キレイなお姉さんとベット
シャワー室から出てきたアイカは、 さっきまでの混乱が嘘のように、妙に静かな顔をしていた。
まるで悟りを開いた僧侶のような落ち着きだった。
サクナ「アイカ、スッキリした?」
アイカ「……はい。とても」
サクナは大きなベッドをぽんぽんと叩き、手招きする。
サクナ「じゃあ、寝よっか。ベッドひとつしかないけど」
アイカ「……南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏」
アイカはまったく動揺することなく、 すっとベッドに横になった。
サクナはくすっと笑いながら、 アイカの隣にそっと寝転がった。
サクナ「南無って……何?」
アイカ「……南無です」
サクナ「ふふ……アイカって、ほんと面白い」
サクナは少し間を置いて、 ふと思い出したように口を開いた。
サクナ「そうだ、アイカにお礼ができてなかったね」
アイカ「お礼?魔王倒したのはお前だろ」
サクナ「ちがうよ。魔王軍四天王ユウキュの件」
※魔王軍四天王ユウキュの能力“憑依”で体を乗っ取られたサクナを 助け出したのはアイカたちだった。
アイカ「ああ、あの変態!!」
アイカ「憑依されてたとき、記憶とかあったの?」
サクナの表情が一瞬で曇った。
さっきまでの柔らかい笑顔が消え、 怯えたような影が瞳に落ちる。
サクナ「……聞きたい?」
その声は小さく、震えていた。
強い彼女が、ほんの少しだけ弱さを見せた瞬間だった。
アイカはサクナの顔を見た瞬間、 何があったのかを察した。
アイカ「大丈夫です」
それ以上聞かないという選択が、 サクナを守ることだとわかったからだ。
サクナはほっとしたように息をつき、 アイカの隣で静かに目を閉じた。
少しして、 サクナはぽつりと、まるで祈るような声で言った。
サクナ「……私を魔王軍から助けてくれて、ありがとう」
アイカ「当たり前のことをしただけだ」
サクナは驚いて目を開く。
サクナ「……あたりまえか」
サクナは小さく笑った。
その笑顔は、どこか泣きそうで、どこか嬉しそうだった。
サクナ「獣人ちゃんたちを故郷に帰すのも、あたりまえ?」
アイカ「あたりまえだ」
サクナ「……そうか。すごいね」
その声だけでわかった。
サクナは本当に嬉しかったのだ。
サクナ「アイカ?」
返事はない。 アイカはもう眠っているのだろう。
サクナとアイカは同じベッドの中で、二人は横並びになって向かい合っている。
サクナはアイカの顔を覗き込んだ。
年の割に幼く見える顔。
異世界人はみんな幼いのかな。どこか守りたくなるような幼さがあった。
サクナは指先で、 アイカの額にかかる髪をそっと払った。
その仕草は、まるで壊れ物に触れるように優しかった。
サクナ「……ありがとう、アイカ」
その言葉は、眠るアイカに届かなくてもよかった。
サクナはほんの少しだけ顔を近づけ、 アイカの額にそっと触れるように口づけた。
サクナ「……おやすみ」
サクナは静かに目を閉じた。
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