第12章 志保のアルバイト
私も足りないものだらけで色々考えた。
「今は奴らを養うだけの金も揃っていないし、従業員も全然足りない。今日の全員がやるとしても、私込みで5人しかいない。会社を立ち上げる金も無い。」
そこでもう一人誘うことにした。
電話で志保を誘った。
「よう、久しぶり。志保さん、元気だった?」
志保は前の会社で良く頑張ってくれたチーフアルバイトだ。彼女は26歳。20歳で結婚詐欺に遭い、大事なお金と体を奪われた。妊娠は免れた。
彰子の時といい最低の男どもだ。お金だけで無く、両方とも奪った。志保は強いからいいけど彰子は暴力まで振るわれていた。
「本当に騙す男はクソじゃわい。」
志保の月の収入は12万円だ。返済に充てる為、生活出来なかった。以前からお金の悩みを聞いていた。若くしてお金取られてそこには全返済したけど、カードローンがまだ150万円程あり、月の返済に困っていた。勿論こちらはそれ以上の詳細等知らないけど。土日は仕事が無い事を聞いていたので誘う事にした。
私もお金が全然足りてないので、一緒に収入アップしようと思って志保と出かけた。
本当はスキームを使って未来を覗いてお金儲けしてはいけない。カレックから禁止されていたのだが、個人的な私服を肥やす為では無い事をカレックにテレパシーで説明した。
志保に伝えた。
「今日はバイトで俺の手伝いだから。」
そう伝えた。行った場所はテレビ画面にお馬さんが映っていた。
何と場外馬券。志保が聞いてきた。
「ここで働くの? 場外馬券屋やった事無いけど日払いならまあいっか。」
「志保、違う。ここで働くけど、場外馬券の仕事では無く、俺の指名した馬を買う仕事だ。つまりは俺の助手。6レース位で止めとくか。」
「この時間なら第4レースから間に合いそうだ。とりあえず、軽く食事するか?」
「トーストとコーヒーでいいかな?」
「私はお肌の健康を考える美人美食家よ、シーザーサラダとパインアップル、オニオングラタンスープ、クラブサンド。カレーピラフ、エビフライとハンバーグナポリタンのセット。飲み物はシェイクとコーラ、ポテトサラダと食後にメロンパフェとレアチーズケーキがいいなあ。オムソバとサイコロステーキやミックスピザも次食べたい。」
「今はまだ朝10時前だぞ。軽い朝食というか軽いブランチなんだけど。シーザーにパインアップル? 一緒に喰うの? その食欲、お前は女子高生かっ?」
「美食家と言いなさい。パインアップルはカットされているから、サラダと一緒に食べて美容にもいいのよ。私はね、ケンのおごりだから昨日も食べずに我慢してたわ。朝からズドドーンよ。しっかり食べて喰いだめよ。覚えてらっしゃい。」
「わかったけど、カレーピラフ止めてライスの方がいいぞ、塩分摂り過ぎだし、シェイクとコーラって糖分摂り過ぎで体に悪い。太るぞ。美食家で無くただの暴食家だ。」
「うるさいなぁ。いつからうちの親みたいな事言う様になったの? ここは健康診断か? お前は医者か栄養士のつもりなんか? まあわかった、じゃあ、ライスも追加よ、これでいいでしょ。私の食べる物にいちいちケチつけてんじゃないわよ。私は若いのよ。」
言っても無駄だった。俺はトーストとコーヒーだけで、志保の奴はめちゃ空腹なのか、難民なのか、彼女には希望の品を何でも食べて頂いた。凄すぎて何皿頼んでたのか覚えていないが(笑)。
「ちょっと志保ゆっくり食べていていいけど、11時には出たいから。俺が言葉を発したらこのメモ帳に喋った事を間違えずに全部書き取ってほしい。それが今日あなたの仕事だから。ここに置きます。」
「ああっ! カタンッ。シャーッ。」
「おいっ!!」
「熱っ、俺のコーヒーこぼしやがった!」
「あははは、ウケるー。そのメモ帳取ろうとしたらこぼしちゃったじゃない、本当にあなたはバカね、メモ帳にもかかったわよ。もう書けないじゃん、あはは。どうするよ。」
「待て待て、勘弁しろよ、俺のせいか?」
「他に誰がいるのよ? あそこのお姉さんのせいにするか?」
呆れて何も言い返せず、ズボンに付いたコーヒーのシミをハンカチで拭きながら、渋々コンビニで再度メモ帳を買う羽目になった。志保は全く気にせずスマホでお笑い見ながら笑ってパクパク食べていた。
「おい、志保っ! お前余計な仕事を増やすなよ。もうこぼすな!」
「あはは、ケン。あらどうしたの? ズボンにシミなんかつけちゃって。まさか、おもらししたの? あはは、恥ずかしい。お前は小学生か?」
「アホッ、お前のせいだろ?」
「あはは、おもらしケン。いやだー、見っとも無い。皆さん、この人おもらししましたよ。あはは。」
「声でかいわ、志保、わかった、ストップ。でもこれはコーヒーのシミでお前がこぼした。」
「おのれケン、おもらし、漏らしたの人のせいにするかっ。やるかってめえ、この野郎!」
志保は血の気が多く、喧嘩っ早かった。このぶっ飛んだ性格は昔のまんまだ。諦めてケンはスキームでシミを取った。
「おいケン、今のはてめえが悪いだろ? お詫びに10回謝ってワンと言え。見てたわよ。ケンが遠くにメモ帳置くから、私は必死になって一生懸命頑張って取ろうとしてこうなっちゃったじゃない。」
「でも今のいいよ。ケンに全部かかったし私は大丈夫。もう忘れていいわ。勘弁してあげる。あはは。私は心がでかわ。あなたも見習いなさい。ケンの心は、もっと太くでかくよ。ほかのところも。あはは。」
「ほれ、ケンもこぼしたから遠慮しないでじゃんじゃんコーヒーを頼みなさい。私もコーヒーゼリーお替りね。コーヒー熱いからふーふーしてあげるわ。その代わりこのコーヒーゼリーをアーンして食べさせて。はい、アーン。あははは。」
「何だ、朝からこのノリ。勘弁しろよ、その言い方、ここは志保がおごってくれるのか?」
「ばーか。あなたに決まってるでしょ? まさか私に払わせる気? もっと人生は笑って大きく気前良く生きないと駄目でしょ。」
「お前が言うな。」
「あははは、何かさ、楽しいね。」
「何で怒られてるのか、さっぱりわからん。仕事なのに緊張感も無い。楽しく無い。これはまるでイチャイチャカップルのデートみたいじゃんか。何が はい、アーンだ、アホか? これは仕事だぞ。おいっ。気にしてないとかお前が言うな。俺のセリフだろよ。熱かったし。お前はもっと悪かったと気にしろ。」
「怒ったケンもかわいい。」
やばい、とりあえず、時間が無くなってきたので聞いて。
「俺はこれから仕事を始めるから、私の言った通りをここに書いてくれ、一言一句間違え禁止。いいね。もし、私の言った事を間違えて書いたら今日のバイト代は払えないし、次も頼まないから。いいね、真面目にやってね。」
彼女から反対の席の一番遠くの場所で私はスキーム時空移動状態に入った。
「ねえ、これから何やるの?」
志保が聞いた。
「今から数時間先の未来を覗いてくる。レースの結果を志保に書いてもらうから。言った通りに書いてね。」
「オッケーかな? じゃあ行くよ。福島4R13の3の2。東京4R7の1の8、京都4Rが…。」
「ちょっと聞こえない。京都は何だって?」
「京都4Rが14の6の16。」
仕事となれば突然スイッチが入る。顔の形相がガラッと変わり、誰よりもきちっと完璧にやってくれる女で一番信用を置いている。こんなにふざけるとは思わなかったが。
全部で7レース分書いてもらった。
「以上で本日の仕事は終了だ。これからこの書いてもらったメモのものを買いに行くけど、一緒に来るか?」
「バイト特典としてこの番号を志保にも特別に買わせてあげる。ただし、購入は実費で宜しく。そこまでは甘やかさない。」
「ねえ、私のバイト代はいつ入るの? それがあれば買えるけど。何、これケンのあてずっぽでしょ? 当たる訳ないじゃん。あはは。これで買ったけど当たらず騙して、困った私は体で稼げって事?」
「お前なあ、何言ってるの? 俺が今日志保を呼んだのは、自分の会社の資金獲得と志保が金に苦労していると聞いたから誘ったんだ。支払いが5万円以上はもう数えられないって怒っていたろ(笑)。
勿論ここで帰っても1万円はあなたのものだけど。もっと欲しいなら一緒に来ると得だと思うから言ったんだよ。味わってみる? 貰う方ならいくらでも数えたくなるぞ(笑)。騙すつもりなんか無い。」
「わかった、要は金よりこの美しい私を誘ってるのね? いいだろう、行ってあげる。呼び名だけど、これからは私を姫と呼びなさい。あなたは三太夫よ。」
「さっ、三太夫って何だよ? もういい、一人で行く。」
「あはは。三太夫、この方が楽しいじゃん。あなたは私の使用人よ。」
「行くわよ三太夫、私は美ボディで魅力的だもんね、私とやろうとしてる輩から守るのよ。はい姫、と言うがよいぞ。」
「はい姫」
「あはは、良いぞ良いぞ。三太夫、素直で何よりじゃ。実はおぬしも本当はこのわらわを抱きたいんじゃろ? 顔に書いておるわ。だから時間をかけて、隙あれば突撃! とか考えとろうが? 食事もおごったし。貸し1みたいな。私について来てほしいんじゃろ? 私が美人だからチャンスあれば胸だけでも触りたいとか思うとろうが。 わらわのは大きくて幸せになるぞ。このまま良い関係になろうとか思うとるのか(笑)? あはは、素直な奴じゃ。このたわけたエロガッパじゃのう。わらわはそんな簡単な女じゃないぞ。残念じゃったの。エロ、スケベ、変態の三拍子、三太夫、ほら、きび団子じゃ。悪人退治にさあ、いざ参ろうぞ。じゃじゃーん。」
「待て待て待て、カットカット。きび団子って、これコンドームじゃんか。」
「あはは、ウケるー。だってきび団子なんて持って無いわよ」
「お前、一体どんな時代劇見てるんだ? 何なんだ三太夫って? 知るか! やってられるか!」
「やってたじゃないの。あんたノリノリだったわよ。」
「やってられるか! 勝手な想像でそこまで話を作るな。お前のこれまで出会った男はそんなんばっかか? この世の男は変態ばかりじゃないわ。これは仕事の一環だ。お前等興味も無いわ。年を考えろ。俺は敵? 味方? どっち? ほれ、思い出せ。」
「あらまー、めんどくさ。どっちだったかしらね? ほれ、思い出せだと? おのれ、成敗するぞ。うーん、じゃああなたのその顔に答えるわ。ベロ出して目を閉じて。ちこう寄れ。」
「どうするつもり?」
「敵ならベロキック、味方ならベロキッスよ。あなたはベロ出していればいいわ。今答えてあげるから。」
「アホ、両方怖い、断る。何だっ、ベロキックって? 痛いわ、止めてください。」
「姫、お止めください。だろ?」
「えーっ、まだやるの?」
「俺とお前はどれだけ年の差が離れているんだ? 親子位離れているんだぞ、親心は持っているが、お前を女として見た事なんか無いわ。アホッ!」
「アホッ! たわけがっ。目をかっぽじってよく見てみろ。めっちゃ綺麗。あははは。」
「全ての男がみんな変態だと思うな。こんなにお前の事を心配しているのに、悲しくなるわ。お前は男の思いやりは体目当てだと思い過ぎだ。」
「お前は誰か早くお前の欲求を満たしてくれる彼を作れ。」
「俺は、今日お前をうちの会社にスカウトしたくて呼んだんだよ。俺がお前を裏切ったり、嘘ついた事無いだろ? 志保も仕事は真面目でいつもきちっとやってくれるのも見てる。」
「ねえ、もう仕事なんかいいから、さっきの続きやるわよ。三太夫、暑い、日傘差してたもれ。あー、ちとわらわは肩凝ってしもうたぞ。歩きながら肩を揉むがよい。肩じゃ、その方、変なとこ揉みよったら生かしては帰さんぞ。」
この後延々とアホ下ネタが続き、ケンのスキーム技「早送り」でカットされた。
「しょうがないなあ、もう。ケンからかうと面白いからついてってあげるわ。」けどこれ以上私を熱くしちゃ嫌よ。」
「朝からお前は下ネタばかりだなっ、なんて欲求不満なんだっ。ここのどこで熱くなる場面があるんだ? ヤバいアホだ。」
「私はアホよ、何か文句あんの? おいっ! ケンは我慢強いのね、かわいい。」
志保って詐欺ショックで頭がおかしくなっちゃった。こんなんだとは知らなかった。完全に志保にムードを支配されて相手にしないでとっとと場外馬券場に着き終わらせたかった。




