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レジェンド  作者: 神無月 紅
迷宮都市ガンダルシア

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3872/4075

3872話

これでチアーズプログラムの1週間の投稿は終わり……のつもりだったのですが、予想していた以上の人が読んでいてくれたこと、それと何人かからこのままこちらで登校して欲しいという要望があったので、もう暫くこちらで投稿を続けます。

PDFで保存とか出来るのって、やっぱり大きいんですね。

チアーズプログラムについても気になりますし。

ただ、やっぱり以前投稿をカクヨムに移した時にも思ったのですが、投稿がかなり面倒臭いままなのがちょっと気になるところですが。


カクヨムの方にて、現在800話程先行公開していますので、早く続きを読みたい方は以下のURLからどうぞ。

https://kakuyomu.jp/works/16817139555994570519


 セトの視線の先にいたのは、空を飛ぶ蛇。

 いや、その姿は大蛇と評しても決して間違ってはいないだろう。

 そんな蛇が。空を飛びながらレイに……正確には空を飛ぶセトに向かって進んでいた。


「どうやって飛んでるんだ?」


 セトの背中の上で、レイは空を泳ぐといった表現が相応しい様子で飛んできている大蛇の姿を見て、そう呟く。

 レイが思わずといった様子でそう呟いたのは、その大蛇の空を飛んでいる方法が分からなかったからだ。

 例えばこれで、大蛇の身体に翼や羽根があれば、空を飛んでいても納得出来ただろう。

 ……もっとも、空を飛ぶというのは非常に難しいことで、実際レイが日本にいた時にTVか何かで見た、人間に翼があって空を飛ぶ場合、どのくらいの大きさが必要なのかを検証した場合、その翼の大きさは片翼十五m以上は必要だということだった。

 つまり、翼を広げれば三十m以上の大きさを持つ翼が必要なのだ。

 勿論、人によって体重や身長も違うので、この十五mというのは画一的な答えではない。

 答えではないが、それでもそのくらいの大きさの翼が必要である以上、大蛇と称するのに相応しい蛇が普通の鳥の翼と同じくらいの翼があっても、それで空を飛べる筈はない。

 ……もっとも、この世界は日本ではなく、剣と魔法のファンタジー世界だ。

 物理法則では不可能なことであっても、それをどうにか出来る手段は色々とある。

 そういう意味では、大蛇が空を泳ぐように移動していてもおかしくはないのだろう。

 ないのだろうが……


(それでも、せめて翼とか羽根とかはあって欲しいけどな)


 そう思いつつ、レイは左手で持つ黄昏の槍を投擲する。

 空気を斬り裂きながら飛ぶ黄昏の槍。

 空を泳ぐ大蛇は、そんな黄昏の槍の存在に気が付いたのだろう。その長い身体をくねらせ……黄昏の槍を回避する。

 もっと近い場所からの投擲であれば、空泳ぐ大蛇も回避出来なかったかもしれない。

 そういう意味では、レイの判断ミスではあるのだろう。

 もっとも、レイにしてみれば今の一撃は命中すれば最善だったものの、命中しなければしないで、牽制としての一撃だという風に思っていた。

 だからこそ、攻撃を回避されても特に気にすることはない。

 大蛇がどのようにして攻撃を回避するのか、その方法が分かっただけで十分だったのだから。

 また、投擲したのは黄昏の槍で、それはレイが望めばすぐにでも手元に戻る。

 だからこそ、何かがあっても問題はないと判断していたのだ。


「セト」

「グルルルルゥ!」


 レイの言葉に、セトは即座に反応する。

 今の黄昏の槍を使った一連の行動を見て、ここでどのように行動するべきなのか、十分に理解していたのだろう。

 そして先程レベルアップしたばかりのアースアローを発動し、周囲に八十本の土の矢を生み出し……一斉に放たれる。


「キシャアアアアア!」


 大蛇は、自分に向かってくる大量の土の矢を見て、初めて鳴き声を上げる。

 もっとも、黄昏の槍を使ったやり取りをしている間も、お互いに空を移動して近付いてはいた。

 その為、大蛇の鳴き声が聞こえるようになったのかもしれないが。

 ともあれ、大蛇は先程の黄昏の槍の一撃の時のように、無数の土の矢を回避するのは不可能と判断したのだろう。

 その口を開け……次の瞬間、何かを放つ。

 それが何なのかは、土の矢が消えた……いや、溶けたのを見て、レイにも理解出来た。


(アシッドブレス)


 土の矢を一瞬にして溶かしたのだから、そのアシッドブレスの威力が強力なのは間違いない。


(そして、あの大蛇の魔石をセトが使えば、アシッドブレスのレベルが上がるのか)


 そう予想しつつ、レイは左手にデスサイズを持ち替え……


「飛斬!」


 スキルを発動し、飛ぶ斬撃を放つ。

 それを見た大蛇は再びその身体をくねらせ、自分に迫ってくる斬撃を回避し……

 パチンッと、指を鳴らす音が響くと同時に、大蛇の身体のある場所……飛斬を回避した場所にファイアボールが発動する。

 

「シャギャアアアアアアア!?」


 周囲に響き渡る、大蛇の悲鳴。

 本来なら。その鱗は非常に頑丈で、大抵の攻撃を防ぐことが出来る。

 だが、レイが無詠唱で発動したファイアボールは、その鱗を焼き焦がし、鱗の下にある肉をも焼くことに成功する。

 その結果が、大蛇の悲鳴だった。

 大蛇にしてみれば、攻撃を回避した先にいきなり魔法が発動するとは思わなかったのだろう。

 悲鳴を上げつつ、地上に向かって落下……


「違う、あれは降下だ。セト!」

「グルルルゥ!」


 レイの言葉に即座にセトが反応し、翼を羽ばたかせながら地上に向かって……より正確には大蛇を追って降下していく。

 そんなセトの背中で、レイは再び右手にデスサイズを持ち、左手には手元に戻した黄昏の槍を握り……


「はぁっ!」


 鋭い呼気と共に、黄昏の槍を投擲する。

 真っ直ぐ大蛇に向かって飛ぶ黄昏の槍。

 炎に包まれた大蛇は、そんな黄昏の槍に気が付く様子もなく……次の瞬間、大蛇の身体が黄昏の槍に突き刺される、それでも黄昏の槍の速度が緩むようなことはなく、大蛇が地上に向かって降下する速度が増す。

 いや、最初は降下だったものの、その身体を黄昏の槍に貫かれてしまった今となっては、レイが投擲した黄昏の槍の速度に引っ張られるように地上に向かって降下していく。

 セトはそんな大蛇に向かい、とどめの一撃とばかりにクチバシを開き……


「グルルルルゥ!」


 ビームブレスを放つ。

 その背中に乗っていたレイは、何故セトがビームブレスを使ったのかは分からなかった。

 分からなかったが、何らかの理由があってビームブレスを選んだのは間違いない。

 放たれたビームブレスは、大蛇の身体を貫き……そのビームブレスが命中したのを見たレイは頭の片隅でなる程と納得しながらセトの背から飛び降りると、スレイプニルの靴を発動し、空中を蹴って地上に向かい突っ込む。

 先程のファイアボールによって鱗が燃えた……つまり、大蛇の身体を守る鎧がなくなったからからこそ、そこにビームブレスを叩き込んだのだろうと。

 黄昏の槍に身体を貫かれ、地面に串刺しにされた大蛇。

 レイはそんな大蛇に向かって一直線に進み……

 斬、と。

 振るわれたデスサイズにより、大蛇は首を切断されるのだった。






「さて、上手い具合に首は切断出来た訳だけど……」


 レイの視線は切断された大蛇の頭部に向けられている……のではなく、頭部を切断された胴体に向けられていた。

 頭部を失ったというのに、胴体は未だに動き回っているのだ。

 それはつまり、この大蛇の生命力がそれ程強いことを意味していた。


(まぁ、蛇なんだし、それくらいはおかしくないかもしれないけど)


 レイも日本にいる時は山のすぐ側にある家に住んでいた。

 当然ながら蛇を見る機会はそれなりにあり、レイの目の前で道路に出て来た蛇が車に頭部を轢かれたのを見たこともある。

 その時、頭部を車のタイヤで潰されたにも関わらず、胴体はまだ動いていたのだ。

 また、TVの料理番組か何かで、活け作りにされたのにまだ魚が生きているというのを見たこともある。

 前者はともかく、後者は料理人の腕があってこそのことなのだろうが。

 ともあれ、モンスターの存在しない日本でもそうなのだ。

 モンスターとなり、ましてや十三階というそれなりに深い階層に出てくる……しかも、空を泳ぐような大蛇であれば、頭部を失ったとしても胴体が動くというのはそんなにおかしなことではない。

 問題なのは……


「これ、今の状況でドワイトナイフを使えるのか?」


 そう、それが問題だった。

 基本的に、ドワイトナイフというのはモンスターの死体にしか使えない。

 だが、レイの視線の先にある大蛇の胴体は未だに動いているのだ。

 そうなると、ドワイトナイフを使えないのではないか。

 レイは視線の先に存在する大蛇の胴体を見ながら……ふと、気が付く。

 胴体が動いているのなら、頭部もまた実はまだ動けるのでは、と。

 そして頭部に視線を向けたレイが見たのは……


「グルゥ!」


 セトの前足によって、地面に押さえつけられている大蛇の頭部だった。


「えっと……その、ありがとうな、セト」


 セトの前足によって踏みつけられている大蛇の頭部だが、レイの予想通りまだ動いている。

 しかし、頭部だけというのも影響してるのか、それとも単純にセトの身体能力の方が高いからなのか、動く様子は全くない。

 また、セトは念の為なのか、それとも偶然なのかはレイには分からなかったが、頭部の真上の部分から大蛇の頭を押さえており、間違っても噛みつかれるといった心配はない。

 あの大蛇が毒を持っているのかどうか、レイには分からない。

 また、例え毒を持っていても、頭部を切断された状態で相手に噛みついたら毒の効果があるのかどうかもレイには分からない。


(あ、でももし毒があるのなら、この大蛇の魔石はアシッドブレスじゃなくて毒の爪のレベルが上がる可能性もあるのか? それはそれで……まぁ、色々と複雑だけど)


 現在、セトの毒の爪はレベル九だ。

 もし大蛇の魔石によって毒の爪のレベルが上がれば、レベル十となる。

 ……複雑なのは、セトが習得した毒の爪だが、実際に戦闘で使ったことは殆どないことだろう。

 レイやセトが戦うモンスターは数が多いものの、その戦いで倒したモンスターの肉というのも、大きな役目を持つ。

 また、肉を持たないモンスター……例えばトレントやゴーレムのような存在であっても、木材や石材といったようにして使う機会も多かった。

 そう考えれば、やはり毒の爪の使用は避けた方がいい。

 ……もっとも、それ以前にレイやセトなら毒を使って相手を弱まらせるといったことをしなくても、普通に倒せるのが大きいのだが。

 魔法にしろ、物理攻撃にしろ、スキルにしろ、レイもセトも非常に高い能力を持つ。

 わざわざ時間の掛かる毒の爪という攻撃手段を使わずとも、普通に力押しでどうとでもなるのだ。

 かといって、例えばボスモンスターのような、レイやセトであっても力押しで容易に勝てないような敵の場合、毒の爪を使うと素材に悪影響が出てしまうので、それは避けたい。

 他にも幾つか毒の爪を使わない理由はあるのだが、とにかく強力なスキルではあるが、使う機会が少ないのは間違いなかった。


(まぁ、毒の爪がレベル十になったら、それはそれか。それに……蛇の中でも、毒を持っているのは基本的に小さい蛇らしいし)


 もっとも、それはあくまでも地球にいる時に、TVか何かで得た知識でしかない。

 地球に巨大でも毒を持つ蛇がいてもおかしくはないし、そもそもここはエルジィンだ。

 また、レイが戦うのは動物としての蛇ではなく、モンスターとしての大蛇でもある。

 そのような一般常識が通用する筈もない。


「ともあれ、念の為に解体するのは動かなくなってからだな」


 色々と考えていたレイだったが、今もまだ大蛇の死体は胴体も頭部も動いている。

 それだけ高い生命力を持っているということなのだろうが、具体的にいつ動かなくなるのかは分からない。


(以前青色の蛇を倒したのもこの階層だったと思うが、あの時はそこまで高い生命力は持っていなかったよな? だとすれば、こうして長い時間動き回っているのはこの大蛇特有の強い生命力といった感じか)


 そう思いながら、レイは大蛇の胴体に視線を向ける。

 さすがに生命力も限界に近いのか、動いている胴体の動きも最初に比べると減ってきているように思える。

 だとすれば、そこまで長い時間待つ必要もないだろうと、レイはミスティリングの中から干し肉を取り出す。


「セト」


 呼び掛け、干し肉を放り投げる。

 セトは大蛇の頭を押さえつけたまま、器用にクチバシを開いて干し肉を咥えると、しっかりと味わう。


「グルルルゥ」


 嬉しそうに喉を鳴らすセト。

 レイもまた、そんなセトの様子を見つつ干し肉を味わう。

 この干し肉は、干し肉ではあるものの、保存性を重視したものではなく味を重視した干し肉だ。

 冒険者が食べるような干し肉は保存性を重視し、かなり塩辛い。

 品にもよるが、お湯の中に干し肉を入れるだけで十分な味付けとなるくらいのものもある。

 それに対し、この干し肉は高価な香辛料をふんだんに使用している。

 この干し肉のターゲットは冒険者ではなく、大商人や貴族といった干し肉にも金を掛けることが出来る者なのだから、当然かもしれないが。

 冒険者の中でこの手の干し肉を買う者は決して多くはない。

 多くはないが……金に困っている訳でもないレイにしてみれば、この干し肉は纏め買いするのに躊躇する必要はない。

 こうして、レイとセトは美味い干し肉を食べつつ大蛇の動きが止まるのを待つのだった。

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