カッコつけるのは、君には似合わないよ
勇者アイカは、猫獣人の少女の頭をやさしくポンポンと叩いた。
アイカ「お前たちは、俺たちが責任もって故郷へ送り届けてやるよ」
アイカ「だから、もうこんなくだらないことするな」
猫獣人の少女は目を丸くし、尻尾をぴんと立てた。
猫獣人の少女「わ、わかったニャー……! あ、あ、ありがとうニャー……!」
少女は何か言いたそうに、もじもじと指を合わせている。
アイカ「どうした?」
猫獣人の少女「こんなこと……言っていいかわからないニャー……」
アイカ「うん?言ってみな?」
猫獣人の少女「怒らないニャー?」
アイカ「多分」
少女は覚悟を決めた顔で、ぎゅっと目をつむった。
猫獣人の少女「ナルシストすぎて、ゾワゾワしたニャー!! こ、こ、金輪際やめてほしいニャー!!」
アイカ「お前……お前……ごめんなさい!」
猫獣人の少女「わかればいいニャー!! はやく故郷まで護衛するニャー!!」
アイカはそっと少女を無視して歩き出した。
猫獣人の少女「どこ行くニャー!! 待つニャー!!」
猫獣人の少女は慌ててアイカを追いかける。
王城の一室にて。
アイカによって、王城の一つの部屋に勇者パーティーが集められた。
バイオレット「どうしたんだ?ん?なんだその獣人たちは?」
アイカ「ああ、説明する」
アイカ「まずはじめに、こいつらなんだけど。 バイオレットとマイマイと出会う前に――」
アイカ「俺とサクナが奴隷市場を崩壊させて、解放した獣人の子どもたちなんだ」
マイマイは目を輝かせた。
マイマイ「アイカさん、サクナさん……すごいです! 正義の味方すぎです!」
マイマイは興奮していた。
彼女も囚われていた過去がある。 獣人たちの気持ちが痛いほどわかるのだ。
サクナは驚き、そして少し困った顔をした。
サクナ「私、ジミーに命令して……解放した子供たちはみんな親の元か孤児院に送ったはずなんだけど……」
アイカ「獣人の国は魔族が支配していたから、故郷に送れなかったらしい」
サクナ「なるほどね……」
アイカは深く息を吸い、仲間たちを見渡した。
アイカ「こいつらを故郷へ送り届けてやりたい」
アイカ「みんな。お願いだ。手伝ってくれ」
バイオレットは両手の拳をぶつけて、ニッと笑った。
バイオレット「了解した」
マイマイは嬉しそうに胸を張る。
マイマイ「さすがです、アイカさん! ケガは私に任せてください!」
ナギは胸を押さえ、少し照れながら言った。
ナギ「アイカくんは、いつも人のために動くねぇ…… どこまでもついていくよ」
アイカはナギに微笑む。
サクナは目を輝かせていた。
サクナ「また君たちと冒険ができるのか……ワクワクするねぇ!」
アイカ「決まりだな」
獣人の子どもたちも歓声を上げた。
親に会えることに喜び、 故郷に帰れることに涙を流す子もいた。
王城の廊下。
勇者パーティーの話し声が聞こえる部屋の前で、 ジミーは扉に耳をぴったりとくっつけていた。
ジミー「……まずい。まずいぞ……!」
中から聞こえてくるのは、 “獣人の子どもたちを故郷へ送り届ける”という勇者の宣言。
ジミー「このままじゃ……勇者と姫が結ばれない……!」
ジミーは額に手を当て、震えながら考え込む。
ジミー「どうする……どうする…… ハニートラップは失敗したし…… 猫のやつは正直すぎて全部バラすし…… 」
ジミーはガタガタ震えながら、
ジミー「まずい……このままじゃ…… 王様に顔向けできない……!!」
ジミー「……こうなったら!!」
ジミーは拳を握りしめ、震える声で叫んだ。
ジミー「国中に勇者と姫の結婚を広めて…… 無理やり結婚させる……!!」
ジミーの顔は悪役そのものだった。
ジミー「この作戦しかない…… これしかない……!!」
ジミーはニヤリと笑い、 廊下を走り去っていった。
その背中は、 “絶対にロクなことをしない男”のそれだった。
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