末っ子という生き物 −3
「あー、イタタタ。足が痛いようぅ。」
中学校から帰宅した三男がヨタヨタと近付いてくるのでどうしたの?と心当たりを尋ねると
「筋肉痛。今日体力測定で50メートル走あったから。」
は?
「ちょっと待て。サンサンは運動部入ってちゃんと活動してるにも関わらず、体力測定の50メートル走で筋肉痛になってると?」
「いや、めっちゃ走ったんだって。それにママ、卓球は文化部だから。」
真面目に卓球に取り組んでる人が聞いたら怒りに震えるようなことを言う。
そう、三男は中学校で卓球部に入部した。私が中高生の時でも卓球部は緩いイメージがあったがこのご時世で更にゆるゆるに。もちろん個人的に習っている子とかもいて取り組み方はそれぞれなのだが、部活動は毎日ではなくあっても夕方5時までで、基本的に休日は活動禁止(大会などは土日が多い)。教師の負担などを考えたら当然そうなるよね。それでも『やりたい人は個人でどうぞ』となったらただ選択肢を奪われる子どもが出るだろう事を思えば、部活文化は有難いものだ。子ども達には色々な経験をしてもらいたい。
三男はそんな感じで部活動がある日は部活をし、無い日の放課後はお友達と遊びに(小中学校生の遊び場として開放されている廃校になった小学校の体育館で、主にバドミントンや卓球。)行ったりして楽しい中学校生活を送っていた。
家では長男が東京に出ており、大学受験に向けてガリガリ勉強する次男と二人でいる時間が長くなる訳だが。びっくりするほど影響を受けないフリーダム。相変わらずZ会の教材は『やってる風』で凌ぎ、学校(市)支給の iPad を眺めてはニヤリしていた。
中学校入学当初、成績は多分「中の中」ど普通。それがジリジリ後退して中の下、もしかして下の上か?という中2の終わり頃のこと。
「ボク大学行きたい。」
学校でそんな話があったんだろうな。そんな時期だよね。友達の話を聞いて感化されたのか突然三男が『大学』と言い出した。
「はい?勉強嫌いなのに?何故?」
「ボクは勉強嫌いって言ったことは無いよ。」
「でも好きじゃないし、したくないからしてないんだよね?お兄ちゃん達にも言ってるから知ってると思うけど、高校も大学も国公立オンリーだよ。行けるとこある?」
モゴモゴ言う三男はどうやら最寄りの新潟大学をイメージしているらしい。兄二人が東大受験というのを見ているせいで勘違いしているのだろうか、新潟大学は全国的に見てもレベルは低くない。無理目の無理だ。
「特に目指す分野が無くて大学行きたいって事なら高校は普通科。そこそこのとこに行かないと厳しいよ。」
もうちょっと客観的に自分と現実を見ろ、と色々言ってみても彼の返事は大体こう。
「分かってるよ。大丈夫。ボクはこれから覚醒するから。」
「これから覚醒する。」は試験前とかに何度か聞いたが『覚醒サンサン』にはお目にかかった事が無い。もしくは覚醒前後の区別が不可能なレベルに酷似。面白いから良いけど。
そんなわけで、末っ子は急遽大学進学を目指して普通高校志望に舵を切った。




