次男の入寮 −1
東北大学にももちろん寮がある。大きく2種類。
一つはユニバーシティ・ハウスと呼ばれる『国際的な人材の育成を目指す』8人1ユニットの国際混住型学生寄宿舎。必要な家具・家電製品完備で、管理会社が24時間365日清掃から非常時まで対応してくれる。教育的な施設なので入寮資格に地理的・経済的条件は無く、本人の熱い『入居希望理由書(つまり作文)』で決定される。
4ヶ所あって、紹介写真を見てもなかなか良い。お家賃は大体25,000〜30,000程度。
他方日本人学生限定で、入寮に地理的・経済的条件のある6つの学寮がある。古くは昭和45年、新しくは昭和57年建築の「これぞ!」感溢れる建物で、なんて言うか、ヤバかっこ良い。
お家賃は5つが衝撃の4,300円と同額に設定されている中、昭和45年築の寮だけはもはや異次元の700円。近所の駐車場の1日の駐車料金上限を最安で検索したら700円だった。何を根拠に算出してるんだろう。面白すぎて痺れる。
面白いのだが、こちらは写真が怖かった。湿気やカビで黒いシミが広がったお押入れやトイレ、ムカデの出るお風呂完備の古い官舎を渡り暮らした私と夫が見ても、ちょっと不安に感じるくらい。
部屋とかは別に良いのだ。問題はお風呂。写真のせいかもしれないが何か全体的に黒くて、そんなわけないよねと思いつつ「カビ?」とビビる。しかも清掃は寮生の当番制。子ども達に頼んだお風呂掃除の結果を考えれば、衛生面に不安を感じずにはいられない。いや、うちの子がダメダメなだけかもしれないけども。とにかく、色々不安だが黒い所から何か出てきそうで怖いのだ。
「やっぱこっちでしょ、ユニバーシティ・ハウス。留学生も一緒で楽しそう。強制的に異文化交流だね。」
と猛プッシュするも、意外に次男の反応はイマイチ。何故に?と問えば
「留学生かー、うーん。」
どうも日常生活に留学生が混ざる事に不安を感じるという事らしい。何か勿体無い気がするが、『ただでさえ初めて親元を離れての寮生活なので無理も無い。』と夫が理解を示す。どうせ不安なんだから要素が増えてもたいして変わんないじゃん、という私の意見は賛同を得られなかった。とはいえ、誰が何度見ても怖い浴場写真の圧力で何とか説得し、ユニバーシティ・ハウスの申請書類を提出した。
ちなみに一般選抜後期受験者の入寮応募締め切りは2月下旬で、前期の試験の直後。つまりこの「寮どうする?」のやり取りは東大入試直前までの話。
ユニバーシティ・ハウスは学寮の併願申請不可で、学寮を希望する場合は6つある内から第4希望まで申請。どちらも選考結果の発表は同日で3月下旬(合格発表の二日後だったかな)。
え?
じゃあユニバーシティ・ハウスに入れなかったらアパートとか探さなきゃって事?併願はダメでも選考に落ちたら学寮に応募できるのかと思っていたので焦って民間も探し始めた。
民間はピンキリなわけだが。
対象を大学生に限定して食事もついた寄宿舎っぽいのがお家賃7〜10万円くらいであって、そんなのも良いかもしれないと夫婦で検討している脇で何故か次男の食い付きはイマイチ。まあ、合格どころか試験もまだだもんね。
「読ませてもらってないけど、きっとニーニーの志望理由書で痺れているはず。」
「いや、そんなわけないから。」
私の『褒めて育てる』は次男の前に無力。
東北大学の合格を確認後。
さて、じゃあ本気て住む所も検討してもらおうか、というタイミングで徐に次男が切り出した。
「僕、学寮に入りたいんだ。」




