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三兄弟  作者: 一二三


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末っ子という生き物 −6

 何とか『お友達とディズニーランドの旅』に参加したい末っ子。他所のお母さんの参戦で内心『許可する他無いか』と諦めつつ、ここぞとばかりに説教してせめてもう少しスッキリしたい母たる私。

 お前はバカなのかと問われた三男、黙る。黙っているので返答を悩んでいるのかと待つ。


 「ただいまー」と次男が高校から帰宅。

 居間に来て荷物を置き、立ち尽くす弟をチラ見してから洗面所へ移動、手洗いうがい。お弁当箱を洗って戻って来ても同じ状態の母親と弟に苦笑いして「今度はどうしたの?」と聞く。


 事情を説明すると、次男は「へー。」と興味の無さそうなリアクションで自分の勉強を始めた。説明するだけさせておいてそれ?と思ったが、もういいや。何か小声でボソボソ言ってたが聞き取れなかったので無視だ。


 黙ったままの三男は次男の動向に気を取られたのか、もはや考えてる風でもない。黙ってるだけ。


 何か要求した時、行動した時の私のリアクションなど容易に想像つくと思うのだが、どうして何の対策もしてこないのだろう。まず間違いなく「何を思ってそうなったのか」の説明を求められ、要求があるなら説得せよだ。内容が違っても流れは大体いつも同じ。上の二人もダメダメだったが、末っ子は輪をかけて駄目だ。どういうことかというと、『ダメもとチャレンジ』なのだ。行き当たりばったりで何の策も無くチャレンジ、言い返されると思考停止で固まる。別に必死に考えた策で破れたわけでもないのでダメージが薄く、後日ちょっと捻って再チャレンジして来たりする。まずイメトレくらいして来いや、と思う。こっちがこんなに考えて話しているというのに、割に合わなさ過ぎる。親だからしょうがないけども。


 「まずさー、どの位行きたいかをアピールするしか無いわけじゃん。例えば『お手伝いをアレもコレも頑張ります!』とか『勉強もちゃんと頑張って次のテストは全教科95点以上取ります!』とか、もちろん口ばっかりでは話にならないけどさ。そんなの喜んで頑張っちゃうくらい行きたいんです、って事だよね。お友達のお母さんが費用負担してくれるみたいな話になってるけど、そんな訳にいかないんだから僕の貯金で行かせて下さい、とかさー。」


「な、なるほどぉ」と何やら考え込む三男。なるほどって。何でこの人こうなんだろうな。前ばっか見てないでたまに振り返って己をよく見つめてみたらどうだろう。


 いつの間にか帰宅していた夫が「どうしたの?」と顔を出した。会話が途切れたので今がチャンス!と思ったらしい。お友達のお母さんからお手紙来ちゃった件を説明すると、ニヤニヤ笑って

 「それでママ切れてんのか。」

切れてねーし。面倒臭っ、と思った事は否定しないが。一応自分なりの『こうあるべし』に向かって導き中だ。

 「まあ、ママが良いって言えばいいよ。」

出た。先に言ったもん勝ちの必殺技。面倒臭くて押し付けてるだけでも言い方次第で尊重してるっぽく仕上がる魔法の言葉。私も大して興味の湧かない案件では多用しているので文句は無いし、今回は既にやりかけだからな。任せろ。

 さていい加減待つのもダルいし、そろそろ夕飯の支度に取り掛かるかと腰を浮かせた時。三男が前に出てきて目を合わせた。


 「ママ、考えたから聞いて下さい。」

 「はい、どうぞ。」


 「まず、お手伝いをちゃんとします。それから」

 「いや、ママは別に条件付きで許可するとか許可に見合う条件を考えろって言ってない。どうしても行きたくて、その為なら自分はここまで出来る。それを見て考えてみて欲しい、とか。そういうのじゃないの?」

思いっきり条件を提示しようとする三男にかぶせて再度説明する。私は条件を付けるのは好きではない。駄目な事はダメだし良い事もそうで、条件次第で変わったりはしないのだ。通じてないっぽいけど。


 「うーんとね、僕はこの仲の良い友達と行く旅行にすごく行きたいです。友達のお母さんに迷惑かけないようにちゃんと考えて行動するし、手伝えることは何でも手伝います。あの、全部払えるか分かんないけど貯金使うし、言った事がちゃんと出来ることを見てもらえるように、お手伝いも頑張ります。勉強も、もちろんちゃんとやるし。」

 「うん、それで?」

 「次のテストは旅行の後だけど、全教科95点以上取ります。」

うーん。こういうとこだよ。途中まではいい感じだったんだけど、やっぱり基本的に考えてないんだろうなあ。


 「もうちょっとよく考えてから口にしなさい。全教科95点以上は、ずーっと毎日ちゃんと勉強してたら取れるよね。でも君これから頑張ってできるの?部活もしてて?40点とか取ってる教科もあるよね?口ばっかは信頼を損ねるよ。君の場合は既に信頼無いけど。」

守れない約束はするなとプンスカしていると、三男の「聞いて下さい」辺りから手を止めてこちらに意識を向けていた次男が徐に参戦。

 

 「お前さー。テストの点なんてその時その時の条件で全然変わっちゃうんだから、そんなの条件にしちゃダメだって。凄く難しくて平均点がめっちゃ低い時とかあるだろう?逆もあるけど。もっとさー、確実に自分の努力が反映される所を考えないとダメなんだって。」


 おっと。てっきり弟を貶す的な発言が来ると思ったら、素敵な兄が降臨した。考えの足りない弟に建設的で前向きなアドバイスだ。私よりも善い事を言うではないかと、今日イチハッピーだ。

 「ニーニー、いいお兄ちゃんだなあ。素晴らしいね。サンサン、いいお兄ちゃんがいて良かったなあ。何言ってたか分かったか?」

末っ子はよく分かって無さそうな顔で「う、うん。多分。お兄ちゃん、ありがとう。」と答えたが、暫し考えた後に捻り出したのは『テストで数学と英語は80点以上、他は90点以上取る』と言うものだった。兄のアドバイスに沿った案は思い付かなかったらしい。まあ、難しいよね。でもまあ、この辺が潮時かな。

 

 「交通費と食事以外の飲食、お小遣いなんかは自分の貯金から出しなさい。食事とパークチケット、宿泊費はパパにお願いして上げる。旅行中はあなたを誘って良かったと思われるように、よく考えて行動する事。あと、あなたのお願いを聞いたママを後悔させる事のないように。」

続けて、そばに来ていた夫に言う。

 「ディズニーランドの件、許可したよ。でね、食費とパークチケットと宿泊費を出して下さい。」

 「え、交通費は?」

 「交通費とお小遣いは自分で出せって言った。遊びに行くんだし、当然では。」

 「良いけど。分かったよ。サンサン良かったな。約束した事守れよ。」

 「はい。ありがとう。」

 

 こうして三男は『友達とディズニーランドの旅』を勝ち取った。私は暫くお友達のお母さんとのやり取りを余儀なくされたが、終始頭が下がる思いだった。友達6人って事は、自分の子以外が5人。私以外に4人の保護者ともこんなやり取りしてるのかと考えるとそれだけで「無いわ〜」と思う。他所のお母さんは凄いなあ。


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