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レジェンド  作者: 神無月 紅
迷宮都市ガンダルシア

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3873/4077

3873話

 干し肉を食べている間にも大蛇は弱り続け、やがてその動きは完全に止まる。

 一応念の為に近くにあった石を軽く投げて見たものの、大蛇の頭部も胴体も動く様子はない。

 これを見て、完全に死んだと判断したレイは、味わっていた干し肉を飲み込み、こちらもまた手に持っていたコップの中に入っている果実水で口の中を潤すと、ドワイトナイフを手に大蛇の胴体に向かう。


「さて、一体どういうのが出るか」


 そう呟き、ドワイトナイフに魔力を流し……大蛇の胴体に突き刺す。

 周囲が眩い光に照らされ、やがてその光が消えた時、残っていたのはレイにとって一番重要な魔石、そして大量の鱗、保管ケースに入った何らかの内臓、肉の塊だった。


「骨辺りは残ってもよさそうなものだけど……まぁ、それはそれで構わないか」


 少しだけ残念に思いながらも、それでもどうしても欲しいという素材ではなかったので、すぐに使う魔石以外はミスティリングに収納する。

 次にレイの視線が向けられたのは、セトの側に転がっている大蛇の頭部だ。

 既に完全に死体となっているその頭部に近付き、胴体と同じくドワイトナイフに魔力を流し、突き刺す。

 胴体の時と同じように眩い光が周囲を照らし……そして光が消えると、そこには大蛇の頭蓋骨と保管ケースに入った眼球が残っていた。


「これはちょっと意外だったな。てっきり牙辺りが残ると思ってたんだが。……眼球は、まぁ、それっぽい素材だから納得出来るけど」


 呟き、頭蓋骨と眼球の入った保管ケースをミスティリングに収納する。


(胴体の方の内臓は、毒腺とかそれっぽいものじゃなかった。となると、やっぱりこの大蛇は毒を使わないタイプだったのか? ……嬉しいような、悲しいような、微妙な気分だな)


 もしこの大蛇が毒を使うのなら、セトの毒の爪がレベル十に達していた可能性がある。

 しかし、残念ながらこの大蛇はそのようなタイプではなかったらしい。

 レイももしかしたらそうではないかと、日本にいた時の知識から予想はしていたのだが、その予想が見事に当たった形だ。


「さて、魔石だな。……セト、この魔石はセトが使ってくれ」

「グルゥ」


 レイの言葉に、セトは分かったと喉を鳴らす。

 そんなセトに向かい、魔石を放り投げるレイ。

 セトはそれをクチバシで咥えて飲み込み……


【セトは『アシッドブレス Lv.八』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。

 それはレイの予想通りだったので、特に驚くようなことはない。

 ……もっとも、もし毒の爪のレベルが上がったらといった心配もそこにはあったのだが。


「グルゥ!」


 嬉しそうに喉を鳴らすセト。

 セトにしてみれば、アシッドブレスのレベルアップは十分に喜ぶべきことなのだろう。

 レイはそんなセトを撫でる。


「よくやったな、セト。さすがだ。……じゃあ、アシッドブレスの効果を確認してみるか。もっとも、標的に丁度いいのはないけど」


 元々レベル七の時点でアシッドブレスはかなり強力なスキルだった。

 それがレベル八になってしまったと考えると、一体どれだけ強力になっているのか分からない。

 ここで一体どのようなスキルなのかを確認しても、恐らく……いや、ほぼ間違いなく、そのスキルの威力を完全に確認することは出来ないだろう。

 それはレイも分かっていたが、だからといってレベルアップしたスキルを試さないという選択肢はレイにはない。

 威力の上限を確認することは出来ないかもしれない。

 だが、実際にスキルを使ってみた時、そのスキルの特徴や欠点の類を見つけることが出来るかもしれないのだから。

 だからこそ、レイとしてはここでスキルを使うのを躊躇うつもりはなかった。


「グルゥ!」


 そしてセトもまた、レイの言葉にやる気満々といった様子で喉を鳴らす。

 これでセトがスキルを使うのを嫌がっていたのならともかく、こうして実際にスキルを使っても構わないと、そう思っているのだ。

 そうである以上、誰もそれを止めることはない。

 セトは人がいないことを確認し、クチバシを開く。


「グルルルルルルルゥ!」


 そして放たれたアシッドブレスは、セトの前方に向かって扇状に放たれる。

 それによって、レイとセトの前にあった草原は瞬く間に溶けていき……


「ギャピッ……」


 セトの放ったアシッドブレスの効果を確認していたレイだったが、不意にそんな声が聞こえてくる。


「え?」

「グルゥ?」


 レイの口から驚きの声が漏れ、アシッドブレスを放ち終わったセトも同様に驚きの鳴き声を上げる。

 何が起きたのかは、レイにも理解出来る。

 つまり、今のセトのアシッドブレスによって、ダメージを受けた……いや、死んだモンスターがいたのだろう。

 だが、声が聞こえてきたのはそう遠くない場所だ。

 そのような場所である以上、本来ならセトがそのモンスターの存在を察知していてもおかしくはない。

 つまり、今の悲鳴……もしくは断末魔を上げたモンスターは、レイは勿論、セトの五感や第六感、あるいは魔力を感じる能力があっても、察知することが出来なかったということを意味している。

 とはいえ、セトに見つからなくても、先程の断末魔を思えば、死んだのは間違いない。


「グルルゥ?」


 どうするの? とセトが喉を鳴らす。

 レイはそんなセトに向かい、少し戸惑った様子で口を開く。


「まぁ……あの声からして、モンスターなのは間違いない。冒険者じゃなかったことを喜ぶとしよう。後はどういうモンスターなのか、ちょっと見に行くか。どこまで身体が残ってるのかは分からないけど」


 レベルの上がったアシッドブレスの威力はすさまじく、扇状に何もない……地面が剥き出しの空間が広がっている。

 先程まで、周囲には大きな……それこそレイは勿論、セトですら覆い隠せる程の草が多数生えていた。

 しかし、今そこには何もない。

 地面が剥き出しになっているだけだ。

 また、スキルの便利さからか、アシッドブレスによって溶けた場所は既に足を踏み入れられるようになっている。

 これがスキルではない、本当の意味での強酸の類であれば、周辺を溶かした後ですぐにそこに足を踏み入れるといったことは出来ない。

 そういう意味で、スキルというのは便利だな。

 そう思いつつ、レイは先程の声が聞こえてきた方に向かって進む。

 セトもまた、そんなレイの後を追う。

 ……そうしながらも、セトが周囲の様子を警戒しているのは、やはり先程の断末魔を発したモンスターの存在に気が付かなかったからだろう。

 セトは自分の能力を十分に理解している。

 だからこそ、先程の断末魔を上げたモンスターの存在に気が付けなかったことに驚きを覚えていた。

 そして、先程のアシッドブレスの効果範囲外には、同じようなモンスターが他にもいるのではないかと、そう思うのはおかしなことではない。

 ただし、先程も見つけることが出来なかった以上、もしアシッドブレスの効果範囲外にそのようなモンスターがいても、セトが気が付くことが出来るかどうかは話が別だったが。


(というか、十三階でそれなりに強力なモンスターがいるのは分かる。分かるけど、それでも所詮十三階だろう? 今は久遠の牙が十九階だったか。このダンジョンの最下層が何階なのかは分からないが、それでも久遠の牙の探索しているところから六階も上なのに、セトに見つからないモンスターがいるのか?)


 レイにとって、それは少し納得出来ないことだった。

 もっとも、ダンジョンの中に棲息するモンスターだということを考えれば、中にはその階層にいるモンスター以上の強さを持つ強いモンスターがいてもおかしくはない。


「あ、これが……うわ……」


 溶けた地面を歩いていたレイは、半ば……いや、八割くらいは溶けてしまっている死体を見つける。

 どんな偶然なのか、無事だった二割はそのモンスターの心臓辺り……つまり、魔石のある場所だ。

 魔石がある部位だったから、何とか無事だったのか。

 それとも単なる偶然なのか。

 その辺りはレイにも分からないが、とにかく魔石が無事だったのはレイにとって嬉しいことなのは間違いない。


「大きさてきには……少し大きめのウサギといった感じか?」


 レイにとってウサギのモンスターとなると、ギルムの晩秋から初冬に掛けての名物である、ガメリオンを思い出す。

 巨体を持ち、ウサギとは到底思えない程の攻撃性を持つモンスター。

 ……とはいえ、レイが口にしたように視線の先にあるモンスターの死体の大きさは、ガメリオンとは比べものにならない。

 実は巨体だが、アシッドブレスで心臓のある場所以外は溶けてしまった……そう言われても、レイには納得も出来たが。


「セト、どうやらこのモンスターがさっきの断末魔の主だったらしい。見た感じ、かなり小さい。だとすると、そこまで強いモンスターじゃないのかもしれないな。……まぁ、身体が小さいからといって、高ランクモンスターではないとは言い切れないけど」


 レイの言葉にセトは微妙な気持ちになる。

 自分が見つけられなかったからというのもあるが、やはりそんな中で一番大きな理由は身体が小さいから云々といった内容だった。

 セトは体長四m程もある。

 とてもではないが、その身体は小さいとは言えない。

 セトの言い分からすると、自分の身体が大きいのは駄目なのか。

 そう思ってしまったのだろう。


「グルルゥ」

「え? あー……別にセトの身体の大きさについて責めた訳じゃないぞ? そういう風なモンスターもいるって言いたかっただけだ。それに実際、魔の森で戦ったクリスタルドラゴンや、他の場所でも戦った強力なモンスターを思い出せ。どのモンスターも基本的には大きかっただろう?」


 そう言われれば……と、セトも少しだけ気分を持ち直す。

 そんなセトの様子を見つつ、レイは言葉を続ける。


「俺が言いたかったのは、あくまでもそういう事例もあるってことだ。セトがそうだとは言ってないだろ。……それより、この魔石だけど……」

「グルルルゥ!」


 レイに最後まで言わせず、セトはレイが使ってもいいと鳴き声を上げる。


「え? いいのか?」

「グルゥ!」


 レイとしては、今まで何度も言ってきたように、セトが強化されるべきだと思っていた。

 だからこそ、ここはやはりセトがこの魔石を使った方がいいのではないかと思っていたのだが。

 ただ、セトにしてみれば連続で魔石を使っているので、今度はレイが……より正確にはデスサイズが使って欲しいという思いがそこにはあった。

 セトの円らな瞳で見つめられると、レイも断れない。

 これがどうしてもレイに受け入れられないようなことであればともかく、今回の一件はレイにとってはメリットの方が多い。

 デメリットとしては……半ば溶解しかけているという見た目のモンスターの魔石を使わないといけないのが、少し気持ち悪いといったところか。

 もっとも、デスサイズの場合はセトのように魔石を飲み込むのではなく、あくまでもデスサイズで切断するだけだ。

 そうである以上、半ば溶けている死体を気にする必要はない。


(というか、それ以前にドワイトナイフを使えばその辺はどうとでもなるしな。……この状況からすると、魔石以外に何らかの素材が出るとは思えないけど)


 レイはミスティリングから取りだしたドワイトナイフに魔力を流し、半ば溶けている死体に突き刺す。

 次の瞬間、周囲が眩く輝き……そして光が消えた時、そこに残っていたのは魔石だけだった。

 溶けていた死体も、そして魔石以外の素材もそこには存在しない。


「まぁ……だろうな。じゃあ、セト。この魔石は俺が使わせて貰うけど、本当にいいんだよな?」

「グルゥ!」


 レイの言葉に、セトはいいよと喉を鳴らす。

 そんなセトの言葉に笑みを浮かべたレイは、ドワイトナイフを入れ替えるようにデスサイズを取り出し、魔石を空中に放り投げ……デスサイズを振るい、切断する。


【デスサイズは『隠密 Lv.一』のスキルを習得した】


 脳裏に響くアナウンスメッセージ。


「おう? ……いやまぁ、納得は出来るけど」


 セトに見つからない程の隠密能力があったのだから、こうして隠密のスキルを習得出来たのだろうとはレイも納得出来る。

 出来るのだが、同時にデスサイズに隠密の能力? と疑問に思う。

 これが例えば、セトが隠密のスキルを習得したのなら納得も出来る。

 ……同時に、セトがあの魔石を使えば隠密ではなく光学迷彩がレベルアップしていたのでは? とも思ったが。

 ともあれ、デスサイズで習得した隠密のスキルを試してみることにする。


「隠密」


 スキルを発動すると、デスサイズの姿が消え……一振りしたところで、デスサイズは再び目に見えるようになるのだった。

【セト】

『水球 Lv.六』『ファイアブレス Lv.七』『ウィンドアロー Lv.六』『王の威圧 Lv.五』『毒の爪 Lv.九』『サイズ変更 Lv.四』『トルネード Lv.四』『アイスアロー Lv.八』『光学迷彩 Lv.九』『衝撃の魔眼 Lv.六』『パワークラッシュ Lv.八』『嗅覚上昇 Lv.七』『バブルブレス Lv.四』『クリスタルブレス Lv.三』『アースアロー Lv.六』『パワーアタック Lv.二』『魔法反射 Lv.一』『アシッドブレス Lv.八』new『翼刃 Lv.六』『地中潜行 Lv.四』『サンダーブレス Lv.八』『霧 Lv.三』『霧の爪牙 Lv.二』『アイスブレス Lv.三』『空間操作 Lv.一』『ビームブレス Lv.二』



【デスサイズ】

『腐食 Lv.九』『飛斬 Lv.七』『マジックシールド Lv.四』『パワースラッシュ Lv.八』『風の手 Lv.六』『地形操作 Lv.六』『ペインバースト Lv.六』『ペネトレイト Lv.七』『多連斬 Lv.六』『氷雪斬 Lv.八』『飛針 Lv.六』『地中転移斬 Lv.四』『ドラゴンスレイヤー Lv.二』『幻影斬 Lv.五』『黒連 Lv.五』『雷鳴斬 Lv.三』『氷鞭 Lv.三』『火炎斬 Lv.二』『隠密 Lv.一』new



アシッドブレス:酸性の液体のブレス。レベル一では触れた植物が半ば溶ける。レベル二では岩もそれなりに溶ける。レベル三では岩も本格的に溶ける。レベル四では大人が三、四人手を繋いでようやく囲えるような巨木を溶かすことが出来る。レベル五では小さめの建物を外からでも溶かすことが出来る。レベル六では普通の家程度なら溶かすことが出来る。レベル七では大きな屋敷程度は溶かすことが出来る。レベル八では小さめの要塞を溶かすことが出来る。



隠密:デスサイズが透明になる。レベル一ではデスサイズを一振りするまで。

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