいので、楽だったのだろう。

 レイはそんなセトの様子に笑みを浮かべ、ついでに周辺に誰もいないのかをセトに確認して貰った後、真剣な表情になって魔石をセトに向かって放り投げる。

 セトはそれをクチバシで咥え、飲み込み……


【セトは『植物生成 Lv.一』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。


「……植物生成? いやまぁ、納得出来ない訳でもないけど……どういうスキルだ?」


 草の四足獣の魔石を使ったのだから、草……植物関係のスキルを習得するのはレイにも納得出来た。

 出来たのだが、同時にそのスキルがどのような効果を発揮するのか分からない。

 いや、植物生成という名称である以上は、その名の通り植物を作ることが出来るのは予想出来るのだが、それが具体的にどのように使うのかが分からない。


「セト、使ってみてくれるか?」

「グルルルゥ!」


 レイの言葉に、セトは早速スキルを発動する。

 すると地面から直径一cm程の太さの蔓が伸びる。


「なるほど、これを見る限りだと植物生成ってのも納得出来るな。それで、セト。これは動かしたり出来るのか?」

「グルゥ? ……グルルルゥ」


 レイの言葉に、セトは伸びてきた蔦を動かす。

 すると、自由自在にとはいかないまでも、それなりに動かすことが可能なのが判明した。


「となると……この蔦を使って敵を縛り付けるとか、そんな感じか。まだレベル一でこれなら、レベルが上がるともっと強力になっていきそうだな」

「グルゥ」


 嬉しそうに喉を鳴らすセト。

 そんなセトの様子に、レイも笑みを浮かべる。

 このスキルは相応に使い勝手がいいと、そう判断したのだ。

 尚、セトによって生み出された蔦は数分で枯れてしまった。


「さて、じゃあ次はデスサイズだな。セトのスキルが悪くない感じだったことを思うと、デスサイズもいいスキルを入手出来るといいんだが」

「グルルルゥ!」


 レイの言葉に、頑張ってと喉を鳴らすセト。

 頑張ってどうにかなるようなことではないのだが、それでもセトがこうして言ってくれるのは、レイにとっても嬉しい。

 レイは応援してくれるセトを一撫でするとミスティリングからデスサイズを取り出し、少し離れてから魔石を放り投げ……次の瞬間、デスサイズを振るって魔石を切断する。


【デスサイズは『隠密 Lv.二』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 それを聞いたレイは、少しだけ意外そうな表情を浮かべる。

 まさか、草の四足獣の魔石で隠密のレベルが上がるとは思っていなかったのだ。


(ん? でも、考えてみればそうでもないか? 草の四足獣はその身体から、生えている草に紛れ込むのは得意だろうし)


 改めて考えてみると、納得出来る点も決して少なくはない。

 そう判断すると、レイは実際に試してみる。


「隠密」


 デスサイズを手にスキルを発動すると、隠密の効果によってデスサイズが見えなくなる。

 それでいながら、あくまでもデスサイズは透明になりながらもそこにあるのは間違いなく、しっかりと握っている感触がそこにはあった


「さて、レベル一の時は一振りだったが、レベル二でどうなった?」


 呟きつつ、デスサイズを振るってみるレイ。

 一度、二度……そして姿を現すデスサイズ。

 どうやら、レベル二になったことで二度デスサイズを振るう間は透明になっているらしい。


「となると、レベル三では三度、レベル四では四度……といったところか?」


 レベル五になればスキルは別物のように強化されるので、レベル五になったら隠密が具体的にどのように強化されるのかまではレイにも分からない。

 分からないが、取りあえずレベル四になるまではどのように強化されるのかは予想出来たので、よしとしておく。

 実際、戦闘の中で敵がどのような武器を持っているのかが分からないのは、戦う方にしてみれば非常に厄介なことだ。

 レイは大鎌のデスサイズを使うというのが多くの者に知られているものの……だからこそ、隠密を使ったことによってデスサイズが見えなければ相手も意表を突かれるだろう。

 大鎌というのは非常にマイナーな武器で、だからこそ見たことがない相手にしてみれば、デスサイズが見えないことによってレイがデスサイズを持っていると予想しても、対処するのは難しい。

 ましてや、レイの戦闘スタイルはデスサイズと黄昏の槍を使った二槍流だ。

 それだけに、デスサイズが見えなければ黄昏の槍だけを武器にしていると考える可能性も十分にあった。

 そういう意味では、やはり隠密というのは非常に有用なスキルなのは間違いないのだろう。

 そう考え、レイは笑みを浮かべて自分の握っているデスサイズに視線を向けるのだった。

【セト】

『水球 Lv.六』『ファイアブレス Lv.七』『ウィンドアロー Lv.六』『王の威圧 Lv.五』『毒の爪 Lv.九』『サイズ変更 Lv.四』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.八』『光学迷彩 Lv.九』『衝撃の魔眼 Lv.六』『パワークラッシュ Lv.八』『嗅覚上昇 Lv.七』『バブルブレス Lv.四』『クリスタルブレス Lv.三』『アースアロー Lv.六』『パワーアタック Lv.二』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.八』『翼刃 Lv.六』『地中潜行 Lv.四』『サンダーブレス Lv.八』『霧 Lv.三』『霧の爪牙 Lv.二』『アイスブレス Lv.三』『空間操作 Lv.一』『ビームブレス Lv.二』『植物生成 Lv.一』new



【デスサイズ】

『腐食 Lv.九』『飛斬 Lv.七』『マジックシールド Lv.四』『パワースラッシュ Lv.八』『風の手 Lv.六』『地形操作 Lv.六』『ペインバースト Lv.六』『ペネトレイト Lv.七』『多連斬 Lv.六』『氷雪斬 Lv.八』『飛針 Lv.六』『地中転移斬 Lv.四』『ドラゴンスレイヤー Lv.二』『幻影斬 Lv.五』『黒連 Lv.五』『雷鳴斬 Lv.三』『氷鞭 Lv.三』『火炎斬 Lv.二』『隠密 Lv.二』new



植物生成:数秒で植物を生み出す。ただし、地面が土でなければ使えない。レベル一では一cm程の蔦を持つ植物を生み出し、それをある程度コントロール出来る。生み出された植物は数分で枯れる。



隠密:デスサイズが透明になる。レベル一ではデスサイズを一振りするまで。レベル二ではデスサイズを二振りするまで。

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植物生成……名前から考えて蔦だけだと植物とは言い難いでつまり、レベルが上がれば蔦の数や長さ、薬草や毒草などの種類も増えるはず
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