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三兄弟  作者: 一二三


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32/35

次男の入寮 −4

 狭い小路の先にやっと辿り着いた其処は、駐車スペースと思われる凸凹と整地されていない空き地。2台停めてある車から、荷物の出し入れに困らない程度離れた場所に駐車して降りた。とりあえず荷物は置いたまま、上履きだけ持って行く。

 足元には枯れ葉と枝が積もり、一歩踏み出す毎にカサカサ、パキリと音がする。すぐ近くにも奥の方にも大きな木があって、葉の無い枝の隙間からコンクリートの建物がのぞいている。今はまるっきり冬の終わりという様相だけれど、新緑の頃はまた全然感じが違うんだろうな。

 何棟かあるようで、案内表示に従って小道を進むと、苔むした大木が2本並んだ奥に大きく寮名を掲げた看板とひっそりした玄関が目に入った。


 「アジトだ。」


 秘密結社のアジト。秘密基地。そんな素敵なワードが頭の中をぐるぐる回る。

 「これは、あれだね。アジト感、パねえ。ってやつ?」

 「ママ、声大きい。失礼。」

 「あ、ごめん。カッコよくてつい。」

玄関前で漏れた言葉に次男の注意がとんだ。褒め言葉には、ならないかな?苦しいか。

 玄関脇にはぐしゃぐしゃに丸められたブルーシートやベニヤ板、シャベル等色んなものが積んである。置く場所に困ったら外に置くよね。分かる。自宅だったらしないけど。

 「失礼しまーす。」

と元気目に声をかけつつ中に足を踏み入れる。ちなみに玄関の扉は全開だったのでそのまま。


 通りすがりの寮生の方に「こんにちは」と声をかけてもらったのでご挨拶し事情を話すと、少々お待ちを、と奥に入って行った。待っている間つい周りを観察してしまう。玄関入って左手にズラッと下駄箱が並んでいるが、その前には大量の段ボールが乱雑に積まれていて、そのまま使えそうな下駄箱は殆ど無い。『段ボールの回収は何曜日』とか書かれた貼り紙があるので回収待ちらしいのだが、どうして各自出す時に適切な大きさに畳んで縛るということをしないのだろう。これだけの量の段ボールの山を初めて見るが、これだけあっても縛って纏めたものが一つもないという事はコレが推奨の出し方なのだと思われる。不思議。

玄関には段ボール以外にもとにかく沢山の物が立て掛けてあったり、積んであったり。お掃除道具や遊具、一見して何かわからない物と多種多様。枯れ葉もかなり入り込んでいる。壁にはいたる所に貼り紙。なんか楽しー。


 「お待たせしました。院生の〇〇です。二君ですね、宜しくお願いします。じゃ、簡単に寮内の説明とお部屋へご案内しますね。あ、土足で大丈夫ですよ。」


 スマホを片手に出て来た彼は、先ほどのご挨拶した人だった。てっきり担当の方を呼びに行かれたのだと思っていたら、準備の為だったらしい。改めて挨拶し、少々迷ってやはり靴を履き替える。見れば夫も次男もやはり持参した上履きに履き替えていた。やっぱり、いきなり土足はハードル高いよね。


 「ここ、荷物溜まってます。宅配便などで届く荷物は各部屋じゃなくてこちらで受け取りなので、荷物届く頃だなーという時はこちらで探してください。」

 玄関入ってちょっと進んだら広めのスペース。一応壁に寄せてあるらしい大小様々な荷物を見て、説明を聞く。なるほど、新入生の入寮でどんどん荷物が溜まっているのね。各部屋じゃなくて全体で置き配だと、運送屋さんも助かるよね。でもこれだけの荷物の中から自分のを探すのはなかなか大変そう。


 荷物だまりから反対側に視線をずらすと、本やゲーム機などに囲まれたミニテーブルとローソファが。

 「こちらは談話スペースですね。他の寮からも遊びに来たりします。」

これがまた、絶妙に暗くて乱雑で良い感じ。隠れてサボってる感を楽しめそう。


 それから食堂、お風呂と進む。食堂はその昔キッチンで調理した物が提供されていたが今は使われておらず、しかし設備は一応使える状態、と。「使えますよ」と言われてもおいそれと手が出せないビジュアルだ。ぶっちゃけ汚いのだが、それ以上にとにかく物が多い。


 他の寮も共同で使うというお風呂は、思っていたよりも怖くなかった。入れそう。


 「じゃ、キッチン通って部屋のほういきますね。」

どんどん進む。寮は4階建で各階に共同のキッチンとトイレ、二人部屋という作りだ。

 キッチンは、まあ想像通り。の、ちょっと上を行かれた感じだ。私は短大時代学生だけ(管理の大人いない)の宿舎で暮らした事があるが、女子だけだった其処とは全く違う。

「使った食器等放置しないで下さい」といった貼り紙がバンバン貼られているが、流しにも調理台にも使ったお皿やお鍋が積んであり、開封した大袋の調味料が所狭しと並んでいる。塩塩塩、砂糖砂糖、その他諸々。これはアレだ、『開封して放置されてるのはなんかコワイから新しいの出そう。』といって古いのを勝手に処分するのも躊躇われて結局放置するパターン。分からなくもない。せめて自分が開封したやつだけでも管理すれば良いのにね。

 「調味料は寮費で購入しているので使ってください。」

ナルホド。良いのか悪いのか、びみょー。

食器や調理道具はある程度共同の物が揃っており、『使った後は片付けてね』となっているとの事。その後何台も並んだ冷蔵庫を見学し、いよいよお部屋へ。

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