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37.記憶の上書き

魔王「じゃあ、魔王城に戻ろうか」


メイメイ「待ってください……最後に、アイカたちに……」


魔王は無言で指を鳴らした。


パンッ。


乾いた音が、空気を裂く。


魔王の特殊能力である瞬間移動。

ちなみに、魔王軍ハラヤがサクナ姫を誘拐したときにもこの能力を使っている。


魔王城へ移動した。


そこに、ナギがいた。


魔王「お待たせ、ナギちゃん」


ナギ「は..はい。」


ナギ「……メイメイ?」


メイメイは答えられない。


胸の奥が、冷たい手で掴まれたように痛む。


魔王「メイメイ。さぁ、やるんだ」


その声は優しいのに、逃げられない重さがあった。


メイメイは躊躇する。


魔王「早くしろ。俺はお前の産みの親だぞ」


その一言で、メイメイの背筋が凍りつく。


メイメイはナギへ近づく。


脳内に、ナギと一緒に過ごした記憶があふれ出す。


最初は敵として立ちはだかり、


敗北して仲間になり、


ピピン王国、マンマミーア村、大聖堂、ドワーフ王国…… どの景色にも、ナギの笑顔があった。


メイメイにとって初めてできた仲間。 友達。


その足取りが、重く、遅くなる。


ナギ「メイメイ……?」


魔王「早くしろ」


魔王の声は低く、冷たく、命令だった。


メイメイの顔から血の気が引く。


メイメイ「……ごめんなさい」


ナギ「え?」


メイメイの手がナギへ伸びる。


ナギは悟った。 記憶を改変される。


メイメイの能力は、触れた相手の記憶を操作する力。


触れられた瞬間、存在が“書き換わる”。


ナギ「メイメイ……やめて。 私たち、友達だよね……?」


その言葉は、メイメイの心を深く刺した。


メイメイは後ずさる。


だが


魔王「メイメイ!! 早くしろ!!」


怒声が響き、空気が震えた。


メイメイは涙をこらえ、ナギへ向き直る。


メイメイは覚悟を決める。


ナギ「いややややや!!!!!」


ナギは拒絶する。


メイメイはナギに触れた。


ナギ「やめて……」


その瞬間、メイメイの意識はナギの記憶へ潜り込む。


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【ナギの記憶】



メイメイ(まずは、アイカとナギとの出会いの記憶だ)


ナギは町で物乞いをしていた。


ナギ「お願いします。何か食料を分けてください」


女「スラムのガキが一般人の通りに来るな」


パンが地面に叩きつけられる。


ナギ「ありがとうございます……」


パンを抱えてスラム街に戻ると、 アイカが餓死寸前で倒れていた。


ナギ「大丈夫ですか?」


アイカ「……おなかすいた」


ナギは迷わず、自分のパンを差し出した。


アイカ「ありがとう……」


アイカの目から涙が流れる。


ナギのお腹が鳴る。


ナギも飢えていた。


ナギ「どういたしまして」


メイメイは、この記憶のアイカを魔王と入れ替えた。


記憶の中のアイカが、 ゆっくりと、魔王の姿へ変わっていく。


ナギの世界から、アイカが消えていく。




メイメイ(次は、ナギとアイカとの生活だ)


ナギが風邪で寝込んだ日。 アイカが一生懸命看病してくれたこと。


その優しさも、 その微笑みも、 魔王へと変わっていく。


アイカの姿が、声が、温もりがすべて魔王に塗り替えられる。




メイメイ(次は、奴隷商人に誘拐されてアイカが助け出したとき)


抱きしめてくれたアイカの腕が、 魔王のものへと変わる。




メイメイ(ナギが王城で弾圧されたとき、アイカがかばってくれたのも)


メイメイ(俺たち四天王が立ちはだかったとき横にいたアイカ)


メイメイ(仲間として笑い合った日々、ずっと横にいたアイカ)


すべての“アイカ”が、 魔王へと変わっていく。


ナギの世界から、アイカが消えていく。



メイメイ(そうか、ナギは過去に戻っているんだった。タイムリープ前の)


メイメイ(……過去の記憶も変えないと)


メイメイ(なるほど、魔王との戦いの後遺症でアイカは死ぬ寸前だったんだな。)


アイカはベッドで死ぬ直前だった。


アイカ「ナギ……俺のことは忘れてくれ。俺に縛られていたら、君の未来を壊してしまう」


ナギ「忘れることなんて、そんなことできないよ……」


ナギはアイカの手を握る。


アイカは命を落とす。


ナギは盛大に泣き出す。


そしてアイカの墓をつくり、 何年、何十年……死ぬまで毎日墓参りを欠かさなかった。


ナギは天涯孤独を選んだ。


ナギが死ぬ直前まで、アイカのことを考えていた。


メイメイは、そのアイカまでも魔王に変えてしまった。


メイメイの手が離れる。


メイメイ「……おれは……なんてことをしてしまったんだ……!」


頭を抱える。


魔王はナギのそばへ歩み寄る。


魔王「大丈夫? ナギ?」


ナギは魔王の顔を見て、 ゆっくりと、幸せそうに微笑んだ。


ナギ「あ、大丈夫だよ。アイカ君」


魔王は、ゆっくりと口角を上げた。


魔王「ああ、おれはアイカだ。」


最後まで読んでいただきありがとうございます。

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