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三兄弟  作者: 一二三


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末っ子という生き物 −8

 『工業高校』というと、私が十代の頃のイメージは『高校には一応行っときたい学力ギリギリのヤンチャ目男子の巣窟』だ。公立普通科がちょっと難しいという以外にも勿論家業や将来の関係で商業高校や工業高校を選ぶ人もいたのだが、圧倒的にヤンチャ男子の存在が目立つので、まあ仕方ないと思って欲しい。昔の田舎の話なので、私立は『公立が難しい生徒の受け皿』というのが一般認識で、更に今より余裕も無かったので保護者の『何が何でも公立』信仰も強かった。だから普通科で行けそうなところが無い男子の最後の砦が工業高校。みたいな感じ。

 今ではただ普通に選択肢の一つとして、教育理念や設備、部活動等から私立高校が選ばれる。公立の凋落は頭の痛い問題だが子どもの選択肢が広がる事は歓迎したい。

 そういえば某ハンバーガー店でバイトしていた時に一緒だった高校生の女の子と平日朝のシフトが被った時、「今日は学校お休み?」と尋ねた私に彼女は「定時制なので」と答えた。特に珍しい話でもないらしく、同じように「通信制で」という人もいたりして、意外な所に多様性を見て感心した事を覚えている。それぞれに色々って、いいよね。


 三男は工業高校に合格した。


 入試当日に帰宅するなり「バッチリです。なんか、普通に出来た。」と喜色満面で報告する三男に「凄いじゃん。もしかして首席合格か?」と揶揄うと「あるかもねー。」ときた。

 「サンサン、首席って字書ける?意味わかる?」

 「分かりますー。ママ、馬鹿にし過ぎー。」と言いながら目の前で動かす指が『主』を描きかけ、「冗談だから!」と『首席』を作る。アヤシイ。

 「首席合格だったらさー、サンサン、入学式で新入生代表のスピーチあるんじゃない?」と更に揶揄う。

 「うぇ〜い。任せろっ。感動させてやるぜぃ。」

明かに揶揄われていると分かっても乗ってくるのは三男の可愛い所だ。当然『首席合格』ではないが、入学式後にそういえば、と尋ねると強く主張した。

 「新入生代表のスピーチ依頼はなかったけど、そもそも入学式で新入生代表のスピーチ無かったから。ワンチャン首席だったかも。」


 入学式には夫が出席した。

 新潟工業高校は徒歩圏外。バスは便が悪くてほぼ無理。電車で行こうとすると家から駅まで徒歩30分→電車15分→駅から高校まで徒歩30分で、待ち時間もみれば大凡1時間半。天気が良ければ家から高校まで自転車で45分。セレモニースーツにヒールで1時間も歩けない、とゴネたら夫が気持ち良く出てくれた。

 入試直前に発覚したのだが、驚いた事に三男は工業高校が何処に在るのかも知らなかった。『試験当日の行き方』とか『通学の仕方』とか色々不安を感じたりしなかったのか、超不思議。結局試験は夫が送迎したし、入学式も同行。通学の予行演習も[チャリ]バージョンと[電車]バージョンの2回付き合っている。

 「甘すぎない?練習なんて自分1人で行かなきゃ意味無くない?」

 「まあ、いいじゃん。ちゃんとサンサン前で行かせるから。」

夫には再三「甘やかすのは私だけでいい」と言っているのだが、彼が甘やかしたいのは子ども達らしい。楽だからいいけど、微妙。


 入学式を終えて帰宅した三男と夫に感想を聞いた。いや、感想というか、聞いたのはコレ。

 「カツアゲとかカツアゲとか、無かった?」

 「うわ、カツアゲきた!昭和〜!」

カツアゲは昭和時代の古い慣習らしい。今は制服もみんな標準のまんまだし、髪の毛が立ってる子も面白い髪色の子もいないんだって。残念。女子もあんまりいないのにね。



 入学式の後「夕飯は外食しちゃおうか」という話になり、夫と三男と三人でプラプラ歩いていると三男のスマホの通知音が鳴った。画面を確認した三男は車道を走る車を見回しては「どれだー?」と呟く。楽しそうだ。

 「どした?お友達いたの?」

 「なんか、車からこっちを見つけたみたい。」

三男が差し出したスマホの画面を見ると、歩道を歩く三男の写真と一緒に『野生のサンを発見!』というメッセージが。野生って。


 「失礼な。」

 「え?」

 「今すぐ返信。『僕はママの完全養殖です。』って。」

 「養殖?ボク養殖されてるの?」

 「自力で食べ物手に入れた事なんて無いでしょ。」

 「確かに。でも養殖?飼育とかで良くない?」

 「そうね。サンサンから卵を取って育てるわけじゃないしなー、『完全養殖』はおかしいか。でも『飼育』って言うとなんか生々しくてコワイし。やっぱ『養殖』で。サンサンは水棲生物枠ね。」

そんな事を話していると、夫から「歩きスマホはやめて、早く来てよー。」と注意を受けた。

 三男も入試直前に初めてのスマホを買ってもらったのだが、既に私より使いこなしている。若い。


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