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三兄弟  作者: 一二三


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次男の大学受験 −3

 高2の冬になると、どんな心境の変化か一応東大志望になっていた。次男はあまり考えている事を話さないのでよく分からない。


 話しだすのが遅く、問題なく会話出来るようになってからもあまり得意ではない様子の次男に、私は随分くどくど小言を言っていた気がする。


他者と良好な関係を築くのにコミュニケーションが欠かせないこと。

言葉以外のコミュニケーションは正確性が低すぎること。

会話では発する言葉以外に多くの事が伝わり良くも悪くも関係に大きな影響を与えること。

言葉にして伝えない限り、自分の気持ちや思考が正確に理解される事は絶対に無いこと。

「分かってくれない」のが当たり前。分かってほしい時はわかる様に伝える努力をするべきということ。


 内容自体は極普通に子どもに教えるようなことなのに、文章に整理すると怪しく感じるのは何故だろう。とにかく次男にはことある毎にこんな事を言っていた。その位話さなかったから。

 「例えばさ、ニーニーはあんこ好きじゃん。ただおやつに『おはぎ』買ってって言われても買わないけどさ、『ママ、僕今日ね、お買い物の時にお店ですっごく美味しそうなお萩を見つけたの。あんこの粒がツヤツヤで・・・』とかって熱く語られちゃったらさー、買っちゃうだろ。」

と、一緒にお買い物に行った際に彼が釘付けになっていたブツを出してみたりもした。大喜びしてたんだけどなー。


頑張らないと分かり合えないと言い続けた結果、多分彼は頑張らない方向に舵を切った。様な気がする。


 前期は東大理I、後期は東北大物理を受けるということで一応落ち着き、3年春からのZ会受講講座も調整。長男の時もそうだったがやはり学校の勉強だけで時間が足りないということで、かなり削った。

「ニーニーさ、塾とか予備校とか、行きたかったら行って良いんだよ」

「いや、塾はいいかな。移動もめんどくさいし。」

面倒臭そうに言う。周りの子はみんな行ってるだろうに不安になったりしないのかと不思議に思うが、嬉しくも感じる。いやお財布的にではなく。

 


 高3目前の春休み。

 次男は誕生日を過ぎて恒例の『ブチョーとお誕生日鰻デート』に出掛けた。

ブチョーとは私の姉だが、長男が「おばちゃん」を上手く発音できず「バチョン」を経由して「ブチョ」→「ブチョー」に落ち着いた、我が家で伯母を意味する言葉である。今では東大生の長男も含め、兄弟揃って私の姉を「新潟のブチョー」、夫の姉を「水原(地名)のブチョー」と呼んでいる。可愛らしい。

 「お誕生日鰻デート」は次男が小学校一年生の時に始まった。きっかけは彼が姉と一緒にいる時にテレビか何かで目にした鰻に、キラキラした目で祈るように指を組んで「わぁ。ボク、これ食べてみたかったんだあ。」とうっとりしていた(姉談)こと。

私は鰻は好きだが大人になってからどうしても食べたくて食べに行ったのは3回くらい。結婚してからは夫が嫌いなので家族で食べた事がなかった。きっとテレビなどで鰻重とか見る度にうっとりしてたんだろうな。

 これをみた姉が「じゃあ誕生日のプレゼントに鰻食べに行くか!」となって、彼は今も年に一回伯母と誕生日に鰻を食べに行く。6歳から、先日の19歳の誕生日まで毎年同じお店に一途に通い、「鰻の子」と呼ばれているらしい。


 「ただいま」

帰ってきた次男には必ず「おかえり。美味しかった?」と声を掛けるが、大体「うん、美味しかったー。」で終わる。そして後日姉からその日の様子を聞くことになるのだ。

 

 お店の人達はいつも通り誕生祝いに食べに訪れた事を喜び、「大きくなったね」と食事に一品う巻きをつけて歓待してくれた。鰻も美味しく食事を楽しんでいた所で、合格祝いで食事に来たらしい家族が近くの席に着いた。常連らしくお店の人達も親しそうに話している。

 「医学部合格おめでとう」「一年間よく頑張った」「凄いですねー」とか聞こえてきたから一浪して新潟大学医学部に合格したのだろう。家族やお店の人からの祝福にしかし当の人物は

「いやスゴくなんて。僕の友達なんて全然勉強なんてしてないのに、ずっと一番でストレートで東大理Iに合格して。ホント凄いんです。僕なんて」とか言っている。


 「それを聞いたニーニーがさー、声を顰めて『お兄ちゃんの事だ!』って。なんかイチーチの学年の子で見たことあるって言ってて、『やっぱりお兄ちゃんは僕とは違う』みたいな事言い出してさー。ほぼほぼ食べ終わってて良かったわ。」

バイト帰りに所用で姉の家に寄って、お誕生日デートの顛末を聞く。

「全然勉強してないなら別人じゃね?イチーチは勉強しかしてないが?」

「してない様に見えるんじゃないの?塾とか言ってないし、なんかフワフワ楽しそうだし」

「なんで『おめでとう』って言われてそんな事言ってんだろうなー、台無しじゃん。コドモめ!」

「子どもだからな。」

私は次男の『年に一度のお楽しみ』を台無しにしたこともさる事ながら、一年間支えた我が子の合格を喜び労う家族がこれを聞いてどんな気持ちだろうと腹立たしかったが、姉はサラリと子どもはそんなもんだと言う。

えー、イヤだな。コドモ。


 しかし心配したほどの影響は無かったようで、3年になった次男は変わらずマイペースにガリガリしていた。

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