ドキドキ、恋愛大作戦!!
王国の衛兵ジミーは、夜の詰所でひとり腕を組み、深刻な顔で考え込んでいた。
王からの命令はただひとつ。
「勇者をハニートラップにかけろ」
ジミーはこの命令を聞いた瞬間、胸の奥で黒い喜びが湧き上がった。
あの憎たらしい勇者を陥れる絶好の機会だ。
ジミーにはアイカへの恨みが山ほどあった。
数か月前、サクナ姫と勇者アイカが奴隷市場を崩壊させたあの日。
その後始末を全部押しつけられたのが、他でもないジミーだった。
奴隷組合と抗争になりかけるわ、 奴隷にされた少年少女を親の元へ返すために寝ずに探し回るわ、 書類は山積み、責任は押し付けられ、ジミーは数日間まともに寝られなかった。
ジミーは机に突っ伏し、深いため息をついた。
ジミー「なんで、貴族の私が奴隷の面倒を見ないといけないんだ……」
ジミー「もう二度とごめんだ……」
その恨みが、今まさに燃え上がっていた。
ジミーは腕を組み、勇者の“好み”を思い出そうと記憶を探る。
ジミー「たしか……背が低くて……幸が薄い顔で……人生で一度も報われたことがなさそうで……」
そして、ひらめいたように目を開く。
ジミー「ああ、ロリコンだったよな。たしかあいつ」
※勇者はロリコンではありません。
ジミーは勢いよく立ち上がった。
ジミー「ちょうどいいのがいるなぁ!!」
廊下を走り抜け、城の一室へ向かう。
扉を開けると、複数の獣人の少年少女たちがいた。
彼らは、サクナ姫とアイカが救い出した元奴隷たちだ。
獣人は亜人の中でも差別される種族で、ジミーは獣人を同じ人間だと思っていない。
それでも、姫の命令だったため、親の元へ返そうと努力していた。
しかし獣人の国は魔族に支配されており、どうすることもできなかった。
部屋の空気は重い。 子どもたちは不安そうに身を寄せ合っている。
その中で、猫獣人の少女が、耳をぴんと立てながら恐る恐る声をかけてきた。
猫獣人の少女「ジミー様……勇者様が魔王を倒したニャ……」
猫獣人の少女「私たち……獣人の国に帰れるのかニャ……?」
希望を込めた瞳。
しかしジミーは、その願いを一瞬で踏み潰すように少女を指さした。
ジミー「おまえでいいや」
猫獣人の少女はびくっと震え、尻尾がぴんと立った。
ジミーは少女の前にずいっと立ち、命令を下す。
ジミー「おい。命令だ。勇者にハニートラップしてこい」
猫獣人の少女「ハニートラップ……ってなんニャ……?」
ジミーは鼻で笑い、面倒くさそうに肩をすくめた。
ジミー「しゃあないな。いちどだけ説明するぞ」
ジミーは妙に得意げな顔で語り始める。
ジミー「ハニートラップとは、恋愛感情や性的関係をエサにして相手を油断させ、秘密の情報を聞き出したり、弱みを握って脅したりするスパイ(諜報)活動のことです。
多くの場合は、女性の工作員が政治家や軍関係者、外交官などの男性をターゲットにして仕掛けます。」
猫獣人の少女は首をかしげた。
猫獣人の少女「よくわからないニャー……? もう一度おしえるニャ……?」
ジミーはイラッとした顔で言い放つ。
ジミー「勇者を誘惑して、恋人になってこい」
猫獣人の少女は顔を真っ赤にした。
猫獣人の少女「ど、どうやってニャー……?」
ジミー「知らん!! 適当にやれ!!」
猫獣人の少女「ニャーーーーー!!」
部屋に響く悲鳴。
他の獣人の子どもたちもびくっと震えた。
ジミーは満足げにうなずき、拳を握りしめる。
ジミー「よし。これで勇者は終わりだ……王様も喜ぶ……サクナ姫も幸せ……」
まるで世界を救ったかのような顔で、ジミーはひとり頷いた。
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