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総帥のお嫁さん  作者: 雨傘 はる


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行動の人


まめまめしいヘラルドは、毎日帰宅する際はレアへの小さな贈り物をする。

片手で持てる花束、流行りの菓子、刺繍の凝ったハンカチ。

いくつもいくつも小さい心配りが積み上がって、レアは困ってしまう。


「わたしは、何をあげられるかな」


着の身着のまま、どころかボロボロの身なりでヘラルドの屋敷に来たレアは、何も持っていない。


なので、毎日手紙を書くことにした。できることを見つけるのは楽しい。

忙しい人なので、手短に読めるように、便箋の半分だけ。


『今日はお庭に空色の小鳥が来ました。明日も晴れるでしょうか』


『新しい靴をありがとうございます。ヒールじゃないから、前よりもっと早く走れます』


『ヘラルド様、大好き』


彼はレアが起きるより早く出かけ、眠った後に帰宅することが多いので、贈り物と手紙が二人の交流だった。


王宮を守る騎士とは違い、軍は国中に点在している。

総帥を務めるヘラルドは、そのすべての拠点と連携しながら、適切な人事や指示を出すのだという。

深刻な状況に陥れば、もちろん現場へと向かうこともある。


そんなヘラルドのお嫁さんになるのならと、今まで興味を持たなかった国内外の情勢や外交について学び、社交マナーも改めて習得し直した。


そうしているうち、公爵家から絶縁状が届き、あっさり承認して提出した数日後には、当主の代替わりがあった。

実父はクズだが健康だったし、異母兄も底意地が悪いが元気だったのに、当主を継いだのはなぜか遠縁の人らしい。


よくわからないが、絶縁したし興味もないので、そうなんだーと頷いて流した。

いつの間にか実父(クズ)たち一家は王都を離れ、遠く離れた領地に移り住んでいたので、心底清々した。


公爵令嬢ではなくなったレアだったが、ヘラルドは出て行けとも、婚約解消とも言わない。

一度尋ねてみたら、眉間に深い皺を刻んで『解消したいのか』と聞くので、全力で否定した。


「あなたがいたいだけ、ここにいればいい」


だなんて嬉しいことを言ってくれたので、思わず抱きついてしまったら、一瞬後には廊下の端まで逃げられてしまった。

照れ屋さんめ。


この頃になると、レアにもほんのちょっとヘラルドという人がわかってきた。

彼は誤解されやすく、偏見や忌避に慣れ過ぎていて、親しみを込めた言葉や行動に耐性がない。


軍という大きな組織を取りまとめ、油断できない状況に晒されているのだから、表情が動かないのはむしろ利点だと思うのだが。

どうやら、彼の無表情や寡黙さは、威圧的に捉えられやすいらしい。


余計なことは言わないが、ヘラルドは行動を惜しまない人だ。

レアの話を遮ることなく聞いてくれるし、必ず相槌を打ってくれるし、たくさん贈り物をくれて、細かな気遣いをして、手紙にはメモの返事をくれる。


早く仕事が終われば、手土産と共に帰って来て一緒にテーブルにつき、眠くなるまで話し相手になってくれる。

たまーの休みには、観劇や遊歩道に連れ出して、都度、新しい装いをプレゼントしてくれる。


言葉で褒めることは少ないが、ドレスに合う花飾りを選んでくれる。

大好きと言えば、少々照れながら『……そうか』と受け止めてくれる。


レアにとってのヘラルドは、言葉と同じだけの熱意を行動で示してくれる人だ。

一目惚れした時よりも、もっともっと好きになってしまい、毎日悶えてしまって困るほどに。




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