友よ、さらば
メイメイの体がふわりと揺れた。
輪郭が薄くなり、風に溶けていくように消えかけている。
メイメイは一度死んで幽霊になり、この世界をさまよっていた。
理由はただひとつ。
産みの親である魔王が人間を滅ぼそうとしていることが、心残りだったからだ。
しかしその魔王は、サクナ姫の剣によって倒された。
メイメイがこの世界に残る理由は、もうなくなった。
最初にその変化に気づいたのはナギだった。
ナギ「めいめい……どうしたの?」
その声に、アイカたちも振り返る。 メイメイは静かに笑った。
メイメイ「お別れの時がきたようだ」
アイカは眉をひそめる。
アイカ「今回は本当に消えるのか? 前も、すぐ戻ってきたよな」
メイメイは首を横に振った。
メイメイ「今回は本当です」
いつもの軽さがなく、体から淡い光がこぼれ始める。
メイメイ「みんなから、お別れの言葉と感謝を聞きたいなぁ」
仲間たちは息をのむ。
メイメイ「じゃあ、アイカ。君から」
突然の指名に、アイカは固まった。
アイカ「……え?」
メイメイ「さぁ」
アイカ「そんな急に言われても……」
少し考えて、アイカは言った。
アイカ「……向こうでも元気で過ごせよ」
メイメイはすぐにツッコむ。
メイメイ「あの世で元気って、ばかなのかい?」
アイカ「いや、他に言いようが……」
メイメイはため息をつき、次へ向く。
メイメイ「次、ナギちゃん」
ナギは勢いよく手を挙げた。
ナギ「はい! 記憶を戻してくれてありがとうございました。一緒に冒険できて楽しかったです」
メイメイ「うんうん、それで?」
ナギは唇を震わせる。
ナギ「……寂しいです」
メイメイ「ごめんね。それで?」
ナギ「えっと……あの世でも頑張ってください」
メイメイは満足そうにうなずいた。
メイメイ「合格」
メイメイ「次はバイオレット。」
バイオレット「友よ、安らかに眠れ」
メイメイは嬉しそうに笑った。
メイメイ「ふっ」
メイメイ「続いてマイマイ。」
マイマイ「囚われていた私を助けてくださり、ありがとうございました」
メイメイ「それで?」
マイマイ「……寂しくなります」
メイメイ「まぁ、合格かな」
メイメイ「次、サクナ」
サクナは一歩前へ出て、ためらいなく言った。
サクナ「え? 私、あなたのこと嫌いです」
処刑場が凍りつく。
アイカ「おいおいおいおい!!」
ナギ「サクナさん!?」
バイオレット「このタイミングでそれ言う!?」
マイマイ「空気読んでください!!」
メイメイはぽかんとしたあと、ゆっくりとサクナを見る。
メイメイ「……理由、聞いてもいい?」
サクナは真顔で答えた。
サクナ「あなた、魔王の手下ですよね。人類の敵です。」
メイメイ「そっかぁ……」
メイメイは肩を落とした。
それでも、仲間たちを見回し、胸の前で手を組む。
メイメイ「じゃあ、次は僕からみんなへ感謝を伝えるねぇ」
体の光が強くなり、声は優しく、少し寂しげだった。
メイメイ「アイカ。君が“友達”と言ってくれたこと、本当に嬉しかったよ。 それで、ひとつお願いがある」
アイカ「……なんだ」
メイメイ「魔王が復活したのは、魔界に伝わる“復活の儀式”のせいなんだ。 魔王を復活させるには、たくさんの魔族の命を捧げる必要がある」
アイカ「じゃあ、魔族が儀式を使えば何度でも復活するのか」
メイメイ「魔界は枯れた土地で、まともに暮らせない。 だから魔族は人間界を求めて戦争を起こしてきた。 だから……魔族に儀式を使わせなければいい」
メイメイは続ける。
メイメイ「今、ロウナ王国では魔族と人間が共存する国を作ろうと、タイガー王が頑張っている。 もしその取り組みが潰されて魔族が魔界に戻れば……また魔王を復活させるだろうねぇ」
メイメイはアイカをまっすぐ見つめた。
メイメイ「お願いだ。タイガー王と一緒に、魔族と人間が共存できる国を作ってほしい」
アイカは拳を握りしめる。
アイカ「荷が重いよ」
メイメイ「信じているよ」
メイメイはナギを見る。
メイメイ「ナギちゃん。魔王さまが迷惑をかけてごめんね」
ナギ「そんな……めいめいのせいじゃないよ」
メイメイは優しく笑った。
ナギ「今度こそ、アイカと幸せに暮らしてね」
メイメイ「……うん」
次はバイオレット。
メイメイ「友よ、元気でな」
バイオレットは涙をこらえた。
バイオレット「ああ……任せろ」
そしてマイマイ。
メイメイ「マイマイ」
マイマイ「はい」
メイメイ「……特にない」
ナギ「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
アイカ「そこは何か言ってやれよ!」
最後にサクナへ。
メイメイ「僕だって……お前のこと嫌いだ」
メイメイ「顔が良くて、生まれがいいだけで偉そうにしやがって、調子乗るなよ。」
メイメイはふっと笑った。
体は光に包まれ、輪郭がゆっくり消えていく。
メイメイ「サクナ以外のみんな……元気でね!!」
メイメイが消えて、成仏した。
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