次男の入寮 −3
合格発表後間も無くユニバーシティー・ハウス入寮可否の発表があった。入寮可。何でもウェブ上で見られて本当に便利な世の中になったものだと感心する。これ、以前はどうやってたんだろう。
「ニーニー、ユニバーシティー・ハウスに入れるよ!やったね。」
落ち着いて考えれば案外希望者も少ないのかもしれない。後期はそもそも20人しか募集してないんだし。何にせよ良かった。あとは手続きだな、なんて考えていると沈黙していた次男が口を開いた。
「僕はやっぱり1号寮(仮名)にしたいです。」
えー!?衝撃。今時の子なのに、アレ平気なの?そんなに留学生(日常生活に突発性英語)が不安?
「冬寒くて夏メチャクチャあっついよ?お掃除とか多分当番制だよ?」
「大丈夫、できるよ。生活してる人がいるんだから大丈夫だよ。」
ゴネる私たち夫婦を次男は根気強く説得した。
「面白そうだし、他には無さそうだよね。」
そもそも、自分だったら迷うことなく1号寮だ。「古〜い、きったな〜い」とは思っても昭和の空気というか、『見たことない世界』ではないのだ。多分、全然平気。お風呂はちょっと怖いけど、何ならシャワーだけで済ませればいいし。心配していたのはこれが次男だからだ。自覚が無いっぽいけど彼は十分に甘ったれた子どもだ。ユニバーシティー・ハウスは一応個室だが学寮は二人部屋のうえ、完全自主運営なら寮生同士の関わりも大きくなると思われる。彼のコミュ力で大丈夫なのか?
しかし、色々言ってはみたものの次男が折れる事はなく、「じゃあやってみれば。」に落ち着いた。
既に彼が寮とやりとりしていたので引き続き必要な手配と引越しの日程確認をするように言いつけた。出来るかな。
諸々の手続きと引越し準備を進める。この(3月最後の)土曜日は寮の(だいたい決まっている、という)部屋を見学。清掃し、必要かつ持ち込み可能な物を買い揃えたりしなければならない。
3月29日土曜日早朝、夫と私と次男とで仙台に向け出発。車は掃除道具や3〜4日分を残した衣料を詰め込んだ衣装ケース、四日後に移動する次男が持てなさそうな物で一杯だ。寝具などはネットで買って次男が入寮する前日までに寮に届くことになっている。
仙台。秋保温泉とか七夕とかで何度か訪れているが、如何せん昔。
若かりし頃の私は自分で運転しない車では起きていられず、友人達とのお出かけでもデートでも、車は『どこでもドア』だった。なので途中の風景がさっぱり分からない。近年になって年をとったせいかあまり眠れなくなってきているおかげで、仙台の景色に感嘆している。
自分達の走っている幹線道路のすぐ脇が小高い丘?山?なのだが、そこにみっちりニョキニョキと建物が生えている!
『とび出す絵本』をご存知だろうか。本を開くと挟み込まれた紙細工が起き上がってくる仕掛け絵本なのだが。
街があんな感じなのだ。とび出す街並み、3D。新潟県人には驚きの立体感。
新潟県といえば言わずと知れた越後平野。中心地は真っ平で端っこは山だけど本当に山。建物とか建てない。街中から見ると『のペーっと広がる街、街を抜けるとのペーっと広がる田んぼや畑、遠くに霞む山』という感じ。
「うわー、かっこいいねえ。起伏に富んだ地形、素晴らしい!」と大喜びしていたのも束の間。カーナビの言うがまま進んでいくと、「無理無理!絶対曲がれない」と思うような道を鋭角に「この交差点を左折です」とか。
高低差があるせいか道路の交差が直角ではなく、平らな幹線道路から斜めに登って行く。これが鋭角側の時が辛い。しかも山の方は道が狭い。新潟はね、除雪した雪を脇に置いとく必要から狭い道も実はそんなに狭くない。
「ニーニー、ここで免許取ったらどこでもいけるんじゃない?」
「絶対無理。」
カーナビ様の言うことを無視してグルグル回りながらやっとのことで寮に到着した。




