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三兄弟  作者: 一二三


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末っ子という生き物 −2

 夫の転勤の為1〜3年で近県を転々として暮らす生活も末っ子の小学校入学(長男の中学校入学)と同時に終了。新潟市に定住し、三男は兄弟でただ一人、入学した小学校を卒業した。

 上の二人が小学校3校を転々とし、おそらくその為に少々友人関係が希薄で、放課後はただ帰宅して勉強したりDVDを観たりとほぼ家で過ごしていたのに比べ、三男は明らかに私のイメージする(帰宅したらすぐお友達と遊びに行っちゃう)普通の男の子になった。

 元々は「遊びに行くのは宿題が終わってから」がルールだったのだが、上の二人が遊びに行くことが殆どなく「友達と遊ぶ」機会が貴重だったことと、二人は放っておいても自己管理が出来たことから形骸化。あと、やっぱりちょっと転校を繰り返すのを申し訳なく思っていた事もあって、毎日のように『友達と遊びに行ってくる』という末っ子を微笑ましく眺めてしまった。


 「お兄ちゃん達は友達いないじゃん。」

とは、毎日のようにお友達と遊びに行く三男に『宿題やったのか』とか『勉強もしたら』等と苦言を呈した兄達に向かって放った末っ子の暴言だ。もちろんみんな半分ふざけた戯れあいのようなものだが、三男にはお説教。『兄に向かって何たる口の聞き様か。』ってやつ。それにお兄ちゃん達には友達がいない訳ではなく、遊びに行ったりしないだけだし。

 それにしても、上の二人の兄のように勉強はしなくても一緒に遊ぶお友達が沢山いる。三男はそこに優越感を持っているようだ。『勉強が出来ない(しない)』という所で劣等感を持っている様には見えないのがちょっと不思議。


 「勉強だけが必要な訳じゃない」

 「遊びや、他のどんなことからも得るものがある」

 「色々な人がいて、対人関係で良い事も悪い事も起こる。子どものうちに出来るだけ色々なケンカやトラブルも経験しておきな。大人になってからだと皆んなスケールアップしてて面倒だから。」

勉強させつつ兄弟3人ともにそう言い聞かせて『お友達と遊ぶ』を推奨していたが、思っていた様にはならなかった。長男も次男もほぼ勉強一本槍で何のトラブルも無し。三男は勉強しないでお友達とただ楽しく過ごしている。


 「ただ」と付けてしまうのは少々狭量かもしれない。仲の良い友達がいる事も楽しく過ごせる事も幸せな事だ。分かっているが、折角なら色々なトラブルとそれを解消する経験が欲しい。どういう訳か、息子達の行く小学校も中学校も、とっても平和。クラスに一人はいるだろうと思われる『難しい人』は居ないし、イジメに関するアンケートは定期的に実施されるが、いつも答えは『された事も、されてる人を見た事も無い』だ。おかしいな、私の子どもの頃と全然違う。

 もっと色々困ればいいのに。このまま大人になっちゃって大丈夫かな、と不安になるような『勉強ばっかりしてるお兄ちゃん達』と『楽しく遊んでるだけの末っ子』になった。



 三男は魚を捌くのが得意で、小学校の2年か3年時の誕生日に私の姉から(お魚捌く用)マイ包丁をプレゼントされている。元々は釣りが趣味な夫に連れられて『家族で釣り→捌いて食べる』流れの中でお手伝いとしてやっていたのが、「ボク得意かも」からマイ包丁を得るまでに。一時ユーチューブの『色んなお魚を捌いて食べる系』動画にハマっていた。

 姉から三男への誕生日プレゼントはここ何年も一緒に魚屋さんへ行って彼の好きな魚を買い、姉の家で捌いて(姉の家のキッチンの方がお魚を捌くのに適している為)家に戻ってみんなで食事。桜鱒のお造り、鯛の石窯焼などは気に入って2回ずつやっている。幼稚園児に見紛う小1から姉と通う魚屋さんでは「大将」と呼ばれ珍重されているそうだ。三男が一緒だとオマケが付くと姉にも喜ばれている。


 そんな三男は割と早い時期(小4くらい?)から将来は漁師になるというようになった。

 「カッコイイ!良いねえ、漁師!マグロ?」

三男はマグロが大好きだ。家で食べる時はお刺身でも手巻きでも、マグロは彼が殆ど全部食べる。マグロを食べ尽くしたら他の物を食べる感じだ。『美味しいマグロ』の美味しさを否定はしないが、家で普通に買ってくる気軽に口に入るマグロよりは「もっと美味しいお魚があるよ」と言っても「ボクはマグロが好き」と言う。ふっしぎー。人それぞれだし、ライバルが減るのは良いが「美味しい方が良いじゃん」と残念な気持ちは消えない。といって『美味しいマグロ』はなかなか手が出ないしね。


 「やっぱりマグロかなあ。」

 「じゃあ青森だな?大間か」

 「勉強嫌いだし、丁度いいね。体鍛えとけば。高校も行かなくていいんじゃない?」

 「ボクは勉強嫌いじゃないよ!苦手なだけ。それに高校は行っときたいよ。」

 「え?!そうなの?びっくり。」

 「高校は流石に。みんな普通に行くじゃん。」

 「じゃあさ、海洋高校とかいいんじゃない?」


 海洋高校とは新潟県立海洋高等学校。ヒスイで有名な糸魚川市にある。糸魚川市は縦に長い新潟県の下の端っこで、「糸魚川の海は長野の海」と長野県の人に言われるくらい、感覚的にほぼ長野(私見)。多くは大学進学を目指す訳ではないので偏差値もそれなりで、海洋実習とか缶詰作ったりとかカリキュラムは楽しそう。


 「へー、そんなのあるんだね。確かに面白そう。」

全然よく考えてなさそうなコメントだがとても三男らしい。

 「船舶免許は必要だろうしあんまりバカもダメだと思うけど、とりあえず漁師のお家にお婿に入れるようにカッコ良くならねばね。腹筋は割っときたいよね。」

 「ボク割れてるよ。」

 「お前のは皮下脂肪が付いてないだけ。胸筋も腹筋も付いてないし、まだ小ちゃいからそんな筋肉付けなくていいよ。これからね。」


 中1くらいまではこんな感じ。

 「サンサンは勉強が嫌いなんじゃないよ!ただ出来ないだけ。」

色んなシーンでこのフレーズが使われるようになった。ちょっとづつアレンジされ、多分一生言われる。


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