39.ロウナ王国
魔王城。
かつてロウナ王国があった場所。
魔王が侵攻を始めたとき、真っ先に滅ぼされ、その城は魔王の城となった。
その魔王城に到着した、アイカ達は息をのんだ。
アイカ「……どういうことだ」
そこにあるのは、魔王城ではなかった。
崩れ落ちたはずのロウナ王城が、
まるで時間を巻き戻したように立ち上がっている。
さらに異様だったのは、
人間と魔族が、同じ街で肩を並べ、瓦礫を運び、家を建て直していた。
サクナ「……ありえない」
マイマイ「ロウナ王国が……復興してる?」
バイオレット「しかも、人間と魔族が一緒に」
三人の声は震えていた。
目の前の光景は、常識では理解できないものだった。
アイカはロウナの民に声をかけた。
アイカ「……どうして、ロウナ王国が復活しているんですか」
ロウナの民は誇らしげに微笑んだ。
ロウナの民「タイガー王が魔王を倒してくださったんです。そして演説で人間と魔族が共存する道を選ぶ、と」
アイカたちは息をのむ。
ロウナの民は語り始めた。
【ロウナの民の回想】
魔王が倒れたという噂が広まり、ロウナ王国の元国民たちは故郷へ戻ってきた。
その中心に立っていたのは、ロウナ王家の生き残り、タイガー王だった。
広場に集まった群衆の前で、タイガー王は声を張り上げた。
タイガー王「魔王の恐怖は消えた。わたしが倒した」
ざわめきが走る。
「本当なのか?」
「信じられない」
「あなたは勇者じゃないはずだ」
疑念が渦巻く中、タイガー王は汗をにじませながらも言葉を続けた。
タイガー王「君たちが今、生きてここに立っている。それが証拠だ」
そのとき、元近衛騎士が前に出た。
元近衛騎士「タイガー王。私は王家直近の近衛騎士だったが……あなたを知らない。 あなたは嘘をついている。王家の血を引いている証拠を見せろ」
空気が張りつめる。
タイガー王「……第一王子と魔族の子だ」
騎士は息をのんだ。
元近衛騎士「まさか……あの噂がほんとだったということなのか」
群衆がざわめき、恐怖と困惑が入り混じる。
「魔族とのハーフ?」
「そんなことありえるの?」
「でも……あの第一王子なら……」
タイガー王は一歩前に出た。
タイガー王「おれは人間と魔族のハーフだ」
その言葉は群衆を凍らせた。 拒絶の気配が広がる。
タイガー王は深く頭を下げた。
タイガー王「……怖いのはわかる。魔族と聞けば誰だって身構える。 だが、聞いてほしい。おれは“魔族の血を引いているからこそ”魔王を倒せたんだ」
群衆が息をのむ。
タイガー王「人間だけでも、魔族だけでも、魔王には勝てなかった。 おれはその“間”に生まれたからこそ、魔王の力を見抜き、弱点を突けた」
タイガー王「つまり、おれの存在そのものが、この国を救った証拠だ」
ざわめきが恐怖から困惑へ変わる。
タイガー王「魔族の血があるからといって、人を襲うわけじゃない。 おれはこうして、みんなの前に立っている。誰も傷つけていない」
胸に手を当て、タイガー王は続けた。
タイガー王「おれはロウナ王家の血を継いでいる。 この国を守りたい気持ちは、誰よりも強い」
タイガー王「人間と魔族が争い続ければ、また国は滅びる。 だが、手を取り合えば……二度と滅びない国を作れる」
そして再び深く頭を下げた。
タイガー王「どうか、おれにチャンスをくれ。 ロウナ王国を、もう一度立て直すために」
話し終えたロウナの民は、どこか誇らしげに微笑んだ。
ロウナの民「……すごく感動しましたよ」
ロウナの民「タイガー王は……素晴らしい方です」
その無邪気な言葉に、アイカたちは返す言葉を失った。
ロウナの民「では、失礼します」
軽く頭を下げ、民は去っていく。
しばらく沈黙が落ちた。
マイマイ「……信じられない。演説ひとつで、戦争の傷が消えるわけないのに」
バイオレット「メイメイの記憶操作じゃないのか?」
サクナは眉をひそめた。
サクナ「……おそらく、洗脳だと思う」
バイオレット「でもさ、それって本当に“悪いこと”なのか? 見ろよ。平和だぜ。人間も魔族も笑ってる」
その言葉に、サクナとマイマイは言い返せず黙り込む。
空気が重く沈む中、アイカが口を開いた。
アイカ「……そんなことより、ナギを探すのが先だろ」
その声は震えていたが、迷いはなかった。
サクナ「そ、そうだね……!」
サクナは気を取り直すように頷いた。
サクナ「よし。このロウナ王国で、まずはナギちゃんと魔王の情報を集めよう」
サクナ「二手に分かれよう。戦闘の面からアイカとバイオレット。私とマイマイ。」
バイオレットが腕を組む。
バイオレット「いいや。俺とマイマイ、アイカとサクナで」
サクナ「だ、大丈夫? バイオレットとマイマイで戦闘になったら……」
バイオレットは首を横に振った。
バイオレット「いいや。ナギが誘拐されてから、アイカはずっと落ち着いてない。 判断力も戦闘力も高いサクナがそばにいたほうがいい」
アイカは驚いたようにバイオレットを見る。
サクナは照れたように頬をかいた。
サクナ「……うん。任せて」
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