死ぬのはどっちだ。魔王?勇者?
王は驚愕していた。
娘であるサクナが男である勇者に告白したのだ。
サクナは王の跡を継ぐため、幼いころから剣術と教養を叩き込まれ、
男の子の服を着て、男として育てられてきた。
本当は、女の子として自由に生きてほしかった。
だが、サクナは「王になるため」に自分を偽り続けてきた。
そんなサクナが、処刑台の上の“勇者アイカ”に向かって叫んだ。
サクナ「勇者は僕の大切な人だ。僕は勇者と一緒に生きるんだ」
告白以外の何物でもない。
王 (これ……孫の顔を拝めるチャンスじゃないのか……?)
王は目を閉じて必死に考える。
王 (だが勇者は城で暴れ、今まさに処刑されようとしている…… なんとか止めないと……しかし処刑と言い出したのは私だ……)
葛藤しながら目を開けた王は、そこで異様な光景を目にした。
勇者アイカが二人いる。
処刑台の上で、アイカに化けて記憶を失っている魔王がぽつりとつぶやく。
魔王「おれが……おれがいる」
本物のアイカが叫ぶ。
アイカ「おれが本物だ!!!」
処刑場は一瞬で大混乱に陥った。
国民「おい、勇者が増えたぞ!」
国民「どっちが本物なんだ!」
勇者アイカの仲間であるサクナたちですら、状況をまったく理解できていなかった。
バイオレット「どういうことだ!!!」
マイマイ「ええええええええええええ!!」
サクナは先ほど突然現れた“もう一人のアイカ”を見る。
その後ろにはナギとメイメイがいる。
サクナ(あ、メイメイがいるこっちが偽物だ)
※本物のアイカである。
王は混乱の中、声を張り上げた。
王「本物のアイカなら、一緒に旅をしていた仲間。サクナ、聖女殿、杖の人との思い出を語れるはずだ!」
サクナ「そうですね!」
バイオレット「杖の人って、ひどくない」
王「ではまず……」
王「サクナと結婚できるか?」
処刑場「………………」
サクナ「お父様ぁぁぁぁぁぁぁ!?!?」
サクナは顔を真っ赤にして叫ぶ。
王「大事な話なんだ。黙ってなさい。」
王は妙に真剣である。
アイカはナギを見つめた。
アイカ「俺は、ナギ一筋だから。」
ナギは頬を染めてアイカを見返す。
ナギ「アイカ君……」
王「あやしいなぁ」
王は舌打ちした。
魔王はその様子を見て、心底嫌そうに吐き捨てる。
魔王「反吐が出るぜ」
魔王は地面に唾を吐いた。
王「そっちの勇者はどうなんだ?」
魔王は胸を張って答えた。
魔王「私は、女なら基本だれでもいいです」
王「………」
処刑場「………………」
処刑場の空気が一瞬で凍りつく。
王「よし、次だ」
王は気を取り直し、もう一人の勇者、本物のアイカへ向き直る。
王「君の好きな女性のタイプは? 具体的に言え」
アイカは真顔で答えた。
アイカ「幸が薄い顔。自分より背の低い女性」
王「おまえ、偽物じゃないか?」
即答だった。
サクナ「なんで!?」
王「娘のことを何も分かっていない」
サクナ「私のことを基準にしてるんですか!?」
魔王はすかさず口を挟む。
魔王「できれば美人がいいです」
王「本物かも?」
王は魔王を見つめる。
魔王は自信満々にうなずいた。
王「………………」
王は長い沈黙のあと、本気で悩み始めた。
そして、ついに答えを出した。
王「よし、あとから現れた勇者が偽物だ。殺せ」
サクナ「えええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!」
アイカ「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
サクナとアイカは同時に叫んだ。
サクナ「お父様!! 私にも質問させてください!」
王「……わかった」
サクナは深く息を整え、真剣な瞳で二人の“勇者”を見つめた。
サクナ「あなたが、私と初めて出会った場所はどこ?」
アイカが答えようとした瞬間、サクナはアイカに向かってウィンクする。
そして、処刑台に固定された“もう一人のアイカ”を指さした。
サクナ「そっちから答えて」
魔王は自信満々に言った。
魔王「魔王城?」
サクナはすぐに本物のアイカへ向き直る。
サクナ「あなたは?」
アイカ「賭博場の外」
サクナは柔らかく微笑んだ。
サクナ「君が本物だね」
次の瞬間、サクナは剣を抜き放ち、処刑台へ跳び上がった。
一閃。
魔王の首が落ち、転がりながら醜い魔族の顔へと変わっていく。
魔王は討伐された。
国民は息を呑み、誰もがその場で動けなかった。
サクナは剣を収め、アイカの方へ静かに振り返る。
アイカはようやく、胸の奥の緊張がほどけていくのを感じた。
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