第13話 志保バイト後編と異種格闘技戦
「とっとと済ますぞ、1000円位なら使えるか?」
「とっとと済まさないで。長くやって。長い方が好きよ。」
「だから何の話だ?」
「あははは、あなたと長く競馬を楽しみたいって言っただけよ。何変な勘違いしてるの? ばーか。1000円ね、いいわ。でも外したら2000円で返してね。プラス、夕食はレゼルヴドラベイが最初に飲みたい。ワインはシャトールパン。と鉄板焼きの神戸牛シャトーブリアンと白トリュフ、オマールロブスターとベルーガキャビアのコース。コンソメロワイヤルのスープ、カマルグ産トリュフライス、デザートは金箔黒トリュフのバニラブリュレが食べたい。飲み放題よ。タバコも吸うから灰皿も置いて。食後にクリームソーダも忘れないで。お土産も。その後ホテル。朝タクシーで送って。もう責任取って。」
「あのう、だから何で責任問題になるんだ?」
「あはは、あんたは責任取りゃいいのよ。」
「しかもお前ごときが何でそんな料理を知ってるんだ? やたらと高級料理に詳しくて怖いわ。だけどクリームソーダって、訳分らん。その無駄な知識は一体何なんだ。男が逃げるわ。」
「私が知る訳無いでしょ、さっきスマホで調べた。」
「あはは、ウケるー。」
「…。」
「じゃあラーメン屋さんでいいよ、ケチ。」
「あのね、志保、落ち着こう。俺はただお前を稼がせたいだけなんだ。こんな事していたらお前が結婚する時本当に後悔するぞ。」
俺はこの状況から早く抜け出したい。早く帰ろうっと。
「じゃあ、このマークシートに俺がマークした所を同じように書くんだ。」
「書いたかい? そこに1000円をマークして。アホッ、キスマークじゃない。書き直せ!」
「あははは、楽しいね。」
「楽しくないわ!」
全7レース中1番配当良さそうなのを選んで1レースだけ買わせた。私はそれぞれ1万円づつ購入した。
「さ、どうする。志保の買ったレースはまだ2時間位ある。2時間待つか、帰って明日にするか?」
「これから2時間て、休憩する? あはは、変態。あははは。スケベ。あははは。ふしだら。あははは、ばーか。」
「何でふしだらなの? 俺が言った事を3倍返ししないでよ。お前一人で行ってこい。お前はただの仕事のパートナーだって。俺は行かない。俺はとても高貴な紳士だ。分からんか? どあほっ!」
「ケンの方がどあほじゃ。」
「そうやって直ぐ怒るな、お前はこれまで口は悪かったが、なんかパワーアップしてるし。そんな女だったっけ?」
「俺はプライベートを公表しない主義だが、仕方がない。志保、良く聞け。俺には大好きな彰子という結婚前の彼女がいる。わかったか?」
「ふーーん、あっそう。ねぇケン。じゃあ今度彰子さんに会わせてよ。」
「何でお前なんかに会わせないといけないんだよ。」
「私と奥さん、どっちのがケンに釣り合うかなって聞きたいから。」
「はあ? 初対面にそんな事聞いたら、びっくりするだろ。お前とも付き合っているみたいじゃんか。彰子が俺の最愛の人なの。なんでお前が入ってくんの?」
「排除してシバかないと。いざ決着の時よ。」
「あのう、一体何の決着ですか? 俺に彰子以上の女はおらん。お前は邪魔せず大人しくして迷惑かけるな。その頭の中何とかしろよ!」
「あははは。お前の頭の中何とかしろよ!」
「お前が言うな! 俺が聞いてんの、アホッ! お前の頭を何とかしろよっつってんてんだあっ。」
「ケンは本当に欲求不満ね、何とかしろよ。エロケン、記念に写真も撮ろう。いくよ、ぎゅっ。チュッ。」
「ハグチューしちゃった。ケン、これ、浮気現場の証拠だね。あははは。」
「こういうのは動き早いな、浮気なんかするか、アホ。彰子に見せても信じないぞ。俺を信じてくれているから。」
「こいつはプルナ人相手でも簡単に勝てそうだわ。地球上最強だわ。」
呆れて本当に疲れてしまったわ。
「帰るぞ。明日配当を受け取る事に決めたから。明日銀行カード持って来い。お前の買った投票券は俺が預かっておく。無くされたら大変だから。」
「えっ? 何もう帰るの? 楽しかったのに。疲れたの? 食事は? いつもあなたってだらしないわ。」
「いつもって会うのは今日初めてだ。お前なんかとお祝いなんかするか! 早く理想の疲れない男が現れるといいね。」
「あはは、そっか、今日初めてだっけ? こんなに仲良しだからもう長い間恋人同士かと思ったわ。」
もう言わしておいて、腹立つから体力温存して もうなるべく話さない様にして言った。
「じゃあ、明日。あばよ。」
その途端に笑顔の後、振り向きざまスーパー猛ダッシュして志保を撒いて帰った。
「撒いたったぞ、だっはっは。やれやれ。どれだけ欲求不満なんだ? 志保はこんなに馴れ馴れしい厚かましいスケベだったかなあ?」
次の日、現地集合にして私が1時間程待っていたらやって来た。
「いきなりいなくなるから昨日飲みすぎちゃったわよ(笑)。」
「昨日さ、一緒に飲み行くのかなと思ったんだけど、いきなり走って逃げるから。完全に撒かれた。仕方なく途中のコンビニで缶のレモンサワー買って家で飲んでたら酔って起きられなくなっちゃった(笑)。」
「酒よわっ。それで昨日は俺と酒飲もうとしたの? 何か、逆にお前をこのバイトに誘ったのは悪かったかな?」
「何でそんなこと言うの、あそこはバイト以上に私を無理矢理誘って押し倒さないと駄目だったんじゃないの? 女を1人で帰していい訳無いでしょ、悪い人。」
「ちょっと練習してごらんよ。ほら、今日はこの後どうするの? 誘ってごらん。練習に付き合ってあげるよ、ほれ。」
「ほれっ?」
ーこの女とのくだらない会話は延々と続き以後カットされたのだった。
「カード持って来たか? これが昨日のお前の勝った当たり馬券だ。ここに入れて。」
「えっ? ケンのパンツの中に?」
「志保、当たり馬券をわざわざパンツに入れるのか、お前は? 頼むよ、俺早くおうち帰りたいです。指をさしている所に入れろって。」
「あはは、ウケるー。」
すると94万4390円の勝、これが1000円買っていたので944万3900円の配当となった。
「機械奥から係が出てきて、送金するからここに必要事項を書いて。」
志保が記入を済ませた。
「ねえ、ねえ、私どれだけ勝ったの?」
と聞いてきた。
「お前は944万円位かな。そこから返済分全て完済しろ。でも、残りのお金は後で別に銀行紹介するから将来の自分の為に全て長期貯金しろよ。困った時以外絶対使うな。」
「あと税金も取られるから。お前のあと自由に使っていい額は残り200万円位だと思え。」
そういっても志保にはピンと来てないみたいだ。
「ねえ、200万て何? 200円? 分からないわ、ねえねえねえったらあ、それしか使えないの? ケンの家で数え方教えて。分かるまで帰らない。」
「志保頼む、俺はお前に昨日からとっくに降参してる。言う通りに聞いてほしい。とにかく、俺は少し時間がかかるからもう先に帰ってくれ。もし、わからない事あれば後でメールして。」
志保は先に帰ってほしくて、流石にもう一人にしてほしかった。
「ゴーホーム、アラカーサセニョリータ、アディオス!」
わからない言葉なら会話を諦めるかなと思い、それで手を振って無理矢理帰した。
「あれじゃ何度も男に遊ばれるよな、性格何とかしないと本気の恋なんか出来ないぞ。」
と心配になった。それでもこれまで見てきた仕事中の彼女は言い寄ってくる男を寄せ付けなかった。
「汚らわしい、ウジ虫の不細工野郎。地獄に落ちろ、カス! この変態ゲス野郎がっ!」
「自分の顔見てから告白しろや、この変態タコチュー野郎が。」
とか言って何故か喧嘩腰。どんな男も一蹴する強さを持っていたので、今回仕事以外でまさか、会って初めて見る彼女の意外な姿だった。
この女にはパワハラやセクハラは3倍返しで通用しなかった。ケンがこの後志保を誘う事は金輪際無かった。
あっという間に月曜日になった。約束の場所に全員揃っていた。ケンが言った。
「実は今度起業する会社の仮事務所をこれからみんなで見に行こう。大丈夫、この近くだよ。そこでこの間話した麻未の彼氏決定試合をやろう。」
20分程歩いて事務所に着いた。大体中の設備も揃っていた。
「受付の反対側が患者の待つスペースになる。まだ椅子などは無い。今日はこの場所で試合をしよう。ルールは防具無し。反則無し。武器は使用不可です。素手で倒した方が勝ち。」
「技は殴っても、倒しても関節技でも、相手の意識が無くなるもしくは、ギブを言うまで時間無制限で戦う。実はあなた達の今の力を見ておきたい。もし、怪我をしても俺が治してやるから心配するな。」
「じゃあ、まず恋敵の対戦。翔とタケからここに来て。翔は空手の達人。タケは複数人相手でも倒してきた。本気で行くよ。始め。」
翔がいきなり右中段蹴りと左中段蹴りから後ろ回し蹴り、ローリングソバット、延髄斬りの超高速連続技を披露し、軌道が変化して避け切れず首元に少し入った。喧嘩慣れしているタケはかわし防いだが、体が前によろめいた瞬間今度はタケがニールキックを放った。
不意打ちで翔の少しおでこにヒットさせた。翔はうまくかわしたのだが、おでこを切ってしまった。それでも翔はタケの倒れた体を見て右拳で左レバーにパンチをお見舞いした。タケは金的から翔の右足首を取り、関節技で翔が堪らずギブアップした。タケが勝利した。
麻未が言った。
「タケ強い。相手は空手の達人だけど倒した。凄い。」
するとタケは翔を労った。
「翔の技は早い。かわせなかった。私は強烈なパンチを入れられてあばらが折れた。空手に無い関節技で何とか勝った。これが空手の試合なら絶対勝てなかったよ。思わず俺反則技も使ったからね。」
ケンが急いで怪我した二人を治療した。そして次にリュウが出て来た。
「リュウさんは本職だったからね。俺も、今の所未だ喧嘩で負けた事が無いです。翔は別格だけど。」
もう既に麻未の彼はタケに決まったが、1番強いのが誰か、そして体が回復したタケとリュウの二人の試合が始まった。
「第二試合、始め。」
麻未がタケに声をかけた。
「タケ、頑張って。」
その瞬間、タケがドロップキックと見せかけてリュウの首に両足を巻きつかせ、体を捻って左腕を取りそのままリュウの頭部を地面に直撃させ、そのまま関節技に行こうとしたがリュウは顔色変えず、流れに任せて左腕の先にあるタケの顔面を床に打ちつけて左膝を落とした。
第一試合よりも全然早い、一撃で勝負が決まった。タケは動かなくなったがケンがスキームで治した。ケンが言った。
「リュウは恐ろしい格闘家だね。あの若頭の時でさえ遠慮して戦っていたし。」
「はい、なので使うと今みたいに大怪我するので本職の時は誰にも使えませんでした。」
ケンが聞いた。
「この技はなんて言うのかな?」
リュウが答えた。
「はい、ジークンドーと柔術です。」
あまりの凄さに麻未から歓喜の声が無くなり、震えていた。タケが目を覚まし、格の違いを見せつけられた。
それから更に3人は仲良くなり、アルバイトで働いてくれることになった。タケの男らしさと勇気に感銘を受けた麻未はそのままタケとお付き合いする事になった。
タケは圧倒的な敗戦だったので、一切の戦いから引退する事にした。翔は空手と異種格闘技にも興味を持つ様になり、技をリュウに聞いていた。




