末っ子という生き物 −4
その話が最初に持ち込まれたのは末っ子サン中2の夏だったか。
それまでにも『友達と焼肉屋さんに行くのは可?』とか『お友達の家でのお泊まり会の参加は可?』など、色々なお誘いに心惹かれては許可を求めてくる三男に対し、その都度『中学生同士で焼肉屋は無いな』と返せば『保護者(お友達の親)の引率付きなら可?』とどうやらお友だちとその保護者も巻き込んで対策を練ってくる。上の二人の時にはほぼ無かったこの手の話はありがたいが、正直面倒臭い(口には出せないが)。子ども達には是非、自分達で責任を持てる範囲で楽しんでほしい。
元々人の名前と顔を覚えるのが苦手な私。三男が小学生のうちは何だかんだPTA 活動に参加していたが中学生になってからはほぼノータッチで、お友達の顔も名前もさっぱりだ。たまにしか見ないのに、別人みたいになっちゃうお年頃だし。
お友達も分からなければ当然そのお家の人も分からないわけで、子どもといえどもお世話になるのはハードルが高い。高すぎる。だってうっかり外でお会いした時には「先日はうちのサンがお世話になって〜。」とかご挨拶しなければならん訳ですよ。顔も名前も分からんのに。しかも小学校から中学校と1学年100人程度がずっと一緒(一つの小学校から一つの中学校。他の小学校からの卒業生が混ざらない)で、保護者は多くの学校行事・PTA活動に参加してきており、周りはみんなママ友?な世界なのだ。
「はじめまして」と挨拶をして、笑顔で「初めてじゃないですよ」と返される恐怖体験を三度繰り返し、学校関係での「初めまして」を封印した。普通に「こんにちは」で良いじゃんね。家族から「他人にこれっぽっちも興味無いくせして愛想だけ良い、っていうのがダメダメな見本だよね。」と言われている。
覚えられない。つまり楽しくお喋りしても間隔開けて次に会った時には個体識別できてない超感じ悪い人、誕生です。超感じ悪い人と認識されると困る時は当然「ちゃんと分かってます面」で押し切る訳だがこれがまたストレスフルで、もう可能な限り避けたい。そんな母たる私に、コミュ力モンスターな末っ子はやたらとチャレンジングなのだ。
「友達とディズニーランド行ってもいい?」
「は?」
「友達とお泊まりで、」
「無いな。日帰りでも無い。中学生のお友達同士でディズニーランドは無理。」
三男が可愛くお願いするのを食い気味に却下した。無いわー。
「えっと、それは何で?」
「金額的にも距離的にも『中学生の遊び』の範囲を超えてると思うよ。何かあってもサンサンは自分で何にも対処できないでしょ?」
お忘れかもしれないが我々は新潟県の新潟市民。子供同士で気軽にディズニーランドに行っちゃうような地理的条件にはないのだ。
「それにあなたは信用無いからね。ママ、サンサンのことは1ミリも信用してないから。」
そう。この暫く前に三男は課金事件を起こしていて、サンサン株は大暴落中だ。
私のPSアカウントでプレイしていた「原神」で、なんと総額36万も突っ込んでいたのだ(私が自分で買い物する時に面倒なのでいちいちパスワード入力しないように設定していた為可能だった)。カード会社からの「不審な使われ方がないか?」という連絡で発覚。少し前に知り合いがカード番号を盗まれて被害に遭った話を聞いていたのでてっきり「それか!」と思っていたが、調べてみれば犯人は三男。泣けた。三男には(私が)うんざりするまでお説教し、就職したら可及的速やかに全額返済(金利は免除)と、罰則として家にいる限りのお風呂掃除と布団の上げ下げを申し付けた。
「したくてもしてはいけない事をやるかやらないかで迷った時、周りがどんなに迷惑を被ったとしてもただ自分が『そうしたい』というだけでやる。サンサンがそういう人だということが分かった訳だよね。お友達とか、周りの人にも注意喚起が必要なんじゃない?被害を未然に防ぐために。」
「あの、ごめんなさい。もう絶対やらないのでそれはやめて下さい。」
「いや全く信用できん。『やる人』の証明を見た直後じゃん。」
「また信頼してもらえるように努力します。」
お説教の最後はもうちょっと投げやりでこんな感じに。まさか窃盗を働く奴がこんな身近にいたとは。とにかくそんなこんなで信用を失った三男は自由裁量権がほぼ無い。




